406話 嫌な環境攻撃パック
〜とある80期side〜
汚物臭こそしないものの、この微妙に汚いガラス片がうず高く積まれた山を、どうやって上りきればいいのだろう?
スライムを連れてきているとはいえ、この量のガラス片を食わせるには年単位かかりそうだし、俺の<ゼリー化>ギフトでも問題は解決しない。
ゼリー状にしたところで、ガラス片の「微妙に切れて血管に入ると致命傷になる」特性は変わらないし、より深く埋まるようになって山に登れなくなるだけだ。
しかもこの山……ゼリー化しても意味がないくらい薄く、全体を油が覆っているから、絶対に登っている途中で滑って転びガラスの餌食となる。
「ふんっ、こんなゴミ山……"風の申し子"と名高いこのアキレス様が、ひとっ飛びで越えてやる! って、ノワガアアァァァァァ〜〜〜〜〜!!!?」
「(あ〜ぁ。誰も空路を選ばないのは、それ相応に何かあるからって事くらい、普通の頭がついていたら理解できただろうに。奴の脳は藁でできているのか?)」
ガラス山を登っていくのが難しいなら、飛行系モンスターや飛行魔法を使って、空から行けばいい……これは、皆が思いつくことだ。
だけど空には、「目に見えないほど細く伸ばされたオリハルコンの糸」が張り巡らされており、無闇に突っ込むとアイツみたいにスパッと切れてしまう。
「うわあぁぁぁ〜〜〜〜〜ん。ママァ〜〜、痛いよぉ〜〜〜〜〜〜!! 脚がぁ、脚がとれた〜〜〜〜〜!!!!」
その後、このバカみたいに「ママ」を連呼してマザコンを晒し、周りにドン引きされる奴はそうそういないだろうが……
「うっかりオリハルコン糸を避け損ねて輪切りになり、そのままお陀仏」なんて展開になったら目も当てられない。
「ん? なんか雲行きが怪しくなっていないか? ロルカナ先輩にいただいた<改造阻害>カードは、きちんと使われているから……」
この変化は俺達の侵入に合わせたものじゃなくて、元々組み込まれていたプログラムなのだろう。
<−−− ポタッ……ポタポタッ……シャァ〜〜〜〜 −−−>
「うわっ。言っているそばから雨が降ってきやがった! しかもこの雨、なんか痛いぞ! もしかして、ヤバイ液体が含まれているんじゃ?」
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〜ハッカ油〜
ハッカソウというミントを乾燥させ、そこから抽出した植物油。
消臭効果・虫除け効果・清凉感・リラックス効果等があるため、1プッシュ噴霧する程度なら、生活の質を大いに向上させる。
しかし刺激性物質でもあるため、直接肌に塗ったり大量に使うのは厳禁。
特に目や粘膜部分に入ると、刺激感で絶叫するハメになる。
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「遅いっ、遅いわ!! うっかり見上げて、目に入っちまったよ!!!! 痛ぇ、痛ぇ〜〜〜〜!!!!」
つーか匂いもヤバイし、すぐ揮発してなくなる感じでもないのに、俺たちが来たときだけ空から降ってくるの、おかしいだろう!!
<改造阻害>の効果は、どうなっているんだよ!?
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〜改造阻害〜
他の魔王が管理するダンジョンへ侵入している間、そのダンジョンの改造を阻害できる。元々設置されていたもの・ギフト絡みのオブジェクトには、効果が及ばない。
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「おぃテングン。叫んでないで、なんとかする方法を考えろよ! お前がリーダーなんだから!」
「うるせぇ! 今までロクに指示も聞かず好き勝手していたくせに、こんな時だけリーダー扱いすんな。俺だって困っているんだ!」
クソッ、どうしてこうなった!?
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〜メグミside〜
「くくっ、騒いでる騒いでる。新鮮味はないけど、地上に困難な道をしかけて空へ誘導した後、一発そこで絶望させて雨でトドメ。テンプレ的でいいね」
あの80期共は、<改造阻害>さえ使えば「不定期に発動するタイプの罠」は使えないと、思い込んでいたみたいだけど……違うからな。
任意の液体を入れたら雨として落としてくれるタイプの装置を、手動設定可で設けておけば、あとは好きなタイミングで液体を注いでボタンを押すだけ。
今回はまだハッカ油だから、優しい方で……本来なら濃硫酸の雨を降らせて、本気で敵を害しにいく展開だ。
「(奴等はギフトの宝箱だし、モンスター達も"ウチの子"になる可能性があるから、そこまで酷い扱いはしないけどね)」
ちなみに……<改造阻害>をかけられる前に、このフロアに仕込んだ装置は、"小石サイズ"までなら固体でも降らせられるので……
アイツ等に次降るのは、「スースーする油」じゃなくて「腐ってカビが生えた魚の脂」にする予定である。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






