463話 仕事が済んだらスタコラサッサ
〜マサルside〜
俺たち関係者が裏でモメていても、表の世界には関係なく、金目当ての冒険者によって日夜ダンジョン探索はおこなわれている。
それはロルカナが治める<美魔女ダンジョン>も同じで、有効な仕掛けを全てポイントに戻して、ただの洞窟に戻したうえで……
ロルカナを殺して、ダンジョンそのものも滅ぼしたいま、俺がいる管理室跡に冒険者が押し寄せるのは時間の問題だった。
「アンタ等に恨みはないからな、命までは奪わねぇよ。だけどスマン。ダンジョンの財は全て俺がもらったんで、アンタ等は洞窟でタダ働きするハメになる」
元勇者の俺が、魔王と手を組んでロルカナを殺したことがバレたら、表の世界で大問題になりそうだからな。
ここは、メグミさんからもらった眠り薬を洞窟の底に滞留させ、冒険者を足止めしつつ関係者用のルート跡から退散させてもらう。
<−−− スタタタタタタタッ −−−>
「岩龍さん。擬人化していても、アンタ程の猛者が気配を撒き散らしていると、バレて余計な詮索を生む。悪いが、召喚解除に応じてくれ」
「ふむ。承知した。側の林の中に、案内役のレイスを待機させておるゆえ、ダンジョンから出たら即落ち合ってくれ」
「了解!」
ぶっちゃけ、岩龍さんを連れた状態でも<スキル図鑑>に保管してある、<昆虫化>のギフトを使えば、人間にはバレずに脱出できる。
さすがにゴキブリに変身するのは勘弁だから、サイレントモスキートに擬態して、速攻で待ち合わせ場所へ向かおう!
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〜スキル図鑑〜
相手の許可を得ることで、スキルおよびギフトが図鑑に登録され、登録された任意の能力を一時的に模倣できる、特殊な<能力玉>を生みだせるようになる。
ただし<能力玉>をつくる際は、己の血とHPを対価として捧げる必要があり、事前準備ナシでは役に立たない。
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〜昆虫化〜
己の姿を昆虫に変えて、昆虫の特性を享受することができる。
ただし肉体の強度や腕っぷしも、擬態した昆虫と同レベルになってしまううえ、擬態中はメリットのみならずデメリットも全て受けることになる。
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この擬態シリーズに関しては、「昆虫化」以外にも「小動物化」「爬虫類化」のストックがあるが、現在は昼まで外に冒険者がいる。
つまり……へたに小動物やヘビになろうものなら、「手軽にとれる食肉」扱いされて、待ち合わせ場所へたどり着く前に狩られてしまうのだ。
そうなるくらいなら、まだ人間姿のまま出ていき騒ぎを起こす方がマシである。
<−−− プ〜〜〜〜ンッ♪ −−−>
「(まぁ肉体の強度が死ぬといっても、隠密の技術は残ったままだから、うっかり叩き潰されなければなんとかなるけどな。ってことで、お待たせです!)」
待ち合わせ場所にいたレイスは、ナーティー先輩の眷属が率いるエリート部隊所属であり、側にいる冒険者達にも一切気付かれていなかった。
「(行きますよ。付いてきて)」
「(はい。頼みます)」
生物として格の高い彼がコソコソ身を隠し、素人に毛が生えたレベルの冒険者が、「もしかしてダンジョン踏破!?」などとイキリ散らしているなか……
そっと<美魔女ダンジョン>跡を離れ、忠実に俺の道案内をこなしてくれるのは、第三者視点で見ると少しモヤるかもしれない。
だが人間との戦いなんて、起きないに越したことはないのだ。
こちらがソッと避けて諍いを回避できるなら、たとえ格下相手でもプライドを気にせず避けるのが、真の強者である。
「ん。ここまで来たらもう大丈夫。人間の姿に戻っていいよ。そのままじゃ、不意を突かれたとき死んじゃうでしょう」
「まぁそうっスね。姿は戻して、念のため覆面を被っておきます」
このあと俺には、<美魔女ダンジョン>で手に入れた財産を関係者全員で分け、お礼参りに協力してもらった借りを返す義務が残っている。
メグミさんやナーティーさん以外にも、魔王掲示板でロルカナの汚手紙を読んで二次被害を受けた、哀れな犠牲者がたくさんいるから……
彼等にも幾許かの資産を見舞金として贈り、「元勇者が魔王同士の争いで、片方のチカラになった」事について、つっこまぬよう処理したいのだ。
幸いにもロルカナはベテラン魔王で、ダンジョンから剥ぎ取ったポイントを金の延べ棒に換えたところ、なかなかエグい量になったので……
たぶん全員が口をつぐむレベルの見舞金を贈っても、収支赤字にはならないと思う。
「(着いたぞ! コッチにも人間がいるから、裏のルートから入る)」
「(分かった。全て従うから、指示を出してくれ)」
「(了解)」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






