350話 偽りの刺客
マッサージスライムに全身を揉まれながら、目的を遂げ都市<ガロパ>を脱出しようとしているマサルを、モニター越しに見つめる。
ゴーレム君の手足が凹んだり……この世の地獄みたいな人間の汚さに触れて、精神的に消耗したりはあったけど……
偵察用のモスキートやマイクロアント以外、殉職者が出ることもなく、今回の報復作戦はほぼ成功した。
中心人物の一人である僕が筋肉痛で途中離脱して、「細かな指示出しは全てサーシャに任せっきり」という状況ゆえ、男として大変情けないが……
サーシャ的には「弱っているメグミ君も可愛いからOK! 萌える♪」と、なぜか好評なので、プライドさえ捨てられれば悪くないのかもしれない。
「だけど、五体満足で帰るまでが勝負! ここからは、疲弊した元勇者を襲い殺してしまおうって勢力も来るから、ちゃんとマサルを守らないと」
不定期ミッションの内容がドンピシャだった事から見ても、「マサルが教会本部にカチコミに行く件」は、邪神の望む行為であり……
それを途中で妨害して邪神の不興を買ったら、何をされるか分かったもんじゃないので、マサルを殺したいと思っている上位勢も手を出せなかった。
しかしマサルがケジメをつけ終え、これ以上"彼の直接的報復"による教会への被害が増えない状況になったため、マサル排除派が動かない理由はない。
よって彼等は、マサルが戦っている間に自分達の眷属を都市<ガロパ>周辺に配置して、彼が疲れた状態でガロパを出たところを狙い撃つ。
彼等の動きに関しては、事前にモンティート先輩から教えられており、「撃破ついでに、砂龍と風龍のレベリングしない?」と誘われていたので……
二つ返事で了承して、<農民>同盟の「マサル護衛プロジェクト」に参加させていただき、タイミングを見て現場へ砂龍と風龍を派遣した。
<農民>同盟からも、眷属のSSランクモンスターが5体派遣されており、それをサポートするSランクも数十体いるので……
仮にこの動きを人間側が察知したら、「国が滅びる」と大騒ぎになり、街中の冒険者達が決死の覚悟で討伐しにくる規模だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
731 名前:トキナ(36期)
なんか最近、教会本部周りの雰囲気がきな臭くないか?
近くの街に潜り込ませていたスパイが、報告を送ってきたんだけど。
732 名前:ロルカナ(25期)
メグミ君と和解した勇者が、プロパガンダの報復で教会本部にカチコミをかけたっぽいよ。
私も偵察用のスパイだけ置いているんだけど、報告がうるさくて起きちゃった!
733 名前:ガルガロク(17期)
マジか!
じゃあ暫くは、都市<ガロパ>を避けねぇと危ないな。
報復の報復で、教会の連中に魔王狩りされちゃ困るし。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふふふっ、よく言うわ〜。メグミ君、連中が魔王掲示板でしらばっくれているよ〜。はいコレ、コメントの写しね♪」
「サーシャ、ありがとぅ〜」
今回マサルを狩ろうとしている主犯格は、ユアンの件にも絡んでいた、それなりに上位の魔王3名だ。
僕も彼等と取引したことがあるため、ダンジョンの所在地や資産状況等は、(見えている部分だけだが)把握している。
だがコイツ等の狡いところは、「自分達の勢力がやった」事実を隠すために、色々と小細工をろうしている点。
まず、現場へ派遣されマサルを狩ろうと狙っている、奴等の眷属連中だが……所属が「木っ端魔王のダンジョン」になっている。
このカラクリは単純で……半殺しにして暴力で支配した、木っ端魔王の名義を使って、信頼のおける眷属を一定期間"派遣契約"で貸し出し……
木っ端魔王の配下として活動させることで、裏で糸を引いている自分達の存在を隠し、好き放題やっているだけ。
もし木っ端魔王が奴等の支配から抜け出せたら、大事に育てた眷属も取られてしまう、リスキーな方法だが……
所属を明示したままウチと戦うリスクと比べれば安全、と判断したのだろう。
もっとも……表面的に所属を変えたところで<農民>同盟にはバレており、モンティート先輩から連絡を受けた僕等も知っているため……
魔王掲示板で追及されたとき、「証拠でもあるのか!?」とシラを切れる点くらいしか、利点はなくなってしまったが。
「あはははっ! 先輩から、"所属ダンジョンをボカした以上、いくら眷属を殺されても、表立って文句は言えないはず。狩り放題万歳!"ってメールが来た!」
「たしかに。成長期で少しでもレベリングしたい、砂龍と風龍には格好のご馳走かもね」
残念なのは、2体の活躍を"ベッドで横になりながら"しか観られない事くらいか。
本格的に壊れていて、回復魔法をかけても全然怠さが引かないし……この肉体の貧弱さ、どうにかならないもんかなぁ〜。
読んでくださり、ありがとうございます!
10月8日に、『クラス全員で魔王転生!』のコミック2巻が発売されます!
興味がある方はぜひ読んでくださいm(_ _)m
詳細ページへは、下の表紙イラストから飛べます↓↓↓






