408話 カビカビパラダイス
〜メグミside〜
いい感じにカビが生えて激臭を放っている腐った魚の脂を、角切りにして80期魔王の頭上に降らせたところ、奴等は白目をむいて大騒ぎ。
派手に暴れるもんだから、髪の毛と肩のあたりだけでなく、服の中にまでカビの塊が入ってしまい、「ご愁傷様」という事態になった。
「くくくっ! カビだらけの状態で目を触ったり、トイレに立つと危険ですね。たぶん皮膚炎に感染しますよ」
「そうだな。奴等だって教育は受けてきたわけだし、そのくらい理解していると思うけど、カビは対処を間違えると厄介だぞ」
洗わずに放っておくと皮膚の中に侵入して、そこに住み始めシャレにならない皮膚炎を起こすし、足の裏以外だって水虫みたいな状態になる。
またストレスがかかっていると免疫も落ちやすいから、その隙をついて口内や喉に住み着きコロニーを広げ、トドメとばかりに負荷をかけるのだ。
何よりキモイ!
カビと共生したいと思える人なんて普通いないし、どれだけ不潔な男であっても、あの生臭いカビまみれの状態で笑うことはできないだろう。
特にアイツ等は、教会関係者のエリート層出身だから……清潔な暮らしに慣れきっている分、ショックも大きいはずだ。
などと思いながら、ゴーレム君にお願いして追加の「腐った魚の脂」もドバドバ落としていたら、急に装置が作動しなくなった。
壊れたわけでも、駆動エネルギーとなるダンジョンポイントが枯渇した訳でもないのに……何故だ?
「スティーブ君、奴等の会話を傍聴してくれ。たぶん、<天国と地獄フロア>で大地獄ルーレットが作動しなかったときと同じだと思う」
今のうちに原因を特定しないと、大事な場面でもこういう不具合が起こってしまい、命とりになりかねない。
「少しお待ちを。声を媒介にするギフトもあると習ったので、被害を最小限で抑えるために、オートマタ数体に聞き取りさせています。数分で報告が来るかと」
「分かった。たしかに声とか視線を合わせて……みたいな条件付きで発動する、厄介な能力もあるもんね。助かるよ」
たぶん今回は違うと思うけど……過去に対峙した、新米狩りのアリスというババァみたいに、一撃必殺技の嫌らしいギフトを持っている場合だってある。
というか、ロルカナが<ハニー・カード>でこういうギフトをコピーしていたら、それだけで使い放題なんだから、僕も気をつけないとな。
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〜魅惑の蝶〜
特定の条件を満たした場合、人間およびモンスターを一時的に魅了する事ができる。
魅了の効果は強く、敵対ダンジョン所属のモンスターが相手でも例外はない。
対象を操れるのは24時間で、ギフトが解けた後3日は魅了できない。
ストックできる数は対象の実力によって変わり、最大100体まで。
条件その1:相手の瞳を50秒間見つめる
条件その2:相手に10分間声を聞かせる
条件その3:相手に口づけをする
*上記3つのうち、1つでも満たせば魅了発動
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一応、アリスからギフトを奪った僕も使えるっちゃ使えるけど、こんなのに頼る気になんかならず一切使っていないので、熟練度は推して知るべし。
そもそもハニトラ系ギフトだから、モブ顔男の僕が持っていても、利用できる機会なんてほぼないんだよ。
「マスター。敵の会話から、ホシューという魔王が<ブラッド・バフ>という能力を使って儀式を行い、<改造阻害>の適用範囲を広げた……と分かりました」
「「…………!!」」
「またホシューは、魔王<テングン>が持つ<ゼリー化>ギフトも、儀式で強化する予定であると。ちなみに、この二人の仲は非常に悪いです」
「そうか。ありがとう。引き続き、監視を続けてくれ」
「かしこまりました」
つまり奴等の仲が良ければ、常時ホシューが<ブラッド・バフ>で他者のギフトを機能拡張して、凶悪なチームになっていたわけね。
ゼリー君と連まれるのも厄介だけど、ミズチと組まれていたら攻撃力爆上がりで、手加減する余裕がないほどウザかっただろう。
さっさとアイツを殺しておいて良かったよ。
「どっ、どうしましょう……。<水城のダンジョン>には、クイズや雨降り装置etc.……手動の仕掛けが多々あるのに、これじゃあほとんど役に立たない!」
「スティーブ君、慌てなくても大丈夫だよ。鍵となる敵は見つかった訳だし、とりあえずソイツを狙って殺しちゃおう。そうすれば、状況も変わるからさ」
「そっ、そうですね。取り乱しました。スミマセン」
だがスティーブの言うとおり、ホシューを殺せず要所まで到達されると、予定していた仕掛けが動かず軽々乗り越えられて、本気でマズイ事態になる。
<農民>同盟の先輩も遊びに来るわけだし、それまでに何とかしないと!
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






