480話 追い詰められたメグミ
「メグミ様、ようこそお越しくださりました。これが"自動販売機"なる箱ですか? ほぅ……本当に、銅貨を入れるだけで飲食物が買えるのですね!」
「ハイ。タクサン出シテオキマスノデ、ゴ自由ニオ使イクダサイ」
肉体への負担フル無視で、ロックドラゴン便を乗り継ぎ<毒炎のダンジョン>跡へたどり着いた僕は、指定された場所へ自販機をバンバカ置き……
辛うじて現場にいたナーティー先輩の配下へ挨拶をして、テントを張り中で大の字に寝転んだ。
ナーティー先輩の配下が護ってくれるとはいえ、直属のモンスターじゃないので、一応警戒しなきゃいけないんだけど……
心身共にボロボロで、とてもじゃないがそんな余裕はない!
結界を張れるアイテムは幾つも持ってきたし、周辺環境も精霊の浄化によって穢れとは無縁の状態になっているので、ガルガロクの影響は受けないだろう。
今はとにかく寝て、内臓まで吐きそうな極限状態を脱するべきだ!
『ガハハハハハッ! この唐揚げという食べ物は美味いな! カップ麺も、箸が少々使いにくいがクセになるぞ』
『それより、イカマヨっていう味濃い海鮮の方がいいだろう。塩気が不足していたから、食べると元気が出るぜ』
『このニンニクバターっていうのも、ホクホクしていて美味いぞ! "食べ過ぎ注意"と書かれていたが、俺はSランクモンスターだし平気だろう。ゲェ〜〜』
『おぃ、コッチ向いてゲップするなって! お前の息、腐ったゴブリンより臭ぇぞ!!』
あのぉ〜皆さん、久しぶりのご飯で盛りあがるのはいいですが、もうちょっと「おとなしい香りの物」を召し上がりません?
テントの中までニオイが流れてきて、胃も腸も全部吐きそうなんですけど。
"本物"との体力格差に絶望しつつ、鼻にティッシュを詰めて半日ほど休んだところ、体調はある程度回復し……
"ところてん"くらいなら、吐かずに食べられる状態になった。
ナーティー先輩の配下達は、続々と現場に到着して救援活動を始めており、ダンジョン跡地には地下へと続く見事なトンネルができあがっている。
同じ土属性と言っても、僕は砂・モンティート先輩は土・ナーティー先輩は岩に寄っているので……
ナーティー先輩の配下が掘ったトンネルも、周囲が岩でガチガチに補強されており、ちょっとやそっとの衝撃じゃ崩れない頑丈さだ。
<−−− パサッ −−−>
「メグミ様。お目覚めになられたばかりのところ悪いのですが、モンティート様のお仕事が滞っておりまして……」
「ハイ。誠心誠意、代行サセテイタダキマス」
きっと僕が寝落ちしたことで、モンティート先輩のところに細々した文字の業務メールが大量に届き、老眼でよく見えず返信が遅れてしまったのだろう。
もう端末を見ても酔うことはないし、何百件でも僕が片付けてやる。(←ヤケクソ)
かかってこいやー!!!!
「あっ…………」
スマホを見たら、メールボックスの表示が「999+」になっていた……生意気言ってスミマセン、もうちょい手心を加えていただきたいです。
<−−− パサッ −−−>
「メグミ様。空気孔だけですが、地上と被災現場がつながりました! その穴を利用して、現場に酸素ボンベを届けたいので、買える自販機を出して欲しいです」
「ハイ。了解デス」
空気孔だけとはいえ、メチャクチャありがたいニュースなのに、配下の生存確率が上がった喜びと共に、過労スイッチが入ったのは何故だろう?
酸素ボンベ入りの自販機を出すだけなら楽なんだけど、僕の気のせいじゃなければ、テントの前に先輩のモンスター達が列をなして並んでいるような……。
「えっ? あぁはい。我が主人<ナーティー>から、メグミ殿はしっかりしているゆえ、簡単な仕事は彼に許可をとって進めるように……と命令がありまして」
「ソウナンデスネ。精一杯、役目ヲ果タサセテイタダキマス。(ナーティー先輩。評価してくださるのはありがたいですが、今回ばかりはありがた迷惑です!)」
「お手数をおかけします。あと、帰りの"足"なのですが……メグミ様のコンディションが戻り次第、ロックドラゴンでお送りしますので!」
「…………アリガトウゴザイマス。(また拷問旅が始まるのか。サヨウナラ、僕のお尻。コンニチハ、骨折・青痣・痔の恐怖)」
その後……ナーティー先輩の配下は大変優秀であり、次々ノルマをこなして報告しに来てくれるため、僕は現場指揮官の仕事に忙殺された。
それに加えて、地下にいるモンスター達や先輩方からのメールもドサドサくるので、文字の打ちすぎで腱鞘炎&ドライアイになっちゃったよ。
もしガルガロクが、最後っ屁で「過労の呪い」をかけたのだとしたら、たしかに効果は出ているかもしれない。
そして……帰還で現場指揮官の仕事から逃げようにも、"ケツの死"が確定しているため、現在の僕はほぼ詰んでいる。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






