446話 誤認作戦
〜ガルガロクside〜
我が<毒炎のダンジョン>は、<呪毒の炎>が効かない相手への対策として、ひたすら熱く蒸れた洞窟内を進ませる構造になっている。
火属性のダンジョンゆえ、洞窟内を暗闇にして進行を阻害する手は使えなかったが、水蒸気で蒸れていれば暗闇ほどではないにしろ視界も不明瞭。
なにより疲れる。
火属性で熱耐性を持たぬ者にとってこの環境は、たとえ実力があっても耐えがたく、足場もツルツルしていて悪いため体力を削られやすいのだ。
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〜呪毒の炎〜
自身及び配下の炎を浴びた相手は、百種の毒・百種の呪いからランダムで幾つかに暴露し、解毒ポーションを飲んでも最低一日は侵され続ける。
またこの炎で調理した食材や、火を通した水にも呪毒は感染するので、それを飲食した相手にも同様の症状が出る。
ただし術者にも、対価として常に「醜化の呪い」がかかってしまい、絶望的に異性にモテなくなる。
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また曲がりくねった複雑な洞窟内を歩くうちに、方向感覚がなくなり、途中のトラップではぐれた仲間と再会しても、其奴が敵か味方か区別がつかなくなる。
なんせ周りは蒸れた蒸気で覆われており、1m先も見えないのだ。
合言葉やハンドサインで確認すれば、最低限の判別はつくだろうが、瞬間的に敵味方を見分けるのは能力持ちでない限り難しい。
「モンティート軍には、疲れたタイミングで奇襲を繰り返しおこない、"敵が攻めてくる印象"をつける。それも、<小鬼>同盟軍の主力モンスターと同種がだ」
<小鬼>同盟の主力は土属性と風属性のモンスターゆえ、購入レートが悪く入手には苦労したが、これでモンティート軍に先入観を植え付けられれば……
<小鬼>同盟軍が到着して洞窟内でモンティート軍とはち合わせしたとき、"敵"と認識され一気に攻められるだろう。
「刃を交えて配下に死者が出れば、交流断絶を超えて完全な敵対関係となり、モンティート軍が誤解に気付いた後も争いは続く」
なんせ、<小鬼>同盟側は多くの損害を出しているのだ。
「同じだけの兵力を自刃させてケジメをとれ」と言うに決まっているし、それを呑めないモンティートが<小鬼>同盟との和解を勝ち取ることはない。
「代償として、ダンジョンポイント以外の資産はほぼ全て消費してしまったがな。まったく……トキナもロルカナも、何をやっているんだか」
アイツ等がいれば、もっと良いレートで土属性&風属性のモンスターを購入できたし、そもそも買わずともアイツ等からの援軍で済んだのに!
こちらの支援は全面的に受けるくせして、肝心なときに音信不通とは……役立たずにも程がある!
「さてと……俺は現状仕事がない火属性モンスターに周囲の国を襲わせて、現金確保に動くかのぉ。加害性ダンジョンと認識されてはしまうが……」
このままじゃどのみち金欠で詰むし、今は"将来のこと"より"目先の金"が欲しい!
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〜モンティートside〜
「ふ〜ん。サウナみたいになっているのは知っていたけど、火属性モンスターだけでなく、風属性・土属性の敵も攻めてくる……ねぇ。水属性は?」
「水属性の敵とは、まだ遭遇していないそうです。"スチーム状の水"を広範囲で維持できる以上、居るには居ると思うのですが……」
そりゃあ火属性のガルガロクにとって、水属性のモンスターは購入レート・維持レート共に一番高い、金食い虫だもんね。
そのうえギフトも"火"に寄っているんじゃ、好んで使いたくはないわなぁ〜。
「ここ数日、ガルガロクの保有ポイントは不自然に推移しており、防衛戦の準備をしているのは明らかでした。水属性はいないのに、風・土はいるとなると……」
「普通に考えて、メグミ君とサーシャちゃんの部隊とウチの軍を、スチームの中でぶつけて同士討ちさせ、仲違いを決定的にしよう……って魂胆だろう」
トキナとロルカナは、すでに詰む寸前でガルガロクの相手をしている暇などなく、協力を仰げないようだが……
本気でウチの軍に誤解させたいなら、相応の出費は覚悟して水属性も一定数用意しておくんだったね。
「ちなみに、先輩の軍はどうやって僕等のモンスターを見分けるつもりですか? 感知タイプの方に任せるとか?」
「それもあるけど、基本的には土精霊が教えてくれるの。君達のモンスターが現場に着いたら、その一体一体に土精霊が取り憑いて〜〜〜〜〜〜」
「あぁ、なるほど。僕等の方からは分からないけど、それで見分けがつくなら全面的にお任せします」
「うん。任せてよ♪」
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






