344話 メグミは全てを見ていた
〜メグミside〜
「っておぃ、そこで"カップうどん"を食べるんか〜い!!」
魔道具を使って「命懸けのかくれんぼ」に興じた幹部共を、悍ましい条件で<業>縛りした後、<裁きの聖剣>でバッサバッサと殺しまくったマサルは……
名簿に載っている幹部全員を「地獄の来世」へ送り届け、もう一巡「幹部専用エリア」の見回りをしてから、殺人現場で熱々のカップうどんを食べ始めた。
たしかに"その机"の周りは無事かもしれないけど、5m離れた場所には「ダルマになった死体」と血溜まりがあり、気味悪いしニオイも届くだろうに。
別にマサルは、快楽殺人者とかサイコパス系の狂人ではないのだが……やはり勇者として、修羅場を潜っているうちに感覚がマヒしたのだろう。
僕なら「最低でも1kmは距離をとって、風呂で返り血を洗い流したうえで、胃もたれしないサッパリ系の食事を少量食べるのが、限界」ってところだが……
彼はモロ殺人現場で熱々の肉うどんを食い、「甘く煮た肉最高♪」と笑顔で肉を頬張っている。
「まぁ結果論とはいえ、洒落にならない"幹部共の計画"を阻止できた訳だし、マサルも色々と現実逃避したいんだろうけど」
ちなみに……この計画に関しては、襲撃前から報告が上がっており、一応僕も知っていた。
ただ、あまりに現実離れしているうえ、今日・明日困る類の問題じゃないので、「奴らの策が成立する前に、マサルが全員殺すからいいや」とスルーしたのだ。
この状況で正直に伝えると、マサルの逆鱗に触れそうだから黙っておくけど、他にも奴等が考えた「(無謀な)キチガイ計画」は幾つもあったんだよ。
「それにしても……粗チンになる縛りを加えたうえ、四肢と一緒に全員のアソコまで聖剣で叩き潰すとは……。<粗>の恨み、恐ろしすぎるだろう!」
マサルが大暴れした幹部専用エリアは、僕が監視カメラを重点的に仕掛けさせた場所でもあるため、彼の活躍は全てカメラ越しに確認できた。
「僕なら聖剣が穢れちゃうから、大人しく手足と首だけチョンパすると思うけど、やっぱり"<粗>をバラされた恨み"は大きいのかねぇ〜?」
たぶん無意識下で「俺より短小になってから死ね」と願い、それが行動に現れたんだろうけど、僕も幹部共の二の舞にならぬよう口には気をつけなきゃ。
首をかき切る前に「男としての命」を絶たれ、泡を吹いてショック死した幹部も数名いたから……
僕がやられたわけでもないのに、毎度"大事なところが"ヒュンと縮こまっちゃったし、マサルの瞳が"狂喜の色"に染まっている気がして怖かったんだよ!
「マスター、現場から盗品回収の要請が来ていますよ。あと一息ですから頑張ってください」
「は〜い。頑張ります!」
マサルの修羅っぷりを眺めながらも、僕は現場の子達が送ってくる「盗品入りの箱」を、<遠隔商談>ギフトで次々と取り出し……
側で列をなして待機しているゴーレム君達に、ポイポイと渡す肉体労働に勤しんでいるため、全身の筋肉が張って腰が痛い!
もちろん、見つかれば殺される可能性だってある現場班に比べれば、「筋肉痛で済む楽な仕事」なのは理解しているけど……
マサルと違ってインドア派かつ貧弱な僕には、「50kg以上ある大箱を取り出して、僕より背が高いゴーレム君に渡す」という作業だけで、手一杯なのだ!
隣で、<恵のダンジョン>の運営を手伝ってくれているサーシャに、情けない姿を見せぬよう、表情筋だけは必死に取り繕っているが……
すでに腕と足がプルプル震えていて、気を抜いたら箱を落としてしまいそうなくらいには、ガタがきている。
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〜マサルside〜
「おぉ、メグミ殿から返信がきた! あれ? 今回はやけに誤字脱字が多いな。他に急ぎの仕事があって、片手間で打ったのかな?」
若手筆頭ダンジョンの魔王だけあって、メグミ殿は忙しい方だし……もし仕事中にメールチェックさせてしまったのなら、申し訳ない。
多少読みづらいとはいえ内容は分かるし、緊急性のある情報も含まれていないので、既読がわりの顔文字だけ送って、時間を取らせないようにしよう。
<−−− ズルズルズルッ! ゴクゴク…… −−−>
「ふぅ〜、ご馳走様でした! 一味唐辛子を多めに振りかけた、ピリ辛うどんだったから、胃がカッカしていて燃えてくるぜ!」
まだ幹部共の悍ましさを目の当たりにしたショックは、完全には癒えていないけど、動けるくらいには回復したし牢獄へ行く。
「メグミ殿が言うには、"気を強くもたないとその場で吐いてしまうほど、醜い姿"に堕ちたらしいけど……どんな感じなんだろう?」
まぁ一つ言えるのは、探知にかかっている気配すらすでに醜いので、いくら3人が元彼女とはいえ、「再会して俺が情に絆される」展開はまずないという事だ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






