438話 欲望のダンジョン?
〜モンティートside〜
メグミ君が「<血盟の転移陣>お試し」を希望したので、挨拶がわりに、彼とスティーブ君を僕のダンジョンへ連れていくことにする。
さすがに全部見せられる訳じゃないけど……スティーブ君を泊めようと思っていた、上層階なら何処へ行かれても大丈夫だ。
「ってことで、お二人さん。移動のエネルギーは僕が持つから、この魔法陣の中に入って、僕と手を繋いで! そうそう……飛ぶよ!」
「「はい!」」
一時的に<水城のダンジョン>が管理者不在になっちゃうけど、土龍がいれば大抵の事態には対応できるし……
もしヤバくても、メールを受け取り次第飛んで帰ればいいだけだから、気にしなくてOKだろう。
「「えっ? モンティート先輩。ここ本当に、ダンジョンの中なんですか?」」
僕が治める<欲望のダンジョン>に入ったメグミ君とスティーブ君は、その辺の農村と何一つ変わらない光景に目を見開き、驚いている。
うん、そうなんだよ。
僕のダンジョンの上層階は、メグミ君の<オアシスフロア>と同じ、「人間を住まわせることでポイントを稼ぐ」仕組みのエリア。
土精霊の血を引く僕が恵みを与えた良質な田畑と、枯れることのない水を人間に貸し与える代わりに、ここに住み着いてもらい……
農業や綿花作りに勤しんでもらうことで、ダンジョンポイントを得つつ販売外注の手数料も稼げる、win-winの関係を築いている。
「ここに住み着いている農民は、親の田畑を継げなかった次男以下が多いから、出ていく人もほぼいない。ウチには、年貢って概念もないしね〜」
「なるほど! でもこの人達だと、外敵から身を守るのは難しそうですが……そこはどうしているんですか?」
「ん? 彼等が自衛するとき多少の武器を貸すだけで、手助けはしないよ。もし彼等を狙う人がいたら、死人も出ると思う。滅多にいないけどね〜」
「なぜ?」
なぜって……そりゃあ、この辺りの住民からすれば<欲望のダンジョン>は、余った子供や兄弟を飢え死なせずに済む天国だもん。
もし誰かがウチの農民を殺傷すれば、その事実はすぐ地上へ伝わり、犯人とその家族が村八分になるのだ。
「冒険者って言っても、大抵は地元で働く腕自慢じゃん? それに領主だって、地元民の反感は買いたくないから<農村フロア>はスルーするんだよ」
「「あぁ、なるほど」」
この<農村フロア>を抜けた先には、外敵と戦うためのエリアも存在するし、それなりに悪辣なこともやっているが……
ウチを滅ぼそうと考える連中も、基本的には<農村フロア>をすり抜けて、その辺りからスタートする意識なので、上層階で死人が出ることはほとんどない。
メグミ君達には言っていないけど、<欲望のダンジョン>は僕のガード力が強すぎて、デバフ系のギフトを受けても全部弾いてしまう。
だから敵対する魔王であっても、気軽にウチには攻め入れず、たまに現れるヤンチャ坊主も、眷属達に出張らせて鼻を折れば一発で静かになるんだよ。
「ちなみに……近辺の街の領主とは裏で密約を結んでいるから、軍に襲われることもほぼないんだけどね。ホント、根っからの<農民>ダンジョンなの」
「…………。(その根回しをできる時点で、<農民>の域を超えているってツッコミは、入れない方がいいんだろうなぁ〜。黙っておこっと)」
説明しているうちに、メグミ君とスティーブ君がなぜか黙っちゃったけど、「見慣れないものを見て驚き言葉が出ない」って解釈でいいよね?
ここの農民さんが作ったトウモロコシ、もう収穫の時期でメチャ美味しいから、おやつ代わりに買って食べる?
<<<−−− ムシャムシャムシャ…… −−−>>>
「うん。スーパーのより甘味は薄いけど、実がたっぷりで美味しいトウモロコシですね。これなら、外でも高値で売れるでしょう」
「うん。食べられる部分が他より多いから、一般的な相場の5割増しくらいで売れるよ! 土の恵み、様様さ♪」
昔は強欲な領主が、ここを領地にしようと攻めてきた事もあったんだけど、パンツまで剥ぎ取って全員追い返しているうちに、来なくなった。
彼等から刈った髪で作ったカツラ、けっこういい値段で売れたから、また住民に犠牲が出ない程度に来て欲しい気もするけど……
なぜか先方からは「貧乏神」扱いされて、酷いところだと祭壇まで作られちゃったんで、もうそういう臨時収入の機会はないと思う。
他の同盟メンバーのところも似たような感じで、地盤盤石すぎて退屈だから、メグミ君やスティーブ君の成長を見守るのは楽しいよ。
自分達とはもう縁遠いゴタゴタを、若いパワーで解決している姿とか見ると、孫の運動会を観戦している気分になって応援したくなる。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






