表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

411/938

411話 抗えぬもの


〜メグミside〜




『お前ら、もう少しだから気合いを入れろ! ここはダンジョンの中だぞ。鎧を脱ぐんじゃねぇ!』


『だって延々とジメジメした環境が続いて、鎧の中ビチョビチョなんだもん。このままじゃ、俺たちまでカビだらけになっちまうぜ』


『気持ちは分かるが、命がかかっているダンジョンでそれは……』



 ダンジョンの奥深くに入りこみ、緊張の糸が切れた80期連中の様子を見て、「坊ちゃん育ちだなぁ」と改めて思う。


 素質だけなら、一流冒険者と変わらないキャパを与えられたはずだけど……本気で痛い目に遭ったことがないせいか、行動はその辺の盗賊よりも未熟だ。



「(ロルカナが配布しただろう、その鎧。一部とはいえオリハルコンコーティングが施された、新米には勿体ない高級品なんだぜ)」


 それをわざわざ自分から脱ぐなんて、「殺してください」と言っているようなものだ。



 徹底的に打ちのめさずジワジワと手駒を削り、敗北感を与えぬよう配慮して、僕が狩るまで逃げないよう努めたとはいえ……


 リーダーのテングン以外、誰も「ほぼ詰んだ」ことに気付かぬ緩みっぷりだし。



「(それでも、モンスターより弱くて範囲攻撃を放つと死んじゃいそうな魔王を、生け取りにするのは一苦労なんだけど)」


 ダンジョンの奥深くまで潜られて、スティーブも疲弊気味だし……そろそろモンスターではなく、魔王を剥がしにいかないとな。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜とある80期魔王side〜




 もう一階層降りれば、オブジェクト破壊に最適な場所が見つかる!


 その現実味の薄い可能性に縋って、疲労困憊で階段を降りた俺たちの目の前には、これまでの努力を嘲笑うかのように最悪の光景が広がっていた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜カビフロア〜


ありとあらゆるカビが生息する、カビにとっての楽園。

歩くだけでカビが舞い、油断すると皮膚と呼吸器系をやられる。

アレルゲンになりやすいカビも多いため、無事に脱出したければマスク・手袋の着用必須!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「もうダメだ。ずっと徹夜で頭がボーッとしているし、もう動けねぇよ」


「カビくらい、後で手洗いうがいをすれば平気だろう。糞じゃないぶんマシだ。諦めて、ここで一休みした後オブジェクト破壊も済ませようぜ」



 ロルカナ先輩に選ばれし精鋭……というていで来ているんだから、少しは根性見せろよ……と思ったが…………


 不眠が続いて脳が死んだのは事実だし、俺もこの先へ進む気力がわかねぇ。



 もし明確なゴールが見えていれば、疲れていても根性を出して目的地まで進むと思うけど、今回はゴールがどこにあるか分からないのだ。


 というか……スティーブの鬼畜さ次第では、「快適にオブジェクト破壊できるフロア」なんて存在しないのかもしれない。



 そんな不透明な状態じゃ、前へ進もうという意思よりも不安感ばかりが大きくなり、自然と足取りも重くなる。


 俺はリーダーだし、誰よりもヤバイ現状を理解しているから、自ら足を止めることはなかったけど……事ここに至っては、仕方ないな。






「テントの下に分厚い布を敷けば、カビの脅威をある程度は防げるはずだ。ここに作業拠点を立てて、一休みしたあとオブジェクト破壊に移る」


「「「「「了解」」」」」



 正直、テント設営をするのすら辛いほど眠くて腕に力も入らないため、作業は同行しているゴーレムにやらせたが……


 十分な数が揃っていたはずの手勢も、随分と減ったなぁ。


 直接敵と戦ってボロ負けした事なんて、一度もなかった筈だけど……いつの間に、こんなショボい数しか手駒がいなくなったのだろう?



 まぁいい、それよりも今は睡眠だ。


 頭が働かなさすぎて、「とにかく横になって休みたい」という本能に支配されてしまい、他のことが何も考えられない。



 随分減ったとはいえ、まだ護衛のモンスターはそれなりにいるし、80期全員で固まって寝れば、そこまでの危険はないだろう。


「(所詮、キモい環境を用意することしかできなかった相手だ。ここまで本腰を入れて攻めてきた事はないし、今回もきっと"様子見"とか言ってチキるはず)」



 さすがに熟睡するのは危険だが、寝落ちしそうなこの状況でフラフラ働く方がよりヤバイ。


 我等には天のご加護があるから、雑魚魔王ごときの襲撃なんか怖くないし、きっと襲われる事もないだろうから、ガッツリ寝よう。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] チェックメイト。 [気になる点] 80期の魔王の中にトキナからのスパイがやってたような視界共有されてる奴がいたかどうか。仮にいたとしてもメグミが砂龍は連れてきてたから多分見破れるとは思うけ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ