436話 死にたくないでござる
〜メグミside〜
捧げる血の量を聞いて、スティーブが「死ぬ! 死んじゃいます!」と騒いでいるが、この世界には回復魔法も増血剤もあるんだ。
大樽一つ程度の献血じゃ、死にゃしない。
「あ〜。僕の人生これで終わるのかぁ。どうせなら、最期にモンスター達と高級飯食い放題したかったなぁ〜」
「いや、まだ死なないから。というかお前さぁ〜。ご高齢のモンティート先輩でも、顔色一つ変えずに血を用意してきたんだぞ。なぜお前がビビるの?」
「なぜって……常識的な価値観だと、100%死に至る出血量だからです! そういうメグミ先輩は、用意できたんですか?」
「もちろん。昨夜のうちにチャチャっと用意したよ。先輩と話しながら、チャチャっと」
「そんな、チャチャっとって……」
「青褪めていないで、Let's チャレンジ! 不安なら寝ていてもいいから。僕が手早く抜いてあげるから、そんな怯えずにお休み♪」
スティーブの顔色的に、すでにお茶を味わっている余裕はなさそうなので、僕は横になって休むよう促したが……
床に寝かせてもガクブル震えて涙目になっているため、このまま続行するしかないようだ。
「ってあれ? 血を抜くときって、ベッドとかマットの上に寝るもんじゃないんですか? 僕が一番後輩だから、床でやれ……的な?」
「違う違う。幸いなことに、僕とスティーブ君は血液型が同じだから、今回は献血で流してあげようかと」
すでに把握済みのモンティート先輩はともかく、スティーブには「僕が他の魔王から奪ったギフトを使える」と知られたくなかったから……
できれば輸血中は寝ていて欲しかったんだけど、仕方ない。
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〜巨人化〜
マナを支払う事によって、自分の身体のサイズを変えられる。
それに伴って筋肉量や食事量も変わるが、骨の強度だけは変わらない。
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「えぇっ!!!? メグミ先輩が大きくなっている〜〜〜〜!!!?」
「うん。このサイズだと入るベッドのサイズもなくてねぇ〜。諦めて広さ特化のこの部屋でやる事にしたの。ほら、とっとと始めるぞ〜」
「あっ、ハイ!」
普通、輸血したところですぐに血の特性とか変わらないから、僕の血を捧げている感じにならないか、昨晩は心配したけど……
試しに少量で試したところ、一度対象者の肉体を通せばその人の血と判定されると分かったため、血液型さえ合っていれば問題ナシと判明。
ゆえにスティーブも、基本的には僕の輸血を巡らせるカタチで対応して……それでもフラフラする分だけ、回復魔法と増血剤で処理すればいいわけだ。
もっとも……巨人化の恩恵を受けなかった先輩は、全て自前で用意したわけだが……増血剤ナシ・1日でササッと大樽一つぶん瀉血したらしい。
先輩いわく、「日光浴して太陽のエネルギーを血に変えることで、肉体的な負担なく血を補える」とのことだが、全く意味が分からないのでチートだろう。
「あっ、これなら何とかなるかも。よかった〜。僕、ものすごい情けない死に方をするかと思って、腰抜けちゃいましたよ」
<自販機作製>以外のギフトを使う僕を見て、もっと驚くかと思ったが、自分の命運で頭がいっぱいのスティーブに、他のことを考える余裕はなかったのか……
<巨人化>のことはアッサリ流され、僕は大木よりも太くなった腕から彼に血を流し、それは彼の肉体を一巡したあと"清め済みの樽"へと注がれた。
「でも地力も優れている上に大きくなれるなんて、メグミ先輩無敵ですね! 凄いです!!」
「おぉ。ゴマを擦る余裕が出てきたか。別に、いい事ばっかりじゃないけどなぁ〜」
「でも普通、身体が大きいほど強いじゃないですか。その究極系みたいな能力だし、羨ましいですよ」
「う〜ん。ここまでデカくなると、"狙いやすいマト"と化すからなぁ〜。それに骨の強度は変わらんから、肉体の強度も見た目ほどじゃないし」
そもそもの話だが、「総司令官がその優れた武勇で敵を薙ぎ倒し〜」なんて展開になった時点で、その軍は壊滅しており負けなので……
僕自身が強くなっても、何の意味もない。
精々、肉の壁が分厚くて矢や槍が刺さりにくいとか、こういう献血イベントで困らないとか……その程度だ。
他者から奪ったギフトなので文句はないけど、ここまで使い道のない糞ギフトを選んだ奴は、一体何を考えてその結論を導き出したんだろうね?
これを選ぶくらいなら、まだ<ゴブリン強化>とか<容量無制限のアイテムボックス>みたいなギフトの方が、マシだと思うよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






