347話 態度クルーリ
〜マサルside〜
「縛る」宣言を聞いた元彼女……いや、もう「彼女」なんて単語は使いたくない……アバズレトリオは、"ホラ吹き"扱いで俺をバカにし始めた。
元々賢いタイプじゃなかったけど、不衛生な独房に閉じ込められたせいで寝るに眠れず、不眠によってさらに思考力が落ちたようだ。
「アンタみたいな出来損ない勇者が、そんな神様みたいなこと出来るわけないでしょ!? 冗談は顔だけにしなさいよ!」
「ホント、粗チン男の僻みって醜い。勇者をクビになったアンタに価値なんてないんだから、大人しく金だけ置いて引っこみなさい!」
「金もだけど食料もよ! アンタのせいで私はこんなに惨めな目に遭い、ツヤツヤだったお肌も傷ついてしまったんだから! というか、ここから出せ!!」
病的な肌にゲッソリした頬、ギラギラと卑しく輝く6つの瞳は、改めて俺に「女を見る目のなさ」を痛感させてくれる。
この罵倒もメグミ殿にガッツリ見られていると思うと、恥ずかしさを通り越して、惨めに思えてくるが……
俺が"こんなの"と付き合い、ナメられるような男だった事が全ての原因なので、甘んじて現状を受け入れるしかない。
まぁ、それはそれとして……いくら叫んでも壊れない謎声帯をもつ、目の前のキチガイ3人は、公衆衛生に寄与するためにもキッチリ殺す。
「「「えっ? 嘘でしょ!? イヤアァァァ〜〜〜〜!!!!」」」
<業>ギフトで縛るとき起こる、鎖が体に巻きつき胸に吸い込まれる、「生命・魂関連の儀式」特有の発動モーションを見て……
ようやくさっきの発言がマジだと気付いた3人は、いつもバカにしていたヒステリー婆聖女より、強烈な金切り声をあげ大泣き。
そして「なぜこんな能力を隠していたのか」と、ひとしきり俺を怒鳴った後、さすがにマズイ事に気付いて、猫撫で声で媚びるような態度をとり始めた。
「ねっ、ねぇ……お願い、許してよぉ〜。さっきまでの発言は、全部教会の偉い人に脅されて仕方なく言ったの。本心なわけないじゃん!」
「スキャンダルのインタビューも捏造だよ! もし見て怒っているなら謝るけど、私達あんなこと一言も話してないし」
「いつも守ってくれた貴方がいなくなっちゃって、寂しさに耐えられなかったの! 私達も傷付いていたんだよ!」
「(コイツ等、今の自分の容姿を忘れているのか? 幽霊って言われても違和感がないほど死人チックなのに、その色仕掛けが通じるわけねぇだろう)」
というか……あれだけ心のこもった罵倒を披露しておいて、今さら「脅されていました。私達は被害者なんです!」って……
どれだけ脳ミソ下半身なアホ男でも、嘘だと気付くわ!
だが俺がいくら反論したところで、コイツ等は「自分にとって都合の悪い事実」なんて決して受け入れないし、喋るだけ時間のムダ。
俺の人生の時間をこんな奴等との会話に費やすなんて、罰ゲームもいいところだ。
ゆえに俺は、キチガイトリオの猫撫で声を無視して新たな<能力玉>を食べ、コイツ等に相応しい最期を用意するべく動いた。
「このギフトは、人を壊すことしかできない代物だが……悪人にはお似合いだろう」
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〜地獄耳〜
この能力で呪われたターゲットは、呪いを解かれるまでずっと、「自分の悪口を言う世界中の人々の声」を全て拾えるようになってしまう。
耳を塞いでも声は聞こえ続けるし、心の内で悪く思われた場合も、同時に舌打ち等されただけで全て伝わるため、皆に忘れ去られる以外に逃れる術はない。
ただし発動者も呪いを解くまでの間、同じように「自分を悪く言う人々の声」が聞こえる状態になるため、自爆リスクも高い諸刃の剣である。
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自らを贄として差し出す宣言代わりの印を切り、3人の耳を道連れで"地獄耳化"すると、自分が悪く言われることに耐えられなかった奴等は発狂。
皮膚が破けるまで頭を掻きむしり、血の涙を流して言葉にならない声を発した後、十数分で狂い死んだ。
「ターゲット全員死亡により、俺の地獄耳も自動解除……か。今は襲撃騒動中で、それに気付いた人は皆スケープゴートを探していたから、キツめだったのかも」
俺自身は、<恵のダンジョン>でストレス耐性を鍛えられたうえ、教会のプロパガンダで"悪人扱い"され慣れていたため、正直なんとも思わなかった。
だけど俺を悪く言う人々も相当数いたし、コイツ等の最期の反応を見るに、散々"真実の刃"を突きつけられたのだろう。
さてと……討伐した証(首)だけ切り取って、とっとと帰るか。
いつまでもココにいたら、オバケより怖い形相で死んだコイツ等に、悪霊として取り憑かれそうだ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






