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356話 新人養殖作戦




 メグミとサーシャが、ミッション1位獲得の喜びに浸っている頃……彼等との暗闘に敗れた勇者排除派は、暗い面持ちでチームミーティングを開いていた。


 今回の戦いに配下のモンスターを投入したのは、トキナ・ロルカナ・ガルガロクと、彼等に支配された木端魔王だけだったが……


 陰ながら、資金や拠点提供などの協力をおこなっていた魔王もおり、<農民>同盟が把握していない関係者まで含めると、総勢は10名を越える。



「ハァ〜。結局、勇者とそのお守りには傷一つ付けられずか。モンティート爺が、同盟仲間を引き連れてお守りしているのはズルすぎるだろう!」


「本当にソレよ! <農民>とか名乗って穏健派を気取っているけど、あの順位で穏健派な訳ないじゃない!」


「あぁ。名前詐欺しながら、裏で俺たちみたいな次世代の芽を摘んで、醜く生きながらえてきたに決まっている!」



 一時的に同盟を組み、ガルガロクのダンジョンに集まって話すトキナとロルカナだったが、大切に育てた眷属を殺されて怒りが収まらず……


 <農民>同盟とメグミ達への恨み節が、止まらない。



 ロルカナとガルガロクは、ベテランゆえの自制心でグッと堪えたものの……内心ではトキナ同様、叫んで現実から目を背けたい程辛い心理状態であり……


 足がつかず犯人が自分達だとバレない事前提だが、「いつか必ず報復してやる」と意気込んでいた。






 しかし、そこは長年生き残ってきた上位魔王。


 感情に支配されて短絡的に動くのではなく、保身を第一優先に置いて考え、冷静な判断をくだすだけの胆力はある。



「だけど暫くは、表立って動いちゃダメよ。主力のSSランクとSランクモンスターを狩られて、私達のダンジョン防衛力は大幅に低下したわ」


「あぁ。やるなら、他者の手を借りた嫌がらせだけ。<農民>同盟と正面きって戦うとか、正気の沙汰じゃねぇぜ」



 ロルカナとガルガロクの意見に対して、トキナはミーティングが始まるまでの間に考えた、「メグミ達への嫌がらせ案」を述べた。


「ウチが経営している闇金で、返済が焦げついたキャンブル狂や無能商人を、奴等のダンジョンへ放り込むのはどうスか? 疫病患者よりゴミ度高いっスよ」



 それを聞いた二人も、当然浮かぶ疑問を述べてイメージを具体的にし、トキナの案が実現可能なものか確かめる。


「アリっちゃありだけど、自ら奴等のダンジョンへ行くマゾヒストなんかいないし、連れて行ったら身バレするわよ」


「うむ。そもそも、闇金がお前の傘下だという事はすでに露見しているはず。俺達は支援に徹すれば陰に隠れられるが、お前の存在は確実にバレるぞ」



 彼等3人は、背中をあずけ合える間柄じゃないものの、協力関係にある間は相手の身くらい案じるし、墓穴を掘りそうなら注意もする。


 もちろんそれは相手の為というより、巡り巡って自分の首を絞めない為の自衛なのだが……


 互いを利用する事しか考えない同盟に比べて、「最低限のフォローは当たり前」という、彼等の臨時同盟は強かった。






「俺は掲示板でやらかしたから、すでに目を付けられていると思います。なんで、シラを切れる程度なら身バレしてもいいかと」


「「…………」」



「もちろん、奴等の狙いが俺一人に集中したら終わりなんで、他の嫌がらせも並行しておこなうべきっスが」


「たしかに。匿名性を保ったまま狩れるほど、<農民>同盟もメグミチームも甘くないか」


「そうね。目的を遂げる為なら多少の泥くらい被るべきだし、私も一つプロジェクトを主導するわ。そしたら、トキナへ向くヘイトも薄まるでしょう」



 覚悟を決めたトキナの様子を見て、ロルカナも協力の意を示し、やるかどうか迷っていた作戦を「おこなう」と宣言。


 それをやる事によるメリットを提示し、ガルガロクに協力を求めた。



「私が考えているのは、80期のヘイトをメグミ達へ向ける作戦。もしコレが上手くいけば、アイツ等は後輩からの支持を失い足を引っ張られるわ」


「なるほど」



「ガルガロク先輩には資金調達を頼みたいの。私はそのお金を使って、放っておけば自滅するであろう80期を上手いこと操り、ヘイトをメグミ達へ向ける」


「分かった。そういう裏方仕事はお前が一番得意だから、全部お前に任せて、俺は資金調達に専念するぜ。80期は洗脳しやすそうだし、いいかもしれないな」






 ロルカナは、宗教関係者の坊ちゃん・嬢ちゃんが多いと目される80期魔王を、「思い込みが強く洗脳しやすい」と評価しており……


 養殖に必要な資金面さえ何とかできれば、「メグミ達に強い敵対心をもつ、手頃な駒」をたくさん生み出せると、判断したのだ。



 そしてガルガロクもこの案に乗り、トキナも(自分にはメリットしかない話ゆえ)賛同したため、勇者排除派の今後の方針はおおよそ決まり……


 ピリついた空気で始まったチームミーティングは、余裕ある雰囲気で終わりを迎えた。



 彼等に使い捨てられた木端魔王が、足元でグルグル巻きにされ泣いているのは、最初から最後まで変わらずだが、ソレについて触れる者は誰もいない。


 魔王界は弱肉強食ゆえ、(彼等の価値観では、)利用され簀巻きにされる軟弱者の方が悪いのだ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
[一言] 地上部分に、新しいフロアをいれて、新規受入拠点と、メグミのダイションに住んでいる者と、商人の交流拠点にしちゃえばいいのではないかな? 新規受入拠点では、5〜10世帯くらいの区切られた牢屋集…
[良い点] ハイドン達とは違った意味で厄介かもしれないなぁ、トキナ達。 少なくとも危機感0の教会幹部共よりは知恵が回るわ。 [一言] 改めてダンジョン住人の自治権で問題になりそうだなぁ。あまりに酷い…
[一言] ダイションと運命共にするんだし、限られたメンバー以外接触不可の状態にして、 自販機で消費する偽金作り工場や、金銀の鉱山も作って働かせておけば、ダイション内において、金銭が途切れる事はなくなる…
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