460話 ロルカナの才能
非モテを極めて泣き崩れているガルガロクとは対照的に、その気になれば女には困らないマサルと、彼女持ちのメグミは……
モンティートが治める<欲望のダンジョン>で、<祝福の儀>をおこなっていた。
「“I أعتبرك من لديك أرواح نقية أصدقاء لنا 『 أرواح 』 وأعطيك البركات. أتمنى لكم جميعا الكثير من السعادة.”」
儀式をとり仕切るのは、より格の高い精霊ほど良いとされているので、土精霊とのハーフであるモンティートではなく、土の精霊王が務めている。
モンティートは土の精霊王と盟約をむすび、安全かつ清らかな住処を提供する代わりに、精霊達から加護を受けているのだ。
なお闇属性はともかく、火属性の精霊まで一体もいない理由については、<欲望のダンジョン>の立地が「水・土・風」に向いており……
火の気がほとんどないため、住み心地のよい環境を提供することが出来なかったためである。
火属性の精霊は、通常「火山の周辺」や「ファイヤードラゴンの縄張り」に住むため、人間と共存する<欲望のダンジョン>とは相性が悪い。
「“من الآن فصاعدا، يرجى الاستمرار في حب التربة التي نحن معها ونتعايش مع الطبيعة. أعتقد أنكم أيها الأشخاص طيبو القلب يمكنكم فعل ذلك.”」
「終わりだね。二人とも、もう立ってもいいよ〜。全部済んだから」
「「はい。ありがとうございます」」
その代わり、水と風は大精霊が……最も相性が良い土に至っては精霊王が住み着いているため、<欲望のダンジョン>の神聖力は強く……
メグミとマサルにも、最上級の祝福が与えられた。
「うわっ、すごい……周りにフワフワ浮いている、キラキラしたものが見える。先輩、もしかして……この子達、全員精霊なんですか?」
「うん、そうだよ〜。その綿みたいな子達は"幼精霊"といって、自我を持つまえの精霊の赤ちゃんなの。可愛いでしょ〜」
「はい! フワフワ・キラキラで超素敵です! うわぁ〜、この空間でサーシャとデートしたい」
「アハハハハ。勇者排除派を完全に消し終えたら、また二人でおいでよ」
「マジですか!? ありがとうございます!」
一般人と同じく「精霊が見えないタイプ」だったメグミは、祝福を受けたことで精霊が見えるようになり、初めて見る幻想的な世界に大興奮。
その様子を見たモンティートも、「遊園地ではしゃぐ孫」を見る爺のように、穏やかな笑みを浮かべている。
一方、元々精霊と相性がよく「見えるタイプ」だったマサルは、祝福の効果で全身の防御力が強化されたことに気づいて、別の意味で驚愕中。
モンティートが仲良くしている土精霊の祝福は、邪悪なものから身を護るほかに、肉体の強度を上げる効果も有しているのだ。
「モンティートさん、マジでありがとうございます! 俺はまだ未熟者だけど、いずれ必ず恩は返すんで!」
「ふふふっ。ロルカナにトドメを刺してくれるだけで十分だよ。僕等も、アレが寄越した"呪いの手紙"には迷惑したから」
「あぁ〜、了解っス。(そういえば、あの部屋……ゲロ臭かったな。これだけガチガチに防御を固めても、汚手紙の前には無力なのか。怖っ!)」
モンティートにとってあのゲロは、15年ぶりに味わった"外敵由来のダメージ"なのだが……その事実を、マサルは知らない。
そして精霊でいくら対策しても、頭のイかれた汚手紙攻撃に対する防御なんて「見ないこと」以外にないので、モンティートは密かに頭を悩ませていた。
「まぁ、何はともあれ……準備も整ったんで突撃してきます! ロルカナを自然死させるのは、俺としても許せないので!」
「うん。ナーティーのダンジョンへ繋がる転移陣へ案内するから、そこからは一人で行ってくれ」
「分かりました!」
ちなみに……ナーティーもまた、回ってきた汚手紙で大ダメージをくらった一人であり、まだ寝込んでいるため、マサルの応接は彼の眷属が担当する。
序列2位のダンジョンゆえ、眷属の強さも尋常ではないのだが、彼等もまた「ロルカナぶっ殺す!」で固まっているため、マサルの味方だ。
それゆえ、ロルカナが治める<美魔女ダンジョン>への道案内も、彼のダンジョンにいるレイスが、人目につかぬよう努めることになっており……
マサルをバックアップする為に、配下一同が本気で動いている。
手紙一つで、これだけの強者を動かせるなんて、ある意味ロルカナには才能があるのだろう。
「マトモな男に煙たがられる」という、あっても全然嬉しくない才能だが……。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






