431話 穏やかにタチ悪く
〜メグミside〜
モンティート先輩が、お出かけついでに魔王<トキナ>に嫌がらせしてくれた事は分かったけど、この抗争の主役は僕等なので……
メインの反撃はコッチがやらなきゃいけないし、先輩により詳しい状況を尋ねつつ、ロルカナに仕掛けられた"離間の計"対策も考える。
「たしか先輩は、ロルカナに"離間の計が上手くいった"と勘違いさせる方針を、望んでおられましたよね」
「うん。企みが潰えたとアイツに気付かれたら、また"何処から来るか分からないアイツの嫌がらせ"に備えなきゃいけないでしょ?」
「はい。それなら、"上手くいっている"とロルカナに勘違いさせて時間と工数を稼ぎ、その間にコチラの応手を……って方が、お得ですもんね」
「そうそう。無限に時間とキャパシティがあるなら、成功するまで延々とやり続けるゾンビ戦法が使えるけど、実際はそうじゃないもの。確実に削るよ」
「了解です!」
創作物だと、ギリギリの戦いを繰り広げたりお邪魔ヒロインが足を引っ張って、最後にTUEEEで終わるのが定番だが……実際の戦いはこんなもんだ。
互いに謀略を巡らせて敵との差を淡々と広げていき、直接剣を交える場面になる頃には、すでに勝敗がついている場合が多い。
そういえばマサルも、以前いた世界で学んだ戦国時代の争いでは、味方を増やしたり敵の陣内に裏切り者をつくる、事前準備が一番大事であり……
最後のドンパチまで勝負が分からない、背筋がヒリヒリする戦いなんて、実際のところほとんどなかったって言っていた。
「で、具体的にはどう動きます?」
「簡単なところだと、魔王掲示板で僕がメグミ君達を庇わなくなるのがいいんじゃない? それだけで、中途半端な連中は勝手に邪推するでしょう」
「あぁ〜。奴等、暇すぎて噂話が趣味になっていますもんね。一度サーシャの件で、軽く嫌味の応報でもして、そこから冷戦パターンでどうです?」
「うん。それでOK! だけどメグミ君に嫌味言われると寂しいから、掲示板への文字打ちは一緒にやるよ。嘘でも口喧嘩って悲しいもん!」
「あっハイ。勿論です。(先輩、案外お豆腐メンタルなんだな)」
僕等と<農民>同盟の先輩方は、プレゼントしたスマートフォンでいつでも連絡をとれる状況にあるから、わざわざ掲示板を使う必要なんてない。
それに今回の訪問も、先輩の眷属が<水城のダンジョン>を訪れた事まではバレていると思うけど、先輩本人の訪問は隠せているはず。
だから前提条件を勘違いしているロルカナ達は、この程度の小細工でも勝手に妄想を膨らませて、沼にはまってくれる可能性が高いのだ。
もちろんコレだけでは、勇者排除派の妄想力をブーストさせる燃料として不十分なので、もう少し虚像を見せて燃料投下する必要がある。
「あとは<農民>同盟の調査部隊が、サーシャちゃんのダンジョン周辺を探っている……的な動きを見せれば、引っかかってくれるでしょう」
「あぁ、"狙っている"と勘違いさせるんですね。でも大丈夫ですか? 先輩達の調査部隊ってレベル高いから、足がつかなくて敵も把握できないんじゃ……」
「それは大丈夫。指揮は眷属にとらせるけど、"研修"名目で新米のモンスターも多数投入するから。彼等が足を引っ張って、敵の探査網に引っかかる形になるよ」
「なるほど。それなら大丈夫そうですね」
露骨に足がつくような細工をすると、普段の実力を知っている敵からは怪しまれちゃうけど、"研修"名目なら多少はやらかしても仕方ない。
若手かつエース格でもないサーシャのダンジョンは、先輩方にとって「新米モンスターに経験を積ませる上で、丁度いい難度の現場」でもあるため……
その辺を理解できる勇者排除派の連中は、怪しまずに妄想を爆発させ、起きもしない僕等の仲間割れでオ○ニーしてくれると思う。
「今後の行き来は、スティーブ君の許可をもらって<水城のダンジョン>に特殊な転移陣を設置し、そこから……っと考えているんだけど、どうかな?」
「スティーブさえOKなら、僕もそれで構いません。アイツにとっても、ミッションのお零れを貰いやすくなって助かるかと」
現時点でも、先輩と眷属さん達が滞在しているお陰で、<水城のダンジョン>は滞在ポイントでウハウハ。
いっそのこと、<農民>同盟専用のホテルエリアを作って、バカンスしてもらう代わりに滞在ポイントで儲ける、ビジネスを始めてもいいくらいだ。
まぁその対価として、接待役のスティーブの胃は緊張でぶっ壊れるんだろうけど……この厳しい魔王業界で儲けられるなら、安い対価じゃない?
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






