475話 魔王とモンスターの仲がいいと
〜とあるオートマタside〜
現場のオートマタ達に呼吸を止めるよう指示したあと、私はマジックバッグから酸素ボンベを取り出して、結界内への供給を始めた。
一般的なモンスターと違い、我々オートマタやゴーレムは機械系のモンスターなので、その気になれば呼吸を止めても生きられる。
ただHP・MPの回復が通常時より遅れたり、処理速度が一段階落ちたりと副作用もあり、足手まといになるのと同義なので、普段はやらないだけだ。
とはいえ今回は、モンティート様の配下である精鋭部隊と行動を共にしており、頭脳労働特化の我々は守られることしかできない状況。
だったら少しでも、彼等の酸素を奪わぬよう省エネモードに入り、裏方で彼等のサポートをするのが最善だろう。
「(それに……打算的な考えなので言葉には出せないですが、これはチャンスなのです! 我がマスターが、モンティート様の眷属陣に評価されるための)」
魔王が評価される基準といえば、まず第一にダンジョンの出来だが……他にも、配下の練度や準備の良さ等が挙げられる。
我がマスター<メグミ様>は、ダンジョンの防衛力が高いことで有名で、他の部分は忘れられがちだけど……
日頃から配下の育成や有事の際の準備を怠らない、賢明な魔王なのだ。
ゆえにマスターを孫のように扱っているモンティート様や、その眷属様方にも、マスター自身の御力をより一層知っていただき……
今後ともマスターにとってより良い関係を築く、地盤としたい。
「…………!!」
さり気ないアピール成功、土龍様に気付いていただけた!
「潤沢ではございませんが多少の蓄えはあるので、時間稼ぎくらいにはなるかと」
「そうか、さすがメグミ殿じゃ。準備が良いのぉ〜!」
ふふふっ……そうでしょう、そうでしょう!
我がマスターは、ダンジョン構築一辺倒ではなくこういう所もシゴデキな魔王なのです!
ここにいる眷属様方は、ランクだけ高い脳筋とは違う"本物のエリート"。
マスターの有能さを示しても、嫉妬したり潰そうとするのではなく素直に賞賛してくれるので、私達も頑張り甲斐がありますよ。
「二酸化炭素の排出は、コチラにいる風精霊達がやってくれるそうじゃ。その機械による供給はどれくらい保つ?」
「メグミ配下が無酸素状態に追い込まれたとき、進退を決めて被害なく完遂できる量はありますが、ここにいる全員の必要量を供給となりますと……」
モンティート様の配下には、多くの酸素を消費する巨体のSランク・SSランクも複数体いるので、節約せずに使えば5日が限界だろう。
「5日程と考えていただければ」
「ふむ。それだけあれば、外からの助けを待っているだけでも充分に足りるの。もちろんただボーッと過ごす気はないが、助かったわい」
ちなみに、この酸素ボンベ……かなりお高いのですが、広告宣伝費と思って景気良く使っちゃってもいいですよね?
うん、ウチのマスターは懐の深い男性ですから笑顔で「よくやった」と褒めてくれるはずです!
「ところで土龍様。今後は、どう動く方針なのですか? マスターから、土龍様の御指示に従え……とメールが届きまして」
「うむ。脱出のために地上へ向かって掘り進める……と言いたいところじゃが、ここの魔王の残留思念の浄化が先じゃ。後々祟られるやもしれんし」
「"祟り"というと呪いの類ですか? 自らの負けを悟って、拷問され悲惨な最期になる前に自刃したのでは?」
「いや、それはない。魔王が直接乗り込んできた訳でもないのに、崩落で儂等を道連れにするような執念深い魔王だぞ。当然、我等が主人のことも恨んでおろう」
あぁ、逆恨みというやつですね。
私のような機械系モンスターは、他者を恨んだり妬むほどの深い感情を持てないので、知識として知っているだけですが……迷惑な話です。
「それの調査で一日。対処でもう一日。もちろん手が空いているメンバーは、脱出に向けて準備を進めるが、最優先は"徹底したお片付け"じゃ」
「かしこまりました。ウチの兵隊にも、そのように伝えて協力させます」
こんな「蒸し暑くて狭い空間」から抜け出したいのは、ここにいる全員同じだと思うけど、マスターに害が出る可能性が1%でもあるなら其方を優先する。
それはダンジョン生まれのモンスターにとって当たり前の事であり、土龍様の判断は「極めて正しい」と言えるだろう。
「(調査で結界から出る者が現れれば、その者に分ける酸素も必要になる。酸素マスクの使い方を説明できるよう、休憩時間に説明書を要点を書き出すべきだ)」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






