449話 返信はパワハラで
〜トキナside〜
俺だって長年生き残ってきた魔王だ……絶望の淵にあるとき、最期の気力を振り絞るための術くらい弁えている。
「おい。ダンジョン内で一番いい肉を、ステーキにして持ってこい。それと酒もだ」
「かしこまりました!」
ルーレットに外れたことで金融資産の類は根こそぎ奪われたが、食糧は対象外。
あまりに高価なヴィンテージワイン等は、過去に消えてしまった事例もあるが、オーク肉程度なら残っている。
「それを食ってひたすら現実逃避! 酒で酔ってキツイ感情を全て忘れたうえで、対処法を考えればいい。カーッ、美味いぜ!!」
いつもは当たり前のように食っているオーク肉だが、キンキンに冷えた酒とともに流し込むと、五臓六腑に沁みわたる。
そうだ、降参しよう。
たとえ奴隷待遇になってもいいじゃないか……マッドサイエンティストにオモチャ扱いされ、肉体を切り開かれるよりマシだ!
「そこのお前。これからいう言葉を、正式な書類として書き起こせ。敵へ降伏を申し出る」
「えっ? はっハイ、かしこまりました!」
奴隷待遇になっても、生きてさえいればまた「金の矛」で成り上がるチャンスはある。
辛く苦しい日々だが……それはガルガロク&ロルカナに下っ端扱いされている現在も同じだし、俺の後輩っぷりはピカイチ!
ロルカナの工作が功を奏した結果、仲違いしているっぽいモンティートとメグミを仲裁してやれば、俺はきっとメグミより可愛がられるはずだ!
「ご主人様。降伏の書状をお作りいたしました。ご確認くださいませ」
「うむ」
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拝啓、メグミ殿
この度は貴殿の力を見誤り、刃を向け卑怯な裏工作を繰り返したこと、まことに申し訳ない。
私は貴殿の強さに敬意を表して、降伏したいと考えている。
貴殿が仲違いしてしまったモンティート様との件だが、実はあれはロルカナの工作によるものだ。
もし私の降伏をとりなしてくれた暁には、サーシャ殿の冤罪を晴らして、モンティート殿との仲を再びとり持つと約束しよう。
図々しい願いだと理解しているが、私の後悔と誠意を受け取ってほしい。
後悔させないと誓うよ。
魔王<トキナ>
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「うん。実際のところ、メグミとて後ろ盾のモンティートを失ったのは痛手だろう。これで手打ちにしてくれる可能性は、十分見込める」
あとは賠償について……だな。
俺は有り金全てを賭けたルーレットで負けたばかりだから、渡せる物など何もない。
ロルカナ&ガルガロクの個人情報は当然として、覚悟の証としてミッションで時々使われる、手首……の塩漬けを差し出せばいいだろう。
なに、多少痛いが……酒で痛覚は麻痺しているし、すぐにエクスヒールで回復させれば、コチラの損害は実質ゼロ。
それでいて誠意を示せるのだから、安いもんだ。
そう考えて覚悟を決め、スパンと手首を切り落とし、それと書類を持たせて<恵のダンジョン>へ向かわせた俺だったが……
奴から返ってきたのは、信じられない答えだった。
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拝啓、トキナ殿
降伏の申し込み、読ませてもらった。
サーシャの件をモンティート先輩に謝罪させ、落とし前をつけてもらえるよう説得するのが、貴殿の降伏を認める条件だ。
僕の彼女は一方的に糾弾され、アバズレ呼ばわりされたんだ。
先輩には土下座謝罪に加えて、最低でも「呪いの剣」で指を5本詰めてもらう。
あと賠償金も欲しいなぁ〜、僕と先輩の魔王ランクがひっくり返る程度には、償っていただかないと。
さてトキナ殿、この条件での仲裁……よろしく頼む。
魔王<メグミ>
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「できるかぁ! まだテメェの首を取って、この状況からマッドサイエンティストを追い返す方が簡単だわ! "呪いの剣"って、再生させる気ないだろう!」
もしこんな条件での仲裁をモンティートに持ちかけた日には、奴にも軍勢を差し向けられて、俺は死を願うほど酷い扱いを受けるはず。
「というか、この言い回し……ロルカナ&ガルガロクとそっくりだな。コイツも、仲間が少なく顕在化しなかっただけで、爆裂級のパワハラ野郎だったのか」
少しだけスティーブに同情してしまったぜ。
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モンティート「グスン! 自分で書かせておいて悲しくなってきた。そっかぁ。僕……メグミ君に、片手潰されちゃうのかぁ〜。心がシュンとなる」
メグミ「あのねぇ先輩。そもそもケンカしていないんだから、仲裁もヘッタクレもないでしょう! 自分で演じておいて、メンヘラ化しないでください!」
モンティート「だってさぁ〜」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






