371話 79期の悲鳴
自らの意思でメグミ達の足を引っ張る、便利な手駒を作るべく、勇者排除派のロルカナはトキナ&ガルガロクから支援を受け……
80期の魔王に金銭的援助とコンサルをおこなって、彼等を1年先輩の79期より成長させた。
魔王歴こそ79期の方が上だけど、年齢的には80期の方が1歳年上であり、学年もメグミ達78期と同じなので……
80期魔王が79期に抱く「目の上のタンコブ感」は、重要ポストに居座り続ける邪魔な上司へ向けられる、部下達の冷ややかな視線より重い。
「年下の79期を先輩扱いするなんて絶対嫌だし、マウントを取りながら蹂躙されて命を握られるなんて論外!」
と奮起した80期の面々は、そこから救い出そうとしてくれるロルカナを神と重ねて盲信し、次々と彼女の傘下におさまった。
そして実際は、<神>というより<鬼>的性格であるロルカナも……ある程度成長してもらわなきゃ、「メグミ達の足を引っ張る駒」として使えないので……
本来の鬼畜っぷりを分厚い猫被りで隠して、「優しいお姉さん」を演じ、真面目にコンサルして彼等を育てている。
魔王界でも上位に君臨するベテラン魔王が、自分達で調達した資金を注いで育成するのだから、80期の成長速度は非常に早く……
すでに50階層以上のダンジョンを創りあげた猛者もおり、見習い期間を終えて79期を狩れる日を、今か今かと心待ちにしている。
また彼等は、同い年でありながら2期先輩のメグミ達にも、憎悪に近いライバル心を向けており……
「メグミ達が元勇者<マサル>と和解して、教会をコケにした」とロルカナから(憎しみを煽るような言い回しで)聞かされ、ブチ切れ。
「そんな反逆者、必ず自分たちが始末します!」と鼻息荒く宣言し、ロルカナ傘下の80期同士でコミュニケーションを取り合い……
打倒78期に向けて、着々と準備を進めていた。
逆に、誰の助けも得られないなか"80期育成の餌"として狩られ、毎日のように「この世から実質リタイア」させられている、79期魔王は……
魔王掲示板で先輩魔王に向けて、必死で「傘下に入るから助けてくれ!」とアピールするものの、それに応じてくれる心優しい先輩などいない。
彼等の同期には、特殊なギフトと計算高さで先輩魔王を出し抜いた魔王<ユアン>がおり、彼の印象があまりに鮮烈過ぎたため……
"ユアンと一切無関係の生き残り"含めて、全体的にハブられ気味なのだ。
また襲撃される前に傘下入りするならともかく、死にかけてから助けを求めても、助ける側には何のメリットもないため……
奴隷同然の待遇で傘下入りするか、ダンジョンの支配権等"全て"を差し出さない限り、護ってもらえる可能性は低いだろう。
とはいえ……自力で防衛したところで助かる見込みはゼロであり、支援がなければ確実に潰されてしまう、絶望的な状況に立たされた79期の面々は……
良識ある魔王のコメントに、リプを付けて名指しで助けを求めるなど、現在もなりふり構わず足掻いている。
そして遂に79期の魔王<スティーブ>が、ユアンの尊厳を破壊し尽くして殺したことで恐れられていた、メグミに助けを求めた。
彼のダンジョンはまだ落とされていないものの……近所にある同期のダンジョンがランキング最下位になった事で、強い危機感をおぼえ……
合流直後から何度もメグミにアドバイスを乞い、薄いながらも縁があったため、それに縋って自分と配下の命を守ろうとしたのだ。
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368 名前:スティーブ(79期)
メグミ先輩、お忙しいところスミマセン。
図々しいお願いなのは僕自身もよく理解しているのですが、しばらく御力をお借りできないでしょうか?
僕はまだ死にたくないし、せっかく創りあげたダンジョンと配下の命も絶やしたくないんです。
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ちょうど同じタイミングで、サーシャの元へアスタリアから「79期狩りの黒幕」についてメールが入り、メグミ達はこの件の根深さを知る。
「う〜ん、どうしよう? スティーブ君とは時々話していて、いい子だなぁと思っていたけど……勇者排除派と対決してまで、護る相手かどうか……」
元々メグミは後輩に優しいタイプだったが、ユアンに手酷く裏切られたことで警戒するようになり、アドバイス以上の深入りは避けていた。
「彼はメグミ君を指定しているわけだし、私は何方でもいいけど……コアルームにだけは入れちゃダメだよ! もし裏切られたら詰んじゃうし!」
サーシャも警戒しているのに加えて、「決定的はメグミ君にある」と判断しているので、自ら"支援するよう"勧めることはない。
しかし彼女は、魔王転生後の貧困期にメグミに助けてもらった経験があり、「追い詰められた時ほど縋りたくなる、辛い気持ち」も理解しているため……
自分達の損得勘定だけで考えて、「メリットないじゃん」とスティーブを一刀両断することもなかった。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






