429話 序列一位の黒歴史
〜モンティートside〜
メグミ君を観察しつつベッドでゴロゴロしていると、ふと気色悪い何かが僕の気を侵食しかけ、数秒で逆に喰われて消滅した。
「ん? 呪いか……。この強さは、新規じゃなくてカウンター系。うん、以前潰した魔王<オワタ>が持っていた、<呪符創造ギフト>によるものだ」
「先輩、どうしたんですか? 呪い?」
「うん。もう弾いたんだけど、それなりに強い呪いが飛んできたんだよ。たぶん新規でかけられたんじゃなくて、ロルカナによるトキナの件の報復だと思う」
「怖っ! という事は、モンティート先輩が犯人だってバレたんですかね?」
「いや、バレてはいないよ。魔王<オワタ>が持っていた<呪符創造ギフト>は、特定できていない黒幕に対する報復用の呪符も作れたから、多分それ」
「へぇ〜。ギフトにも色々あるんですね。潰したって事は、もう魔王<オワタ>って死んでいるんですよね? 魔王ランキングにも名前ないし」
「もちろん。以前アイツが色々とやらかしてくれたから、お仕置きでダンジョンを半壊状態にしたんだけど、そしたら"応報の呪符"をくらってね〜」
「…………。無効化できたんですよね?」
「うん。僕は土精霊の血を引くハーフだし、半ば聖域と化している自分のダンジョン内にいたから、微塵も効果なかった♪」
「それで"人生オワタさん"は、追加のお仕置きをくらって滅びたと」
「そうそう。呪いが効いていない事を、彼は感知できなかったんだって。だから"応報の呪符"で半壊状態になった筈の、僕のダンジョンに攻めこみ……」
「くくくっ。そのまま捕まりシバかれたんですね。ご愁傷様です」
今回も、本来であれば"ゾンビ漬けレベルの土壌汚染"が、僕の<欲望のダンジョン>を蝕んだはずだけど……
あそこは土精霊の血を引く僕が、自分の血液で結界を張り巡らせて、強固な呪い対策をしているうえ、土精霊の棲家になっているからね〜。
元々の聖パワーが強過ぎて、「魔王10人がかりで生贄を大量に捧げた儀式」とかをやられない限り、ウチの土地は穢れないんだよ。
「あっ、そうだ! ほとぼりが冷めたら、メグミ君達のダンジョンにも結界を張ってあげるね♪ 特に<恵のダンジョン>は、土属性だから相性いいよ〜」
「やったぁ! 先輩、ありがとうございます!!」
うんうん、お礼が言えていい子だね〜。
今すぐやると、防御力の変化を勇者排除派に感じ取られて、「僕等の誰かがトキナのダンジョンをゾンビ漬けにした証明」になっちゃうから……
ちょい待ってから動くけど、軽く結界を張るだけでも大抵の呪いはシャットアウトできるよ!
「でも……先輩自体が聖人だからなおさら疑問なんですけど、なぜ先輩のダンジョンは<欲望のダンジョン>って名前なんですか? 合わな過ぎません?」
「あぁ、それは……。若い頃って、誰しもギラギラしている傾向があるじゃん? 僕にも、そんな時代があったんだよ」
「<農民>同盟なのに?」
「ふふふっ。まぁ相対的なものだからね」
当時は今ほど力がなかったから、メグミ君みたいに策をろうしたダンジョンを創っていたし、強欲な冒険者ほど罠にハマりやすい仕掛けも多用していた。
そして僕自身も、ぶっちゃけ当時は「悪い感じの名前の方が魔王っぽいじゃん」という、"厨二病"を患ってしまっており……
結構ノリノリで<欲望のダンジョン>と名付け、厨二感満載のテイストで看板まで自作した過去がある。
数年経って過ちに気づき、改名チケットを使ってダンジョン名を変えようか悩んだりもしたんだけど、そのとき既にウチは有名になっていたんだよ。
だから名称変更したところで、黒歴史が際立って悪目立ちするだけだし……実害がある訳じゃないから諦めたの。
「君達の中だと、サーシャちゃんが僕と同じ運命を辿りそうだね〜」
別に悪い名前じゃないと思うけど、清楚系な美人魔王がつけるには、<集金箱のダンジョン>って金金し過ぎるし……
彼女がもう少し大人になって、「自分のダンジョン名だけ品性が〜〜」と気にしたら、軽い黒歴史になっちゃうかもしれない。
でもまぁ、名称変更チケットは偶にもらえるアイテムだし、彼女も<未設定のダンジョン>から一度改名した経験があるので……
あっさり改名して、僕レベルの"黒"を脳内に刻みこむ前に持ちなおすかな?
「それにしても……うん、そうか〜。ロルカナって、魔王<オワタ>とも致したんだな。アイツ、顔面偏差値も終わっていたと思うんだけど……」
僕はオワタと夜の営みをするなんて絶対に嫌だし、<ハニー・カード>をフル活用するのって、予想以上に大変なのかもしれない。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






