427話 身内割引ナシ
〜トキナside〜
傷心で酒に入り浸りたい気分だが、嘆いていても事態は好転しないし、<水>と<腐液>の相性が悪すぎてダンジョンの維持費が上がってしまったので……
おれは怠くてロクに動かない手を無理やり動かして、ロルカナ先輩にヘルプコールを送り、ついでにガルガロク先輩にも事の次第を報告した。
「あの二人も同じ目に遭って"ざまぁ"な展開になれば、俺がバカにされる事もなくなるけど……同盟者の足を引っ張るのは悪手だからな」
もし彼等のダンジョンもゾンビ漬けにされたら、俺を助ける余裕がなくなって連絡しても無視されてしまい、全員泥舟コースへ一直線。
そうなるくらいなら多少不愉快でも、先輩方が同じ轍を踏まぬよう被害状況を正確に伝えて、勇者排除派の総力を維持するほうがいい。
まぁ俺の気遣いなんてあの二人には通じないから、もれなくバカにされて笑われるんだろうけど。
「マスター。ロルカナ様とガルガロク様が、土壌汚染の件でお越しになりました。応接間にお通ししてもよろしいでしょうか?」
「あぁ。通せ」
「かしこまりました」
案の定、いの一番に到着したガルガロク先輩は俺の不幸を大笑いして、腹筋崩壊でうずくまりピクピクと身体を痙攣させやがった。
そしてロルカナ先輩も、笑いこそしなかったものの……内心嘲笑し倒しているようで、鼻の穴がいつも以上にデカくなっている。
「(つーかコイツ等……なんか、シモの臭いがするな。もしかして、ここに来る直前まで<ピー>していたのか?)」
想像しただけで吐きそうな気分になったので、全て忘れて、被害状況の説明と浄化の手伝いを依頼しよう。
そうじゃねぇと、弱り目に祟り目って感じで俺の精神が壊れて、糞ダサい引きこもり魔王になっちまう!
「〜〜〜〜〜〜って事で、ロルカナ先輩に頼もうと思って呼んだんスよ。お願いできますかね?」
「いいけど、私の方も役立たずの80期が予算を食い潰したから、ちょ〜っとお金が入り用なんで報酬弾みなさい」
「うっス。(チッ、この守銭奴ババァめ! そんなに金が欲しけりゃ、魔王以外にも股を開いて売春ダンジョンでも営めばいいのに!)」
だが他に「浄化できそうな能力持ち」がいないので、諦めてロルカナ先輩に金貨一袋を支払い、ハニー・カードによる浄化を依頼する。
すると先輩は、<追跡ギフト>と<反転ギフト>を出して汚染された地上部へ出向き、仕事を始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜ハニー・カード〜
蜜月の交わりをもった魔王のギフトを10日間トレースする、特殊なカードを作れる能力。
1回の交わりにつき1枚しか作れないため、カードを量産するには下半身を酷使せざるをえない。
また自らを慰めたときに自然と生まれる<ドンマイポイント>を貯めると、コピーカード等、汎用性が高い低ランクカードを作ることができる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『う〜ん。この<追跡ギフト>で跡を辿れないとなると……たぶん犯人は、<農民>同盟の誰かね。メグミやスティーブの仕業じゃないわ』
現場からスピーカー越しに届くロルカナ先輩の言葉に、俺は心臓が止まるかと思った。
俺ごときが<農民>同盟に直接目を付けられたら、打てる手なんて何もないし滅亡を待つしかなくなってしまう。
「ロルカナ先輩。どうしてそう思われたんスか?」
『だって情報消しが完璧すぎて、どの角度から"追跡"しても実行犯すら掴めないんだもん! こんな技術、あのガキ共にあるわけないわよ』
なるほど……ムダに確度の高い情報、ありがとうございます。
おかげで胃がキリキリして、ストレス性胃潰瘍になりそうっスよ。
『とりあえず、ダメ元で<報復>ギフトを使って"応報の呪符"を埋めておくけど……追加料金よ。このギフトの持ち主、すでに死んでいて補充できないから』
「…………。アリガトウゴザイマス」
不意打ちでそんな話を振られると、横で同じように現場のモニターを見ている、ガルガロク先輩から漂う「精の香り」が意識に入ってしまい……
また吐き気が酷くなるから、金が欲しいなら黙って持って行ってくれねぇかな?
でもウッカリそんな事を言ったら、俺の私財を根こそぎ持っていかれて一文無しにされちまうから、"今流行りの吐き気止め"を飲んで我慢するけど。
「(この薬……マジでよく効くからまとめ買いしたけど、出所は何処なんだろう? 場合によっては、直接取引してやってもいいんだが)」
吐き気止めだけじゃなくて、頭痛薬や下痢止めなど、ストレスに事欠かない俺には必須の薬が、メチャクチャ安く裏ルートで出回り始めたんだ。
物によってはポーション以下の効果しかないけど、ポーションとは比べ物にならないほど安いし、錠剤だから腹も膨れない。
たぶん何処ぞの能力者が、薬草の大量生産に成功して裏ルートで大儲けしているんだと思うけど……羨ましいもんだぜ!
闇金締めあげに理不尽な金欠、挙げ句の果てにはダンジョンまで汚染されちまった、不運な俺と立場を代わってくれねぇかな?
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






