413話 <カビフロア>の真の恐ろしさ
〜メグミside〜
いつまでも続く悪環境に疲弊した80期共は、ついに<カビフロア>で心折れたのか、見張りの責任者すら用意せず……
配下のモンスターに「護衛しろ」と指示を残して、全員で爆睡し始めた。
「たしかに<水城のダンジョン>のフロアは、汚水まみれで床が汚いか足場が悪いかの2択だから、疲弊するのは分かるけどさぁ〜」
せめてシフト制で寝るとか、マサルのように多重結界を張ってから休もうよ。
鎧を脱ぐだけならまだしも、一部の坊ちゃんはパジャマに着替えやがったし……
ダンジョンという「敵の腹の中」にいる現状を、きちんと理解できているのか疑わしくなってくる。
「メグミ先輩、さっそく取り囲んで全員狩りましょう!」
「ふふふっ。スティーブ君、ストップ! 30分待ってから始めるよ。疲れていて眠りも深そうだけど、目を閉じた直後だと覚醒までの時間が短いから」
「あっ、睡眠サイクルの存在を忘れていました。すみません。決行時刻まで、ミスが出ぬよう準備を徹底しておきます!」
「うん。執事君、こちらも失敗がないよう最終確認してくれ」
「かしこまりました」
モンスター部隊の最終チェックを終えたスティーブは、つづいて<カビフロア>の一番ヤバイ仕掛けに不備がないか、調べ始める。
実は、80期連中が爆睡中の<カビフロア>は……結構奥深くまで潜り込まれたとき、敵を確実に仕留める目的で配置されたデス・フロアなんだよ。
このフロアに到達するまでの数階層を特に過酷にすることで、侵入者は<カビフロア>を見たとき、無意識的に「休憩ポイント」と思ってしまう。
だって足元も平らだし……"汚水"とか"殺人トラップ"に比べれば、"カビ"って気持ち悪いけど「布でも敷いて直接触れなければ大丈夫」感が出ているもの。
そのうえ、さり気なく催眠作用のある植物も栽培しているため眠気を誘うし、フロア全体が地味に暗く……
周りを見渡せる明るさはある安心感と、心地よく眠りに入れる暗さを兼ね備えた、丁度いい塩梅なのだ。
そしてココで寝た間抜け共には、典型的なんだけど食らうと詰むトラップが待ち構えている。
実は<カビフロア>の床は、全体が落とし穴構造になっており……その気になれば、いつでも任意の場所を床抜けさせることができるのだ。
普通は"落とし穴"なんて、斥候がいなくても足元を見れば分かるくらい、目立っちゃうものだけど……
床部分にモッサリとカビを生やすことで、トラップの継ぎ目部分を隠しつつ、もし違和感に気づいても「栽培用の設備だろう」と勘違いするよう誘導。
そしてカビじゃ防げない落下音も、落とし穴の底にスライムを敷き詰めて軽減することで、気付かれにくくはできる。
まぁコレに関しては、誰かが落ちたところを見れば一発で分かるものだから、オマケ程度の効果でしかないけど。
「メグミ先輩、全ての確認が終わりました! いつでも行けます!」
「了解。こっちも大丈夫だし、そろそろ30分経つから突撃しようか」
「はい!」
寝ている間に落とし穴に落ちた間抜けは、護衛のモンスター達が助け出す前に、スライムによって横穴へと捨てられ……
そこから「汚水スライダー」で強制覚醒させられた後、Sランクモンスターが10体待機している処刑場に、たった一人で放り込まれる。
今回は、ギフト強奪目的で全員僕が引き取るから、その場では殺さず、「餌としての分」を弁えさせるだけだけど……
それでもオリハルコンハンマーで、体中の関節はクラッシュされるし、肌色の部分がほぼ無くなるくらいの躾は受けるので、敵地で油断するもんじゃないな。
「ヨシッ、80期共が続々と穴に吸い込まれていく! メグミ先輩、作戦大成功ですよ!」
「そうだね。護衛役のモンスター達も慌てているけど、彼等だって疲弊しているから反応が鈍いし、もう心折れる寸前だろうから裏切り交渉も仕掛けやすい」
「そうですね! テングンの野郎が、寝る前に<ブラッド・バフ>で再度<改造阻害>を強化しなくて、マジでよかった〜。これ以上潜られるとか怖過ぎるんで」
「アハハハハ。この落とし穴は、強化版<改造阻害>をくらうと、発動できなくなっちゃうもんね。ホント、<ブラッド・バフ>の影響が切れていて助かったよ」
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〜ブラッド・バフ〜
血を捧げることで、対象のスキルやギフト……果ては自然現象にも、バフをかけることができる能力。
バフの強さは、捧げた血の格およびバフをかける対象の状態・相性によって決まるため、猛者の血を使うほど効果もハッキリと表れる。
ただし己の血は使えないため、儀式を執りおこなう際は、必ず"他者の血"を準備しておかねばならない。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






