385話 スティーブの能力
〜スティーブside〜
まさかメグミ先輩が直接来てくれるとは思わず、極限状態だった事もあって、僕は挨拶もせずその場で泣き崩れてしまった。
先輩がわざわざ時間を使って来てくれたのに、コレじゃダメだと分かってはいるが……
あふれ出る安堵の気持ちを抑えることができず、涙を止められなかったのだ。
「あ〜うん。そりゃあ、"守るべき者達"の命がかかった状態だし、そうなるよなぁ〜。うん。僕一人で来てよかった。サーシャはいないから気にせず泣けよ」
「ズビバゼン……」
たしかに、もしメグミ先輩がサーシャ先輩同伴で来ていた場合を考えると、情けなさが限界突破して、黒歴史になること確定だ。
メグミ先輩の前で……ってだけでも、十分情けないし恥ずかしいんだけど、声色から怒りは見えないし、先輩はある程度こうなることを想定していたのかも。
「グスッ、グスグスンッッ、ズビィ……」
あぁ、でも怒ってないと分かっても恥ずかしすぎてキツイ。
衝撃から少し時間が経って頭が回り始めたぶん、より自分の情けなさを自覚できて、メンタルがゴリゴリ削られていく。
「え〜っと……マジで、ご迷惑をおかけしました。折角お越しいただいたのに、挨拶もせずこの有様で申し訳ございません」
「アハハハ。別に構わないよ。"ダンジョンコアを壊されたら死ぬこと"すら忘れて、モンスター達を捨ててダンジョンから逃亡しないだけ、全然カッコイイって」
メグミ先輩、それは流石に評価基準が低すぎませんか?
そんなアホ魔王、どこにも……いや、冷静に考えると結構いそうで、逆に怖くなってきたかも。
「まぁ本来なら、ゆっくりお茶でもして親交を深めてから……がいいんだろうけど、状況も状況だしダンジョンマスターとしての仕事に移ろうか」
「はい。ご指導、ご鞭撻いただけると幸いです」
僕が泣き止み精神的にも回復したのを見て、メグミ先輩は「<水城のダンジョン>をどうするか?」という問題にとりかかってくれた。
改めて見ると、メチャクチャ強そうな護衛を連れているけど、数は4体だけだし……自らの安全より、コチラの気持ちを優先してくれたのが窺える。
「見た感じ、スティーブ君のダンジョンポイントはもう枯渇しているみたいだし、ダンジョンの改造費はコチラが支援する。それでいいね?」
「はい。本当にありがとうございます!」
悪い先輩なら、ここぞとばかりに酷い条件を呑ませて僕から色々奪おうとするほど、追い込まれている状況だが、メグミ先輩は何も要求せず……
ただ「その代わり、改造案については口出しさせてもらうよ」とだけ言って、アイテムボックスから出した大金を僕の前に置いてくれた。
「コレ、とりあえずの予算ね。これじゃ足りなそうなら、追加でもう少し入れることはできる。じゃあ始めようか」
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
「まずダンジョンを改造するにあたって、スティーブ君のギフトを知っておきたい。基本的に魔王は、自分のギフトに合ったダンジョンを作るからね」
「はい。僕のギフトは<水の職人>というもので、1日に1つ"水属性のアイテム"を生み出すことができます」
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スティーブ(17)
種族:魔人族(魔王)
職業:ダンジョンマスター
HP:1205/2214
MP:1865/3526
スキル:剣術B・身体強化D・水魔法C・物理耐性D・精神耐性E
ギフト:水の職人
その他:称号 (上級パシリ・上級下僕)
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〜水の職人(C)〜
HPを半分捧げる代わりに、1日1つ水属性のアイテムを生み出すことができる能力。
アイテムのレア度はギフトランクによって変わり、ギフトランクは能力者の職業ランクと相関する。
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僕は元々、水魔法を得意とする魔法剣士だったが、魔王転生時に「所持ポイントじゃ良質な武器・防具を揃えられない」ことに気付き、このギフトを選んだ。
子爵家の後継だったため、最低限の衣食住には事欠かなかったけど、武器や防具は親の所有物だったし、ポイント化された僕自身の資産は少なかったのだ。
今になって冷静に考えると、魔王自らが戦う時点で"ほぼ詰んでいる"ので、僕の戦力を強化しても意味ないのだが……
作ったアイテムはポイント化できて、ダンジョン育成に役だったし、モンスターに装備させる事もできたので、「結果オーライ」とポジティブに捉えている。
ただ……<水城のダンジョン>の育成度合いだと、Cランクまでしかギフトランクを上げられず、生まれてくるアイテムも二級品ばかりだけどね。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






