4話 初めての自販機作製
「う〜ん……。この高そうな碧玉がダンジョンコア? ならこの空間が、ダンジョン最奥にあるコアルームってやつか?」
とりあえず、外の様子を見てみよう。
ドアを開け部屋の外を確認すると、目の前には教室よりやや広い程度の砂漠と、地上へ繋がる階段があった。
階段を登った先にあるのは、もちろん広大な砂漠。
「くぅっ、キツイ……。焼け付くような暑さっていうのは、こういう状況を言うのか。聞くのと体験するのじゃ大違いだよ」
幸いにもコアルームは、心地よく眠れる程度の気温だが……外に長居していると、身体の水分を奪われ干からびてしまう。
自販機作製ギフトを使いこなせるようになるまでは、むやみに外へ出たりせず、コアルームの中で生活するのが無難かな。
「まぁだけど……僕が”長居したくない”と感じるって事は、他の奴らもそう思うわけだし……攻められにくくて良い場所だ」
とはいえ今の状態では、ダンジョンの入り口からコアルームまで、実質20メートル程しかないから……
なるべく早く防衛環境を整えて、熟睡できるようにしたいな。
外の状況を確認できたので、なぜか温度が保たれているコアルームへ戻り、自販機作製ギフトの検証にとりかかる。
「え〜っと、なになに……? 魔法を使う要領で片手を前に出し、”クリエイト”と唱えなさい……」
正式にギフトを取得したことで、表示できるようになった説明文を読み、それに従って呪文を唱えると、目の前に身長より高い箱が現れた。
「この箱が自動販売機? ふ〜ん。透明な筒……”ペットボトル”の中に、飲み物が入っているわけね。交換レートは、1本150ポイント!?」
タダで飲み放題だった井戸水よりは高いけど、ダンジョンの正規レートよりずっと安いじゃないか!
この値段なら、砂漠でも気軽に水分補給できるぞ!
「さっそく1本買って飲んでみよう。このペットボトルは、”お茶”って書いてあるな。こっちはジュース? 炭酸飲料って何だ?」
まぁいいや、お茶からいってみよう!
“お茶”と書かれたボタンを押すと、手持ちのポイントが自動で差し引かれ、透明な容器に入った緑色の液体が落ちてきた。
「コクッ……コクッ……。ちょっと苦いけど、毒は入ってないみたいだし大丈夫だろう。飲み物の確保はできたから、残る急ぎの問題は食料と防衛……」
ステータス画面に表示されている、自販機作製ギフトの説明文を読み進めたところ……
ギフトのランクが初期値(F)の状態では、”飲み物限定”の自販機しか作れないらしい。
黒パンなら1個700ポイントで買えるので、”味”と”固さ”にさえ目をつぶれば、飢え死ぬ心配はないと思うが……
折角ならギフトを活用したいし、ここでの生活が一段落つき次第、ランクアップの条件を調べるぞ。
「しかし……サーシャ様、大丈夫かなぁ〜。うまく立ち回れているといいけど……」
今の僕にはどうする事もできないと分かっているが、気が緩むと、つい庇ってくれた彼女を思い出してしまう。
皇太子にはむかった時のサーシャ様、少し震えていたけど、凛としていて美しかったなぁ。
仲良くしても得がない奨学生の僕を、仲間と言ってくれる人なんかいなかったから、驚いたけど嬉しかっ……
「ゴホンッ! 我ながら、重いし気持ち悪い。ヒマができたら悩んでもいいけど、その前にやる事があるだろ? 気合を入れろ、僕!!」
最低でも……まともな防衛拠点を作って、生活に必要なポイント収入を得られるようになるまでは、自分の事だけ考えるんだ!
「その為にも、今のザル防御をなんとかしないとね」
ダンジョンから得られる地脈ポイントも、空間を広くするほど増えるみたいだし……とりあえず、役目を果たしていない<砂漠フロア>を改造するか。
ポイントは極力使いたくないので、手持ちポイントの中から1万だけ使って、コアルームの外にある、申し訳程度の<砂漠フロア>をいじる。
「コアルームの扉が見えている状態じゃ話にならないから、足元の砂はそのままで……迷路を追加。残りのポイントは、フロアの拡張へ振り分けよう」
防衛用のモンスターを呼び出したところで、維持費がかさむだけだし、大した戦力にもならないから、予算は全て内部構造の複雑化にあてた。
1万ポイント程度しか使っていないから、広さもグラウンドくらいだけど……これなら最低限の足止めはできるし、初日としては上出来だよね!
「防御面の対策は、とりあえずコレでストップ! 次は収入アップを目指そう。ポイントを獲得する方法は、色々あるみたいだけど……」
まずは、基本的なところから検証していく。
「その1:僕のHPと交換。コアの上に手を置き”ライフ”と唱えると、コアが魔王のHPを半分吸い取り、ポイントへ交換してくれる。交換レートは1:1」
多少の倦怠感はあるけど、定期的に行えば黒パン代くらいは賄えるかもしれない、貴重な手段だ。
メグミ(16)
種族:魔人族(魔王)
職業:ダンジョンマスター(見習い)
HP:153/305
MP:10687/10687
スキル:回復魔法B・物理耐性C・精神耐性D
ギフト:自販機作製F
その他:称号 (サンドバッグ)
ダンジョン名:恵のダンジョン
属性:土
順位:30/30(311/311)
保有ポイント:90717→90869
地脈ポイント:2ポイント/日
階層:1
「その2。地脈エネルギーの収入は、今のところ少な過ぎるから後にして……次は、その3。僕以外の生命エネルギーを、ダンジョンに回収させる方法」
いきなり大物を狙うのは危険だから、HPが8割まで戻ったら外へ出て、砂漠に生息している小さな虫でも狩ってくるか。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)