417話 人気一極集中
〜メグミside〜
80期魔王を隔離した後、残された奴等の配下にスカウトをかけたところ、高ランクモンスターほど「我先に!」と穴へ飛び込み……
躊躇いなど微塵も見せずに、スライムが誘導した(清潔な)スベリ台に乗って、契約会場まで降りてきた。
一度にまとめて来られると、もし彼等に敵対意識が残っており、コチラの隙を窺っていただけだったとき、ヤバイため……
慌てて落とし穴のフタを閉じ、「順次案内するから」と待機指示を出したが、彼等の勢いが凄すぎて、一体ずつを予定していたのに何ヶ所か被っちゃったよ。
「やっぱり無能な魔王の配下って嫌なのかな? まぁ嫌か。汚物やカビにまみれながら、死地に突っこむ間抜けに意見できないわけだし」
とはいえ……以前ロミオット達の配下をスカウトしたときよりは、虐げられ方がマシだったので、「7割応じてくれれば上出来」と考えていたのだが……
高ランクモンスターの勢いを見て、知能の低いモンスター達も危機感を抱いたのか、続々と待機列にならび、場にいた全員が寝返る状況に。
スカウトをかける側だから、こうやって笑っていられるけど……もし僕が敵の立場で、配下がここまで積極的に裏切ったら、ショックで泣いちゃうよ。
そういう事態になった時には、敵に捕らえられ死を待つだけの状況になっている可能性が高いため、(拷問で)涙も枯れ果てているかもしれないけど。
「あのぉ〜、非常に報告しづらいのですが……宜しいでしょうか?」
自分が80期魔王みたいな状況に立たされた時のことをイメージし、改めて「モンスターにはしっかり愛情をそそぎ、大事に育てよう」と考えていると……
スティーブ配下のオートマタ(執事タイプ)が、ものすごく困ったような表情で、僕等のところへ寄ってきた。
「勿論いいよ。何かトラブルでもあったの?」
「いえ、スカウト自体は上手くいったのですが……そのぉ…………殆どのモンスターが、<恵のダンジョン>行きを希望しまして……」
そう言いつつ、暗に「頼りないお前なんかに従いたくねぇ」と公開処刑されてしまった自分の主人に、気まずそうな視線を向けるオートマタ。
基本的に彼等は喜・怒・哀・楽が薄く、どれだけハードな環境においてもストレスを感じないのが特徴の、機械型モンスターなんだけど……
そのオートマタが気まずさを感じるくらい、所属先の希望が偏ってしまったみたいだ。
「ちなみに、所属先希望の割合は……」
「言葉を話せない低ランクモンスター以外、全員"メグミ様の配下に"……と」
「「…………」」
気まずい、仕方ない事とはいえメチャクチャ気まずい!
<配下を奪い合おう>ミッションのペナルティーラインは、すでにクリア済みだから、最悪それでもいいとして……
スティーブの気持ちを考えると、あまりに惨めで恥ずかしいし、申し訳なさすぎて彼の顔が見れないよ。
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〜配下を奪い合おう〜
魔王は、「己の欲望のために力を振るう恐怖の存在」でなければならない。
しかし中には、馴れ合いを良しとして争いを忌み嫌う臆病者もおる。
そこで魔王にとって手足のように大事な、配下の奪い合いをイベント化する事にした。
誰からもモンスターを奪い取れなかった弱者や、平和主義という名目で魔王の仕事をサボった輩には、今流行りの<地獄ルーレット>を回してもらう。
ダンジョンコアに軽くヒビを入れられたり、エースモンスターが極端に弱体化したり、魔王自身がしばらく五感を失ったり……敗者にはお似合いの末路だ。
さて其方は、モンスターを奪い取ってダンジョンを繁栄させるか、チキってダンジョン共々没落するか、どちらを望む?
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「うん。そりゃあそうですよね〜。メグミ先輩。<恵のダンジョン>のキャパは大丈夫ですか? 希望者全員の移籍を受け入れると、収支に響きません?」
「えっ? あぁまぁ、大量移籍自体は平気だよ。ウチのダンジョンは、広いわりに常駐のモンスター少なめだし、移籍者の先輩も多いから」
ただ、まさかここまで露骨に差が出るとは思わなかったなぁ。
モンスターの中には、「母性に包まれたい」とサーシャを選んだり、「鬼畜の部下は嫌だ」とスティーブの元へ逃げる子が、ある程度いると予想していたが……
実務能力だけの僕に人気が一点集中するほど、80期の下で過ごしたムダ極まりない日々が嫌だったのね。
「メグミ先輩が宜しければ、希望者は全員受け入れてくれると助かります。希望ナシの低ランクモンスターは、皆ウチで引き取るので」
「うっ、うん……。ソウサセテイタダキマス」
ごめんスティーブ、まだ気まずくて当分視線を合わせられないかも。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






