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439話 自然に任せて穏やかに


〜メグミside〜




 序列一位の大ベテランであるモンティート先輩のダンジョンだし、とんでもないのが来るんだろうな、と思っていたけど……


 実際に見てみると、「豊かな農村」となんら変わらない景色が延々と広がっており、本当に農民思考なのだと理解させられた。



<<<−−− ムシャムシャムシャ…… −−−>>>


「うん。スーパーのより甘味は薄いけど、実がたっぷりで美味しいトウモロコシですね。これなら、外でも高値で売れるでしょう」



「うん。食べられる部分が他より多いから、一般的な相場の5割増しくらいで売れるよ! 土の恵み、様様さ♪」


 先輩いわく、僕の<オアシスフロア>とコンセプトは近いらしいけど、構造的にこれは一長一短あるな。



 <欲望のダンジョン>の<農村フロア>は、人口密度が低いため、用意した土地に対する収益率が低い。


 田畑に住み着く微生物やアメンボも、多少なりポイントを供給してくれるんだろうけど、ウチみたいに養殖箱で育てた方がはるかに効率的だ。



 その代わり自然に任せているから、反乱を起こされたりエリア乗っ取りを企てられるリスクが、極端に低い。


 少しでも異端なことをすれば村八分。


 これは集団で生きている村の住人にとって常識であり、どこでも変わらない普遍の事実なので、管理が楽で安定性も抜群だろう。



 ウチの<オアシスフロア>は逆で、人口が密集しているから収益効率は高いけど、敵の標的にされやすい弱点でもあるし……


 頻繁にお世話したり介入しなければ、住民たちの不満が溜まって反乱をまねく恐れがある。



 その対策として、容易にフロア移動できないようにはしているけど……たとえ反乱で僕の命を奪われる心配がなくても、住民が死ねば収益も減るんだよ。


 つまり<オアシスフロア>は<農村フロア>に比べると、ハイリスク・ハイリターンな経営モデルなのだ。






 たぶんモンティート先輩は、地上にも偶にいる緩い領主と同じように、基本的には麦を作らせて、空いた時間で綿花の栽培等をさせているのだろう。


 外界だと季節に左右されるし、あまり土を酷使すると土が枯れちゃうから、農業できない時期もあるけど……


 ここはダンジョン内で気温・天候とも自由自在だし、1年に複数回「田植え→収穫」のサイクルを回しているかもしれない。



「販売も、一手に引き受けていらっしゃるんですよね?」


「うん。全部引き受けているし、農具もウチからの貸し出し。それで手数料をとったあと、計画性がない人でも大丈夫なように12分割して返している」



 なるほど。


 じゃあここに住んでいる農民たちは、いわゆる「小作農」なんだね。


 とはいえ……会ったら笑顔で挨拶してくれるし、身体つきも健康そのものだから、生活に困るような報酬体系じゃないんだろうけど。



「あっ、そうだ! メグミ君。彼処にある雑貨屋へ行こう。面白いものが見られるよ〜」


「えっ? マジですか!? 行きたいです!」



 先輩に促されるまま雑貨屋(という名の小屋)へ付いていくと、中には<恵のダンジョン>で仕入れた品がズラリと並んでいた。


 そういえば、以前「買った物を転売していいか?」と尋ねられ、許可したことがあったな。



 定価で買ったとして、僕との価格競争で負ける先輩が、その商品をどう売り捌くのか疑問だったけど……こうするのね。


 たしかにダンジョンから一生出なそうな農民相手なら、多少価格を上乗せしても、殿様商売で好き放題売れるわ。






「まぁでも、競合がいない割には安い……ですね。定価に3割程しか乗せていない」


「そりゃあ、儲けより福利厚生優先のボランティア事業だもん。フライパンとかTシャツとか買った住民は、生活の質が上がって喜んでいるよ」



 ふむ。


 先輩自身も、経営者的な考えこそできるものの基本は農民思考なんだな。



 全部自分で独占せずに分け与える精神があるので、いつの間にか周りが敵になっていた……みたいな惨状にならないし……


 魔王であるにも関わらず、農民が鍬をもって働いている田畑を、こうやって薄着で出歩ける。



 僕もその気になれば、<オアシスフロア>で住民たちと触れ合えるかもしれないけど、首にかかった懸賞金目当てに裏切られるリスクが怖いので……


 同じようにとはいかないまでも、学べるところは参考にして、<恵のダンジョン>の経営にも活かしたい。



「ふふふっ、凄いでしょ〜♪ そして今日スティーブ君が泊まる宿が、ココ! ちょっと虫が出るけど、中の温度は涼しいから安心してね〜」


「えっ? あっ、ハイ。ありがとうございます!」



 先輩がスティーブに用意してくれた宿は、普段ここの農民が使っているであろう、保養所の2階だった。


 たしかにゴージャスじゃないけど、空気は澄んでいるし水の質もいい。


 なにより自然豊かでリラックス効果抜群なので、先輩との行動で気疲れしたスティーブには、ピッタリの環境だろう。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
スローライフの為に引退した冒険者とか権力争いに疲れた人達がそこそこいそう
[気になる点] 異世界の種苗が売られるのも時間の問題かな?
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