421話 イタズラと気遣いの狭間で
〜モンティートside〜
個人的には、自分の足で<水城のダンジョン>を練り歩いて、やって来たメグミ君とスティーブ君に「よっ!」と言う、出会い方希望だったんだけど……
過保護すぎる眷属達によって、「表に出たら一生飯グリーンピースだぞ!」と脅され、なくなく擬人化した運び鳥の中で守られることにした。
「(まったくもう! 箱入り娘じゃないんだから、もう少し自由にさせてくれてもいいと思うんだけど。そもそも、僕に汚物攻撃なんて効かないし)」
土精霊と人間のハーフである僕は、その影響で"耐性の化け物"と言われるほどその手の嫌がらせに強く、無防備な状態でくらっても困った事はない。
というか……ダンジョンって、魔王の基本属性に限らず<土>の要素が混ざっているから、ダンジョン自体とものすごく親和性があって……
他所のダンジョンでもスルスルと壁抜けできるし、その気になればダンジョン壁に干渉して、一部構造を変えることまで出来ちゃうんだよ。
「(まぁ露骨にやったら悪目立ちするし、ムダに怯えられて駆除されたい訳でもないから、<農民>同盟のメンバーと眷属以外誰にも言ってないけどさぁ〜)」
たとえ杖をつくような爺であっても、僕にとってダンジョン内は安全地帯であり、そこまで保護されずとも致命傷を負う心配などないから……
若手のダンジョンくらい、もう少し自由に散歩させてほしいものである。
<−−− ピーンポーンパーンポーン♪ −−−>
『魔王<モンティート>とお連れ様でございますね? 当ダンジョンへお越しくださり、誠にありがとうございます。つきましては、そちらの穴に入っ〜〜』
おぉっ、さっそく来たね!
言い回し的にスティーブ君だと思うけど、はやく僕等をスタッフ用エリアへ導いて、僕を運び鳥の腹の中から出してくれ!
僕の願いが通じたのか、スティーブ君は迅速に動いてくれて、想定よりも早く「外へ出てもよい」と許可が出た。
なので僕はイタズラも交えて、運び鳥に「衝撃的な登場の仕方」を手伝わせて、ビッシリ裂けた運び鳥(擬人化中)の口から、ヨダレまみれで顔を出す。
スティーブ君に出迎えられた空間には、十分なスペースがあったため、こんな事をしなくても、運び鳥の擬人化を解いてから出れば良かったんだけど……
ついイタズラ心が疼いて、彼をビックリさせたくなっちゃったんだよ♪
「モンティート先輩でございますね? ようこそ<水城のダンジョン>にお越しくださりました。私は、このダンジョンの魔王<スティーブ>でございます」
「ふふふっ。スティーブ君、初めまして〜! もっと驚くかと思ったけど、意外と胆力あるんだね♪」
だがスティーブ君は、一瞬目を見開いて固まったもののすぐに執事モードに戻り、王族に仕える執事レベルの所作でお辞儀を披露した。
続いて彼は、雑菌まみれの眷属達とツバでベットベトに汚れた僕を見て、笑顔でお風呂を勧めてくれる。
「皆様お疲れでしょうし、まずは湯にでも浸かって身体を癒してください。湯はコチラでございます」
普通なら、「汚ねぇ」と思った内心が表に出てしまう場面だが……そういう様子は一切見せず、さすがの立ち居振る舞いだと感心させられたよ。
さすが代々執事を輩出する、由緒正しき貴族家の出身だと思った。
「(でも僕、お風呂嫌いなんだよなぁ〜。どうしよう?)」
別に<水>そのものが嫌いという訳ではないのだ。
だが土精霊の血が濃い僕にとって、<土>の影響が薄れて<水>が支配する領域となる風呂は、ダンジョンの中でも苦手意識をもってしまう。
それに、年齢による下半身の締まりも……。
まだ粗相をした事はないが、「他所様の風呂に浸かっているとき、熱で消化管が刺激されてウッカリ"大"を漏らしてしまったら〜」と思うと……
とてもじゃないけどリラックスして風呂になど入れないし、ましてや大浴場に浸かるなんて怖くてできないんだよ。
「って、アレ? 僕のお風呂は、ココで合っているの?」
「はい。ご高齢の方が広いお風呂に入られますと、踏ん張りがきかず滑って危ないので、個人で入れる甕形のお風呂を用意いたしました」
そして中でうごめく、水属性の可愛いマッサージスライムたち。
これならスライムがストッパーの役目を果たしてくれるから、滑って迷惑をかける心配もないし、最悪やらかしちゃっても甕一個の弁償で済む。
「湯は、<十色の泉>から湧き出たものを直焚きしてお届けいたします。湯加減も細かく調節できますので、こちらのオートマタに伝えてください」
「うん。ありがとう! 堪能させてもらいます♪」
さすがにスライムじゃ僕は殺れないから、眷属達も安心して離れられるし、スティーブ君の配慮には脱帽だよ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






