464話 相性バッチリ
〜メグミside〜
<欲望のダンジョン>でマサルを見送ったあと、モンティート先輩にそのまま精霊の間に残るよう指示された。
「万が一、ロルカナのダンジョンでマサル君が追い込まれたら、助けてあげないとだし! 苦痛を伴う可能性大だけど、僕等も最後まで見守るよ」
「えっ!? 鏡に動画が映っている……この声、この視界…………もしかして、マサルと視覚・聴覚をリンクさせた感じですか?」
「そうそう。さっきマサル君に、"見守っているね"と伝えたの……君も聞いていたでしょ? 僕の影響下にある精霊達のネットワークを使って、ちょっとね♪」
なるほど。
つまり……その気になれば、僕に精霊を仕込むことで<恵のダンジョン>の内情を探ったり、不都合な情報を入手するのも楽勝なわけだ。
どうやって、この情報収集オバケに勝つんだよ!
いくら老化で全盛期を過ぎた云々言っても、勝てるビジョンなんて見えませんから!!
「ん? あぁ大丈夫だよ。マサル君は精霊と相性が良かったし、清らかな性格の子だから精霊を送りこめただけで、一般的な魔王相手には無理だから」
「あっ、そうなんですか。(よかった〜。でも先輩、"一般的な"とか付けられると怖いっス。イジって遊ぶのは、スティーブだけにしてください!)」
だがまぁ、これでマサルの安全は確保されたも同然だろう。
彼と視野を共有できるのであれば、もし彼がトラップに引っかかっても、足掻いている間に援軍を送りこめるし……
ロルカナに残された寿命的から考えて、それじゃ間に合わない場所までマサルが潜るとは考え辛いもの。
一応ロルカナはベテラン魔王だから、ダンジョンの階層も3桁の大台に乗っているけど、流石にあれだけ自信満々に出ていったわけだし……
マサルなりに、その最奥にいるロルカナを引っ張り出せる策があるんだよね?
<−−− ウィーーーン −−−>
『ご主人様。マサル様をお連れしました』
…………と思ったら、マサルが動く前にロルカナが彼をダンジョンの管理室まで呼び寄せて、助力を願った。
「(あっ。だからマサルの奴、いつもより紳士的な姿に化けていたんだな。おかしいと思ったんだよ。アイツが、髪をワックスで整えているなんて!)」
要するに彼は、ロルカナの汚手紙に対する当てつけのために、敵としてではなく救世主を装って乗りこみ……
ロルカナと対面してから本性をあらわして、ダンジョン攻略の手間を省きつつ、奴を絶望させようとしているのだ。
勇者としてポスターに映っていた頃はともかく、砂漠フロアじゃボサボサの寝癖ヘアーで生活している、女っ気皆無になったマサルが……
椿の香りがするワックスで髪を整え、髭も剃り残しなく処理した時点で、気づけよ……僕。
まぁいい、思考を切り替えよう。
野郎の髪なんて、「毟られた落武者ヘアー」にでもなってない限り、多少変わっていてもスルーして当然だし、次から気付けるよう頑張ればいいのだ。
『来てくださったのですね、我が救世主様。このような姿で申し訳ございません。それもこれも、全ては貴方様が暮らすダンジョンの主にやられたもので……』
それにしても、腐った股を広げてピーチクパーチク喋るババァの、不愉快なこと。
よくマサルは、このグロ映像をダイレクトで見て吐かないな。
モンティート先輩なんて、事前にある程度察していたっぽいのに、洗面器に顔を突っこみゲロっているし、こんなの普通の神経じゃ耐えられないぞ。
『そうですか。とりあえず、危機的状況をなんとかしましょう。皆さん、少し離れてください。結界を張るので』
『『『『『『『『『『かしこまりました』』』』』』』』』』
とはいえ……さすがのマサルも、こんな気狂いババァの「白馬の王子様」にはなりたくなかったようで、すぐに奴から眷属を引き剥がし結界を張った。
『え…………っ?』
『大人なんだから現実を見ろよ。誰が、あんな不愉快な手紙を寄越したババァとヤるために、こんな場所まで出向くかっての』
うん、そうそう……よくぞ言ってくれた!
僕等はボランティア団体に所属する聖者じゃないんだ、報酬になっていない報酬で汚物の処理をするほど、浮世離れした清い心はもっていない!
『その岩龍って、まさか……』
『ん? そりゃあ当然だろう。敵として乗り込んだ俺すら生かしたあのメグミさんが、少しチョッカイをかけられた程度で大先輩とモメるわけねぇだろう』
ナーティー先輩の眷属である、岩龍の召喚にも成功した以上、あの空間は完全にマサルが支配したと言ってもいい。
岩龍が、モンティート先輩配下の土龍みたくゲロリアンすると、ちょっと困るけど……
ナーティー先輩はモンティート先輩に比べて好戦的っぽいし、アンデッドとも親和性があるので、ゾンビ仕様のロルカナにも耐えられるはずだ!
『じゃあ早速始めるか。お前の素材化を』
『えっ?』
納得できないのか、ロルカナはピーチクパーチク叫んでいたが、それを封殺したマサルは容赦なく奴を素材扱いし、「徹底的に搾取する」ことを宣言。
ロルカナが今まで育ててきたダンジョンや、希少性の高い美術品等をのきなみポイント化して、金のインゴットとして取り出し没収した。
『被害者ぶってんじゃねぇよ。泣く暇があったら、少しは迷惑をかけた同業者に謝れ。まぁ、お前自身も今から素材になるんだけど』
『は……ぁ?』
『俺はクビになったけど、ステータス上はまだ勇者。つまり俺が魔王を殺したら、其奴の能力を奪えるんだよ』
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?』
そしてトドメに、ロルカナ自身も素材化して……奴ご自慢の<ハニー・カード>ギフトを搾取。
ついでにステータスも幾ばくか奪い取って、己の糧とした。
「ねぇ先輩。マサルと<ハニー・ギフト>ギフトって、結構相性いいですよね? 毎日の慰めで、ドンマイポイントが無限に貯まるし」
「ふふふっ。メグミ君、そりゃあそうだけどさぁ……あまり言わないであげなよ。マサル君だって、好きで"女難にまみれた人生"をおくっているんじゃないから」
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〜ハニー・カード〜
蜜月の交わりをもった魔王のギフトを10日間トレースする、特殊なカードを作れる能力。
1回の交わりにつき1枚しか作れないため、カードを量産するには下半身を酷使せざるをえない。
また自らを慰めたときに自然と生まれる<ドンマイポイント>を貯めると、コピーカード等、汎用性が高い低ランクカードを作ることができる。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






