462話 愚か者は全てを奪われる
「その岩龍って、まさか……」
「ん? そりゃあ当然だろう。敵として乗り込んだ俺すら生かしたあのメグミさんが、少しチョッカイをかけられた程度で大先輩とモメるわけねぇだろう」
マサルからすると、「マジでケンカ別れしたと思っていたのか」と呆れるばかりの状況だが、ロルカナは罠を仕掛けた当事者である。
しかも追い込まれて盲目気味だったうえ、普段穏やかなモンティートまで偽装工作に手を貸したため、すっかり騙されていたのだ。
なお、この時点でメグミと<農民>同盟がケンカ別れしていないと知っている勇者排除派は、ロルカナだけであり……
ガルガロクは、まんまと罠にハマって彼等の配下を同士討ちさせるべく、無駄な努力を積み重ねている。
そしてトキナは、防御力がスカスカになったダンジョンに押しかけてきた、マッドサイエンティストの配下によって捕らえられ……
非人道的な研究用のモルモットとして、第三の人生をスタートさせたところだ。
当然、「メグミと<農民>同盟の仲」について考える余裕などなく、自我が崩壊するのも時間の問題だろう。
そして勇者排除派の中で、一番早くこの事実を知らされたロルカナも、ダンジョンの管理システムを乗っ取られた状況では、今さらであり……
ダンジョンコアを握りつぶされるだけで、自分の命が消えると分かっているため、配下に「結界を突き破りマサルを殺せ」と指示することもできない。
元勇者が張った頑丈な聖結界を壊すのと、SSランクモンスターが握ったダンジョンコアを破壊するの、どっちが速いかなんて考えるまでもないからだ。
「か弱い女を殺すのに、元は敵対した魔王の力を借りるなんて……卑怯な男。アンタは必ず地獄に落ちて、来世でゴブリンに生まれ変わるわ」
ロルカナに出来ることは、ただただマサルに恨み言を述べ、結界の外にいる眷属達とともに、彼を睨みつけることだけだった。
「節操なく股を開いて性病にかかり、それを癒そうとメグミさんの息がかかった商会からクリーム薬を買って、オークジェネラルを産んだバカに言われても」
「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「まぁでも、自称貧弱のくせにその身体で生きながらえている点だけは、褒めてやるよ。あの汚手紙を送られて、報復もできないんじゃムカつくからなぁ〜」
「チッ!」
「おっと、今さら"自刃しよう"ったってそうはいかねぇぞ。この結界は聖属性……つまりお前と圧倒的に相性が悪いんだ。身体が怠くて動けねぇだろう」
「…………」
自業自得で死にかけているロルカナに対しても、マサルは手を抜くことなく、完璧な聖結界を張って反抗を許さずにいる。
以前メグミと戦ったとき、心のどこかで「若手の魔王だし」と侮った結果、散々な目に遭わされて(実質)敗れたからだ。
それ以来マサルは用心深くなり、「相手の心臓が止まるまで気を抜かない」を徹底しているため、ロルカナが彼に抗う術はない。
「じゃあ早速始めるか。お前の素材化を」
「えっ?」
「当たり前だろう。どうせ殺す相手のダンジョンなんて、限界まで換金して全てを奪い尽くすべきだ。特に、今まで多くを奪った奴の居城なんて……な」
そう言うとマサルは、ナーティーの眷属である岩龍に教わりながら、ダンジョンマスター用の操作パネルをいじり、ダンジョンに手を加え始めた。
「まずは、モンスターの換金。メチャクチャ換金率は悪いが、手持ちのモンスターって売れるらしいじゃん? お前のナイトは、これで誰もいなくなる」
「…………!!!?」
「そして"ただの洞窟"になったダンジョンを、俺の召喚モンスターに物色させて、金になる私物を全回収。あぁ安心しろ。汚いんで全部後で換金するから」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「それから、ダンジョンの余剰な機能も全解除でポイントに換えて……うわっ、聞いていたとおり交換レート糞だな。端金にしかなんねぇじゃん」
「グスッ……グスッ…………」
「最後に、全部"金のインゴット"に換えて取り出したら完了! はい。お前がこれまで何十年もかけて積み上げた、ダンジョンの機能は全部消えました♪」
「ひど……ぃ…………」
「被害者ぶってんじゃねぇよ。泣く暇があったら、少しは迷惑をかけた同業者に謝れ。まぁ、お前自身も今から素材になるんだけど」
「は……ぁ?」
「俺はクビになったけど、ステータス上はまだ勇者。つまり俺が魔王を殺したら、其奴の能力を奪えるんだよ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜職業:勇者〜
異世界の血を引く「選ばれし者」がなれる職業。
聖職者としてのチカラを得るだけでなく、<才能の器>が拡張される事によりステータスの伸びが良くなる。
またその手で魔王を倒すと、相手のギフトおよびスキルの一部を貰い受ける事ができるため、魔王討伐経験のある勇者は隔絶した強さを持つ。
勇者の子孫が魔人族を倒すことにより、後天的に覚醒する場合アリ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「安心しな。お前がこれまで積み上げたステータスも、慰謝料としてもらっていくから。(もっとも、アバズレ専用ギフトは使いたくねぇがな)」
「グスッ……グスッ…………」
普段は優しいマサルも、ロルカナの所業についてメグミから聞かされたうえ、汚手紙で「性格クソ」の裏どりもとれているため……
容赦なく彼女から搾取して、呪いの剣で彼女を真っ二つに切り裂いた。
唯一の優しさといえば、「放っておくとゾンビになるから」という理由で、彼女の遺体を火葬してあげたことくらいか。
もっとも……聖者らしい葬り方ではなく、使用済み油をぶっかけて普通に火をつける、適当仕様の火葬だが。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






