459話 弱り目に祟り目
メグミとマサルが<欲望のダンジョン>で、精霊から祝福を受けるために身を清め始めた頃。
モンティート配下の足止めをしつつ、金欠を補うために仕事のない部下を隣国へ派遣して、強盗家業に勤しんでいたガルガロクは……
不安で熟睡できず眠い目をこすりながら、久しぶりに魔王掲示板を眺めて、勇者排除派の仲間がやらかした醜態を目の当たりにした。
「チッ。ロルカナの奴、元勇者にまで股を開いてタダ働きさせようとするなんて。しかもメグミにバレて、晒されてんじゃねぇかよ!」
ガルガロクは、ギフトの特性上"常に"醜く非モテなので、下の方はロルカナのお世話になっており、他の魔王達と違って吐くことはない。
だが歳に合わない「女を武器にしたタダ働き要請」と、罪悪感を与え相手を悪者にする言い口に、思うところはあり……
「誰にでも股を開くところ以外、お前には需要ねぇって」と、本音を漏らした。
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〜呪毒の炎〜
自身及び配下の炎を浴びた相手は、百種の毒・百種の呪いからランダムで幾つかに暴露し、解毒ポーションを飲んでも最低一日は侵され続ける。
またこの炎で調理した食材や、火を通した水にも呪毒は感染するので、それを飲食した相手にも同様の症状が出る。
ただし術者にも、対価として常に「醜化の呪い」がかかってしまい、絶望的に異性にモテなくなる。
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そしてスレッドで阿鼻叫喚状態になっている魔王達を見て、「ふんっ! 情けねぇ」と鼻で笑い……
非モテ街道を極めて、こんなヤバイ女に「ギフトのコピーをとらせる」対価を与えなければ、下の処理ができない自分を思い出して、涙をこぼした。
「ハァ〜。何が悲しいって……俺は<醜化の呪い>がなくても、女から避けられ続けた醜男だったって事だよなぁ。モンティート、マジで死ねよ!」
実は、ガルガロクはモンティートに個人的な恨みがある。
10年以上前、バレンタインの時期に魔王界で臨時ミッション<女性魔王からチョコをもらえ>を出されたとき……
金を払って女性魔王を買収したにも関わらず、お爺さんのモンティートにダブルスコアで敗れたのだ。
モンティートは当然、そんなミッションの事など忘れているが、現金で釣ってもなお敗れた醜男のガルガロクには、トラウマとしてその記憶が刻まれている。
そして周期どおりにいけば今年、またバレンタインミッションが発令されて、今度はモンティートどころかメグミにも負けかねないので……
彼等のアンチになったという、情けない経緯もあった。
「どうする? 腹の辺りが腐ったってことは、もう余命いくばくもないんだよな? 最期に会って、一発ヤらせてもらうか?」
ため息しか出てこなかったが、それでも記念に……と思い、ロルカナのダンジョンへ行こうと立ち上がったガルガロクは……
死ぬ直前にギフトをコピーしても何の意味もないため、自分がロルカナに払える報酬などない事に思い至り、再度大きなため息をついて腰を下ろした。
「まぁでも……裏切ったわけじゃなくて、自分もヤバイ状態に追い込まれていただけだったんだな。最低限、そこだけでも確認できてよかった。さっさと逝け」
そして自分自身にロルカナを助ける術がないことも理解しているため、彼女がこれ以上アホな醜態を晒さぬよう、「このまま死んでくれ」と願う。
ガルガロクだって一応男で、抱いた女に対する情はあるのだ。
その最期がコレでは、さすがに哀れに思えてしまうのである。
「つーか案の定……モンティート配下には、<呪毒の炎>が全く効かねぇな。メグミ配下も対策してきたのか、そこまで効いてねぇみたいだし」
極限まで追い詰められたガルガロクが、最後に一発逆転をかける作戦は、暗闇でメグミ配下とモンティート配下を鉢合わせ……
"敵"と認識させて同士討ちさせ、そこで2人の仲を決定的に裂き、自分のことなど放置して彼等同士で潰し合いを始めるよう、仕向ける……というもの。
つまりモンティート配下より弱いメグミ配下が、ダンジョン内の仕掛けで殺られて数を減らしてしまっては、より戦力差がひらき……
同士討ちの効果が弱まってしまうので、ガルガロクはメグミの配下を本気で攻撃できない。
ただひたすら、二つの部隊が同士討ちしやすそうな場所で鉢合うよう、<呪毒の炎>をアトラクションに見立てて誘導するのみである。
そして自分が手加減せざるを得ないメグミには、サーシャという超絶美少女の彼女がおり、自分には対価を払ってもロルカナが精々という……
世の中の理不尽を、モニターを眺めるたびに味わうハメになり、何度拭いても涙が止まらず、誰もいないダンマス部屋で一人泣き尽くした。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






