422話 心を込めたオモテナシ
〜モンティートside〜
「モンティート様。最初の湯は、何にいたしますか?」
「そうだなぁ〜。せっかくだし<山吹の泉>を頼むよ」
「かしこまりました」
スティーブ君が風呂場から退出した後、僕が眷属達に服を脱がせてもらっていると、オートマタ君が希望の湯を確認しにきてくれた。
それゆえ普段からよく入っている、<山吹の泉>を沸かした湯を選び、湯の効能で旅の疲れを癒すことに。
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〜十色の泉〜
乳白色で美しい10の冷泉が、枯れる事なく湧き続ける泉。
色は付いているが飲むこともできる。
・桜の泉(思い人と一緒に飲むと恋が実る)
・紅の泉(精力増強作用がある)
・山吹の泉(肩こり・腰痛を回復させる)
・山梔子の泉(MPを微回復させる効果がある)
・白花の泉(HPを微回復させる効果がある)
・青竹の泉(フレッシュな気分になれる)
・若梅の泉(頭の回転がはやくなる)
・常盤緑の泉(目の病気に効く)
・露草の泉(リラックス効果がある)
・葡萄の泉(香り高く美味しい)
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僕のダンジョンでは、<十色の泉>より一段階仕入れにくい<百色の泉>を使い、自分とモンスター達用の水を賄っているけど……
爺にとって<山吹の泉>は、100種類の泉の中でも好んで選ぶくらい使い勝手がいいのだ。
ちなみに<十色の泉>に含まれていない、<百色の泉>で一番活用しているのは……
撒くだけで農作物が大喜びする、<堆肥の泉>という農民向けの源泉だったりする。
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〜堆肥の泉〜
豊富な栄養を含んでおり、泉の水を取りこんだ植物の生態に合わせて、必要なエネルギーを提供する。
動物が飲むことも可能だが、味は堆肥ソックリなので愛飲できる代物ではない。
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湯着は使わなくてもいいというので、そのままスッポンポンでかけ湯をして、用意された個人風呂に入ると……
スライム達が丁度いい塩梅に僕の肉体を沈め、<山吹の泉>が肌に染みこむよう、プルプルと動き全身マッサージを施してくれる。
「フワァ〜。これ良いねぇ〜」
いくら味方とはいえ、他所様のダンジョン……それも風呂場で、素っ裸のまま寝るなどという愚行はおかさないが……
もしウチのダンジョンに同じ環境を用意したら、そのまま寝落ちして眷属達に「風呂で寝るな」と説教される、情けないけど幸せな一幕が増えるだろう。
「えっ? あぁ本当? うん。ありがとね〜」
きちんと躾けられたマッサージスライムは、マッサージついでに肌に溜まった老廃物も吸い取ってくれ、次は髪を洗ってくれるという。
「あぁ〜。最高!」
汚れた湯もすぐに捨てて新しい湯と交換してくれるから、メチャクチャ気持ちいいし、眷属達に介抱してもらわなくても風呂に入れて快適だ。
あまりに快適すぎて何度か意識が飛びそうになったが、辛うじて持ち堪えて、大浴場でフィーバーした眷属達と合流し風呂場を出たところ……
当然、先程まで着ていたカビと汚水で穢れた服は洗濯に出されており、シルクスパイダーの糸で編んだ部屋着が、全員分用意されていた。
「バスタオルも上質だし、使い終わったらすぐオートマタが片付けてくれるのもいいね。ふふふっ。メチャお偉いさんになった気分」
<農民>同盟仲間のダンジョンに遊びに行っても、(当然のことだが)脱衣所でのもてなしなんて一切ないため、久しぶりの体験でちょい感動したよ。
そして全員が着替え終わり、ホッと一息ついたタイミングで、<水城のダンジョン>の主人であるスティーブ君が入ってきた。
先程までと同じ仕立てのジャケットだが、僕等が風呂に入っている最中に彼も着替えたのか、色味が少し淡い感じになっている。
「お待たせしてしまい、申し訳ございません。只今より食堂へご案内いたしますので、そちらでお待ちの魔王<メグミ先輩>とご会食ください」
あっ、そういう事か!
ジャケットも着替えたけど、スティーブ君の格好全体が「出迎え仕様→給仕仕様」に変わっていて、違う印象を抱いたんだ!
「(本当に、魔王より執事向きなタイプだよね〜。この子)うん。ありがとう! メグミ君とも会うの初めてだし、楽しみ〜♪」
<水城のダンジョン>はお財布事情が厳しい若手ダンジョンゆえ、応接間や食堂といった富豪用設備に、ポイントを割く余裕はないだろうけど……
果たしてこの子は、どうやってその辺りを解決したのだろう?
イビったり先輩風を吹かせるつもりは毛頭ないけど、ガッツリ執事さんだったから、純粋に期待値が上がっていて気になるよ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






