387話 ダンジョンのゲス化が進む
スティーブがやる気になってくれたので、早速「棚だらけの部屋」がいくつも並んだフロアを作り、棚に「寒天培地入りのシャーレ」を詰めた。
カビの元株については、<恵のダンジョン>に腐るほどブツがあるため……それを使えばいいだろう。
「うわ臭っ! メグミ先輩、これは……」
「ん? 世間知らずのアホ冒険者がウチのダンジョンに置いていった、手入れ不十分でカビだらけの革鎧。ちなみに本人はご臨終済みね」
「あぁ、なるほどです」
スティーブが作業をしなくても済むように、彼配下のオートマタを一ヶ所に集めて、手取り足取り「カビの培養作業」を教え……
そのオートマタ達に、ゴーレムの指導と監督業を任せる方針だ。
「こんな感じで、カビにも"繁殖しやすい温度"っていうのがあるから、コスパを考えて、常温で蔓延れるカビを選んで増やしてくれ」
「「「「「分かりました!」」」」」
ちなみに……カビ培養に必要な備品は、<恵のダンジョン>に置いてあるセレクト自販機で大人買いした。
専門店にしかなさそうなシャーレ等も、意外と工務店やドラッグストアにあって、全部格安で揃ったよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜セレクト自販機(Sランク昇格後)〜
以下の店で扱っている物の中から好きな商品を100点選び、ソレ等をいつでも自販機のメニューに並べることができる。
データの書き換えやリセットは、前の商品選択から1日以上経っていないと行えない。
・雑貨屋
・ドラッグストア
・工務店
・スーパー
・武器屋
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「うん。湿度調節もバッチリだし、あとはカビの繁殖力に期待して数日待つだけだ。ゴーレム君、それまでお世話頼んだよ」
「「「「「「「「「「オマカセクダサイ」」」」」」」」」」
カビが大繁殖して猛威をふるうまでには暫く時間がかかるので、仕込みを終えた僕達は、引き続き<水城のダンジョン>の改善策を練ることに。
不労所得獲得の方法は、カビ培養以外にも色々あるけど……成果が出るまでに時間がかかる方法ばかりだし、初期投資もバカにならないので……
今回はカビだけにして、スティーブが80期を撃退した後、本格的に教えていく。
「う〜ん。敵が挫けそうな鬼畜フロアは……。あぁ。水属性で水が無限に湧きでるわけだし……とりあえず、ダイラタンシー・マラソンを組み込んでみない?」
「えっ? メグミ先輩、それってどんなモノですか?」
「ダイラタンシーについては、高等学舎でも習ったから知っているよね? 水と片栗粉を一定割合で混ぜると、不思議な物体になるやつ」
力を加えると短時間だけ固まるから、その気になれば上を走ることも可能なんだけど……立ち止まるとズボズボッと沈んで再浮上できなくなるんだよ。
「だからその性質を利用して、30kmくらい"ダイラタンシーの道"しかないフロアを造るわけ。もちろん防衛側は、随所に設置した出窓から攻撃で」
「…………。さすがメグミ先輩。考えることがエゲツないです!」
ねぇ今、一瞬ドン引きしたよね!?
そして「凄い」と言いつつ、僕との距離が数センチ離れた気がするんだけど……僕、素直な後輩をこんな目に遭わせたりはしないよ!
「あとは鉄板の、ハッカ油プールとか。プールの水温を低くして、宝探し(ハズレの瓶にはハッカ油が入っている)にすると、マジで死者出ると思う」
ちなみに……さっきのダイラタンシーは、ゴーレムのような「動きが鈍い非生物」を標的としており……
このハッカ油プールは、人間や動物型のモンスターを体の芯から凍えさせる、嫌がらせだ。
「防御用のフロアを造るコツは、そのフロアで脱落させたいターゲット層を具体的に想像して、奴等が嫌がるような仕掛けを組み込むことなの」
「ふむふむ。勉強になります!」
と言いつつ、さらに距離が開いた気がするんですけど。
大丈夫だよ〜、僕これでも結構優しい先輩だから、君が裏切らない限りイジワルしたりしないよ〜!
「あと経費をケチって嫌がらせする場合、"このため池は、モンスターがトイレ代わりに使っています"的なプラカードを設置すると、不快度が増すはず」
「分かりました。設置させていただきます! (ダンジョンが強化されているのは分かるけど、同時にどんどんゲスくなっているような……)」
あのねスティーブ、勇者がいた世界には「見ざる・聞かざる・言わざる」って言葉があるんだぞ。
カッコつけて死ぬより、ゲスく生き延びて皆と笑う日々の方が、お前だって本望だろうし……プライドやモラルには蓋をして、「見ざる」徹底が大事だよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






