355話 命の残機
後々起こるであろう報復は気がかりだが、今悩んでも仕方がないので、とりあえず配られた報酬をサーシャと二人で眺める。
マッサージスライム達の活躍により、全身筋肉痛で使い物にならなくなっていた僕の肉体も、イスに座れる程度には回復したので……
サーシャと仲良く「特級カタログギフト&ダンジョンコアの予備」を並べてツマミにし、自販機で買ったソーダで乾杯だ!
「ではでは、不定期ミッション1位フィニッシュに乾杯〜!!」
「乾杯〜! サーシャも、お手伝いありがとね」
特級カタログギフトは、滅茶苦茶レアな設備や渦を好きに選べる優れものだから、成長期の僕等にとっては喉から手が出るほど欲しかった報酬。
今回は、砂龍の肉体的成長を促すためにもオリハルコン鉱山を買い、ゴーレムに採掘→精製まで任せて、「砂龍のご飯」を自家製産できるようにするつもりだ。
「サーシャは、特級カタログギフトで何を選ぶの?」
「んふふっ。時間経過を調整できる、巨大な保管庫をもらおうと思っているところ。私達ってなんやかんや戦闘民族だから、戦利品の保管に困っているじゃん」
「あぁ〜、なるほどデス。(戦う気なんてないのに、ケンカ売られまくりで日々是戦闘だもんね)」
貴金属や使わない武器等"腐らない物"は、そのまま置いておいても平気だけど……
今回みたいに高ランクモンスターを狩った場合、その素材の保管には苦労する。
臓物はその日のうちに傷み始めるし、時間経過のないマジックバッグで保管しようにも、モンスターの図体がデカすぎて入りきらないもの。
そういう時のために、上位魔王は自前の保管庫を持っていたりするのだが……
僕等はダンジョンの防衛力向上に重きを置いていたため、命に関わらない保管庫の設置は二の次だった。
「<恵のダンジョン>から転移する部屋の近くに設置するから、これからはウチの保管庫を使ってね♪」
「ありがとうございます。サーシャ様! 改めて、乾杯〜!」
「ふふふふふっ♪ 乾杯〜!」
シュワシュワと喉を刺激するソーダを一気飲みして、軽く腕を伸ばし筋肉痛対策を入れたら、いよいよ本命の「ダンジョンコアの予備」について。
コイツがあれば、もしコアルームのダンジョンコアを破壊されても<恵のダンジョン>は滅びず、そのコアが新たなメインコアになって生き延びられる。
コアを破壊されるような状況に陥る時点で、半分詰みだし、残機が残っていたってどうにもならない場合もあるけど……
何かの拍子に味方が操られてコアを壊しちゃった場合等、予備があれば助かるパターンだってあるので、"命の残機"は大切だ。
「これの置き場所は、お互い秘密にしようか」
「そうだね。モンスターにも秘密にして、自分だけが知っている状態で隠しておこう」
ゆえに全幅の信頼を置いているサーシャにも、コアの場所は伝えず、設置から管理まで全て僕一人で担う。
サーシャが裏切るとは思っていないけど……敵がサーシャを操ったり、彼女の視界を通してコチラを覗き見る可能性がある以上……
どうしたって情報漏洩リスクは消せないし、「自分だけが知っている状態」より安全なものはないのだ。
ちなみに僕は、予備のコアを「汚物フロアの一角」に隠すつもり。
汚物フロアは、発酵した汚物と虫が侵入者の精神を蝕むフロアなので、自らあそこを調査する物好きなどいないし、プールの奥底に沈めておけば安全だもの。
もちろん剥き出しで置いておくと、何かの拍子に壊されたり微生物に侵食される可能性があるので、その辺りは上手く調整するけど……
余程の巻き込み事故がない限り、このコアは見つからない筈だし、ウチのダンジョンも安泰だろう。
というか……一度沈めた後は、ダンジョンマスターである僕も正直取り出したくないから、それ以外の人がどう思うかは推して知るべしだ。
「モグモグモグ……。メグミ君、アスタリア先輩からメールが来たよ。敵が完全に撤退したから、コチラもマサル君の護衛に専念します……って」
「了解! 不意打ちで狙ってくる可能性が残っているから、マサルにはその辺よ〜く注意しておくよ」
「ふふっ、そうだね。呪いとか設置型のトラップとか……遠隔でも人を害せる手段って、案外あるもんね」
「うん」
とはいえ直接のドンパチが終わったため、サーシャがモニターを凝視して指揮をとる必要もなくなり、僕等はリラックスモードに入れた。
餌全喰いは無理だったものの、砂龍・風龍共に「SSランクモンスターを喰って、飛躍的に成長した」と報告メールに書かれていたし……
マサルだって、手取り足取り護られなきゃ殺られるようなザコじゃないから、彼等が固まって動けば大丈夫だ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






