473話 魔王ランキングから名前が消えた
〜メグミside〜
僕とモンティート先輩のケンカが演技だったと、ガルガロクにバレた段階で、さらに奴を煽り散らし理性を飛ばそうと……
魔王掲示板で二人仲良くスレッドを経て、盛大に「もうアイツ死んだも同然じゃん。前祝いしようぜ」コメントをしていると、魔王ランキングに変化が起きた。
まだ現場の子達から「ガルガロク始末」の報告は来ていないのに、なぜか魔王ランキングに載っていた奴の名前が消えたのだ。
「どういう事だ? もしかして、僕に捕まり拷問されるのを恐れて自殺した……とか?」
「う〜ん。その可能性もあるだろうけど、ガルガロクは"顔も性格もブサイク"なことで有名な魔王だからね。こんなに潔く命を絶つとは思えない」
「とりあえず、現場へ奴の死亡を伝えて状況を聞きます」
「そうだね。情報共有して、今後の方針を決めないと!」
お爺ちゃんの先輩よりも、僕の方が(メールを打つ速度だけは)優っているので、大急ぎで現場班へメールを送ると……
指揮官のオートマタから返事が届き、「たぶんこのダンジョン崩れます。生き埋めにされそう」という、物騒極まりない状況を伝えられた。
「先輩、どうしましょう?」
「弱い子は全員、亜空間をもつ僕の配下の腹の中に入れろ。結界を張れる子と連絡要員のオートマタだけ残って、あとはウチの土龍に任せるんだ!」
「分かりました!」
非常事態という事もあり、モンティート先輩も「序列1位の魔王モード」になり、一瞬も悩むことなく僕に指示してくれたので……
その指示をそのままメールで現場へ伝え、僕はいつでも動けるように、パジャマから戦闘服へと着替え始める。
「(先輩は"結界を張れるモンスター"だけ、戦力として残した。つまり崩れて土の重さで生き埋めにしようとする、ガルガロクの最後っ屁を防ぎきる気だ!)」
だけど結界を張るにはMPが必要なので、一生土の中で結界を張り続ける訳にもいかないし、何より酸素がヤバイ!
敵が無酸素攻撃を仕掛けてきた場合に備えて、マジックバッグの中に酸素ボンベを沢山詰めこみ、持たせてはいるけど……
先輩の配下も併せると、現場には相当数のモンスターがいる。
つまり埋められた状態で生きられる期間はそう長くなく、早いうちに次の手を考えないと、現場にいる子達は苦しみながら亡くなることになるのだ。
「メグミ君、そんなに怖い顔をしないの。大丈夫。現場には土龍と砂龍がいるから、モグラみたいに地面を掘って地上へ出るくらいできるよ。それに……」
「それに?」
「今から風精霊を、現場へ向かわせて呼吸対策も試みるから、今日のところは僕に任せておいて。ナーティーにも援護を頼むからさ」
「あっ、そうか。ナーティー先輩も、モンティート先輩や僕と同じ土属性でしたね」
土と相性の良いSSランクモンスターが3体集まれば、この状況でも埋められた子達を生還させられるかも。
それに、僕の戦力はともかく……モンティート先輩とナーティー先輩の配下は、一騎当千の猛者揃いだ。
そんな彼等が力を合わせて動くのだから、僕がするべきなのは、彼等の試みが上手くいくことを信じて、持たせた酸素ボンベで時間稼ぎをすること!
あとは風属性のサーシャにお願いして、風精霊を支援するために、風龍を現場へ向かわせるくらいか。
<−−− チョンチョンチョン −−−>
「どちらも助かるけど、メグミ君には食糧支援を優先して欲しいかな。弱いモンスターを助けるために、眷属の亜空間に入っている食料を放棄したから」
「あっ。もしかして、食料は土に埋まっちゃった感じですかね?」
「たぶん。必要最低限の食料は残しただろうけど、現場は僕の意を汲んで、モンスターの命→ポーション類→食料の順で、優先順位をつけた筈だし」
なるほど、了解です!
こういう時こそ自動販売機の出番ってことで……僕も現場へ出向いて、価格をタダにした「無限に食料を供給できる箱」を置いてきますね!
ちなみに……値段は自由に変えられるけど、仕入れ値を割ると自動でポイントから天引きされるから、タダ飯を食えるというウマい話ではない。
「ありがとう。だけど気を付けてね。魔王ランキングから名前が消えてダンジョンも滅びたとはいえ、ガルガロクの性格を考えると残渣が残っているかも……」
うわぁ〜。
たしかに顔写真を見たとき、醜悪な見た目に加えて性格悪そうな目つきをしていたけど、モンティート先輩にそこまで言われる程のものなのか。
精霊の恵みをいただいたおかげで、僕もそれなりに聖属性と相性が良くなっているから、念のため聖系統の防御を徹底した方がいいかもな。
「ところでメグミ君。紅茶を淹れようとしたタイミングでダンジョン崩落の話を聞き、ショックでフリーズして大ヤケドを負っちゃった彼だけど……」
「あぁ、そろそろシバいて正気に戻します?」
「うん。ポーションがあるとはいえ、火傷を放置していい事なんてないし、はやく起こして傷の手当てをしてあげよう」
良かったな、スティーブ。
もし失態が、熱湯を持ったままフリーズして大ヤケドじゃなく、腰を抜かして漏らす系だったら……
さすがに見苦し過ぎるんで、僕等だけ部屋を移ってお前は放置だったかもしれない。
モンティート先輩の温情と、まだマシな失態だった幸運に感謝するんだぞ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






