386話 勝手に育って増えるもの
〜メグミside〜
配慮して尋ねなかったステータスも含めて、全ての情報を開示してくれたスティーブに、感心する反面……
彼が持つ<水の職人>ギフト……というより、<水城のダンジョン>の運営に関する問題点に気付いた僕は、言葉に詰まり数秒間悩んでしまった。
「(マズイな。そこそこ街の近くにあるとはいえ、この微妙な立地でどうやってポイント収入を得ているのかと思ったら……セルフ生産のみ…………か)」
僕も最初の頃は、自分のHPが回復するなりポイント化して食い扶持を稼いでいたけど、自分自身で生み出すやり方だといずれ限界がくる。
というか、もうとっくに限界は来ているんじゃないか?
<水城のダンジョン>は、この間まで新米だった魔王が創ったにしては立派で、必要なところには十分なポイントが注ぎ込まれているけど……
魔王ランキングでもそこそこ上位にいたスティーブが、あっと言う間にポイントを使い果たして、そこからの回復も殆どないなんて。
「外部のモンスター狩りと、自分自身のギフトおよびHPによる回復を除けば、ポイント収入を確保する手段がない」と言っているのも同然だ。
「あっ、あの……スミマセン。ショボいギフトで……」
「えっ? いやいや。ダンジョンが大きくなればギフトも強力になるし、大器晩成型のバッファータイプでいいと思うよ。(いけない。思わず黙っちゃった!)」
幸いなことに、不労所得の獲得方法については僕が指導できるし……80期が<水城のダンジョン>に到着するまで、まだ2,3日あるはずだから……
それまでに大枠だけでも作ってやれば、あとは自分で広げていけるはずだ。
その為にもまず、スティーブに「自分や部下が働かずとも得られる不労所得」の作り方を、教えなければならない。
「スティーブ君。分かっていると思うけど……君のギフトは大器晩成型だから、80期との戦いで決定打になる程のインパクトは出せないだろう」
「はい。それなりに値が張るとはいえ、同程度の武器を一般冒険者が入手できるようなギフトじゃ、役に立たないと思います。スミマセン」
まぁ、それもあるけど……何より、「1日1個しか作れない」って制限がキツイんだ。
もし100個くらい作れるなら、「ダンジョンを守るモンスター達にばら撒くことで、全体の戦闘力を上げて相手を圧倒する」という戦法もとれた。
だが"1日1個限定"かつ"市販品と大差ない出来"では、「現時点じゃ使い物にならない、大器晩成型のバッファータイプ」と言わざるをえない。
「だから君のギフトの育成は、追い追いやるとして……とりあえず、自分や配下が働けない状態でも入ってくる、不労所得を作るところから始めてみないか?」
「えっ?」
うわぁ〜、自分で言っておいてなんだが……胡散臭いことこの上ない!
嘘をついた訳じゃないんだけど、なんか自分が何処ぞの「金融アドバイザー擬き」になったような、アレな気分を味わったよ。
「ゴホン! 分かりやすく言うと、現金と違って生命エネルギーは、皆意識せず垂れ流しているから、それを拾い集めて収益化しても揉めないんだ」
「…………?」
さすがに突拍子もない話すぎて、スティーブはピンとこなかったようで、頭に疑問符を浮かべたままだから……
僕やサーシャがどういう風に不労所得を得ているのか、その仕組みをどんな感じで作っていったかを、例に出して一つ一つ説明した。
「なるほど! つまり上位魔王は皆"何かしらの不労所得"を持っていて、それがダンジョンの底堅さに繋がるって事ですね!」
「うん。例外もいるかもだけど、基本的にはそうだよ」
悪い例で言うと……君の同期であるユアンも、生命エネルギー獲得のために、奴隷を牢屋に閉じ込めて人間牧場を経営していたしね。
あとウチの<オアシスフロア>や<鉱山フロア>も、住民の扱いにこそ気を遣っているものの、基本的な仕組みは人間牧場と同じだ。
そこら辺は各魔王が、己の倫理観と実益を天秤にかけて、妥協できるラインで運営していくしかない。
「たとえば<水城のダンジョン>の場合、水カビとかプランクトンも"侵入者"認定される筈だから、そういうのを繁殖させて稼ぐのもアリかもね」
「…………ウチは川の近くのダンジョンなので、プランクトンは無理ですが……水カビなら、自力で繁殖できそうですね。やってみます!」
「うん、その意気だ! あぁ、もちろん作業はゴーレムにやらせるんだよ。君の仕事はあくまでも司令塔。君自らが労働していたら、頭打ちになっちゃうからね」
「はい!」
スティーブが水カビを育成するなら、ついでに様々なカビを育ててもらって、"侵入者をカビまみれにする攻撃"に繋げるのもいいんじゃないかな?
誰だってカビに触れ過ぎれば痒くなるものだし、敵がアレルギーを発症して、狂死してくれたら儲けもんだ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






