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415話 絶対的主従関係


〜とあるモンスターside〜




 無謀と思いながらも、テングン様の指示に従い<水城のダンジョン>の奥深くまで進んだが、案の定「まともに肉体労働できる環境」はなく……


 ありもしない快適な空間を探して歩を進める中で、魔王様達も我々モンスターも疲弊していった。



「(敵の魔王<スティーブ>……いや、その裏にいる鬼畜<メグミ>の戦略は、まぁ見事というか……。階を追うごとに差は広がるばかりだ)」


 テングン様は気付いておられぬようだが、探知系やサポート要員のモンスターを中心に、隙を見せた者は奇襲で即殺されている。



 そして敵は必ず、ターゲットの5〜10倍数で奇襲を仕掛けて、数の暴力で疲れ果てたウチのモンスターを殺し、反撃される前にすぐ逃げるため……


 敵よりも味方の犠牲の方が圧倒的に多くなっており、時間が経つほど犠牲者数にも差がつくんだよ。



「全軍vs全軍の戦いで大敗すれば、テングン様も目を覚ますだろうが……ジワジワ変化するパターンのうえ、疲れで脳が死んでまともな判断ができていない」


 いや、たぶん本当は気付いているのだろう。


 しかし頭では理解していても、自分に不利な現実を心が受け止められず、現実逃避しているのだ。



 プライベートでそういう言動をとる分には、「どうぞご勝手に」としか思わないが、指揮官としてそれをやられると我等の命に関わるので……


 正直迷惑だし、「もっと有能な魔王の下に付きたかった」と思ってしまうよ。



 ダンジョン生まれのモンスターは、主人替えのチャンスがない限り、我等を買った魔王に絶対服従しなければならない奴隷のようなもの。


 ゆえに思うところがあっても意見する事などできないし、ただ駒として指示に従い、消費されるだけなのだ。






 そんな事を考え、内心ため息をついていると……テングン様からイラッとする指示が飛んだ。


『よく聞け! 我々は、この<カビフロア>で睡眠休憩をとる。モンスター共は皆で力を合わせて、我等の身の安全を守るのだ!』



 魔王様だけでなく我々モンスターも、劣悪な環境での強行軍で疲れ果てているのだが……その辺の事情は考慮してもらえないらしい。


 というか、疲弊し集中力などカケラもなくなった現在の我等が、削られ続けて探知系不足に陥ったこの状況で護衛しても、魔王様の安全は担保されないぞ。



 もちろん主人の命令は絶対ゆえ、サボるつもりはないが……すでに病気に罹り、熱が出て死にかけているモンスターもいるのだ。


 人間上がりの魔王様に比べれば、私のような高位モンスターは「いつも元気で頼れるガーディアン」に見えるのだろうが、我々にだって"不調"なときはある。



 口に出すことは許されぬゆえ思うだけだが、よくまぁ「こんなザルな警戒体制」のなか眠る気になるよ。



「(腹が減ったなぁ。魔王様方は、一口サイズに切り分けられた干し肉で腹を満たせたが、私の食事は生肉。こんな不衛生な場所では食えぬ)」


 いや、食うだけならできるのだが……その結果、何かしらの病気にかかって心身共に限界となり、隊列から遅れて狩られるのが見えていたため……


 「飯抜き」を選ぶしかなかった、と言うべきか。



 この<カビフロア>も、カビから飛んだ胞子が空中を浮遊しており、すでに吸い込んだ肺の調子が悪いため……


 生のブロック肉をカビだらけの床に置いて、カビごと貪り食うなどという真似は、死に繋がるためしたくない。






「(だが、そんな事も言ってられんか。腹立たしいことに、我等の命はグースカ寝ている間抜けな主人と連動している)」


 もしテングン様が殺されてしまえば、どれだけ能力が高い優秀なモンスターでも、配下は皆道連れで死んでしまうため……


 自分が健康状態に気を遣っても、この間抜けな主人を守り生還させなければ、私にも未来はやってこないのだ。



<−−− ガコンッ! −−−>


「(しまった! 嘆きで意識が逸れて、護衛の役目が疎かになっていた。テングン様は!?)」


 いない……この穴を見るに、ダンジョンの基本トラップ「落とし穴」に引っかかり、イビキをかきながら地下へ吸い込まれていったな。


 他の魔王様も皆やられたようだし、道連れで我等の命も敵に握られてしまった訳だが、さてどうする?



「(ここまで派手に仕掛けた以上、二度目は警戒されるからここでトドメを刺す気だろう。つまり、落とし穴からの救出は容易ではない)」


 後を追ってこの穴に飛び込むのは、自殺行為だろうな。



 だがここでボケッと悩み続け、テングン様の死に抗わないのも、結局は死につながっているから同じだ。


「(私はまだ生きたい! でも、一体どうすれば……)」



<−−− ジジジィィ………………ブツッ! −−−>


『モンスターの皆さん、聞こえますか〜? 僕は、今君たちと戦っている魔王<メグミ>です』

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
産まれてからまだ100日ちょいしか経ってないのに、ここまで自立した思考と行動ができるのはめちゃくちゃ苦労させられてたんだな…
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