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339話 ジンとマサル


〜マサルside〜




 ジンは思うところがあるのか、俺が脅しても口を開かず、かと言って攻めかかってきたり逃げることもなく、その場にジッと立ってコチラを見据えていた。


 これが何処ぞの三下なら、手刀で首を打ち気絶させるか手足を1本斬り飛ばして、その場を離れるが……


 親しくなかったとはいえ、コイツは一応元パーティーメンバー。



 魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>みたいに、手のひら返しでゴシップ・インタビュー記事の表紙をかざり、俺を貶めた訳でもないから……


 多少時間を取るくらいなら、多めにみるよ。



「だけど俺だって暇じゃないんだ。言いたい事があるなら早く言え。時間がたち正義感にあふれた勘違い兵士が捕らえにきたら、またケガ人が増えちまう」


「いや。改めてお前を見て、言うべき事じゃないと思った。お前が単独行動に走り、勇者パーティーが実質解散状態になったときは、正直恨んだがな」



「ん、その件はスマン。お前の出世にも響いたのか?」


「それなりに。だが、そもそもの話……異世界から喚び出されたお前に、勇者という役割を強いて、無理やり結成されたパーティーだ。責める筋合いはない」






 ジンは修道士の中ではピカイチの武力を持っており、<聖者の祈り>の使い手の中でも珍しい男性だったため……


 「俺が遠征中に手を出して純潔を穢し、ギフトが発動できなくなってしまう展開」を避けるために、教会幹部がお目付役も兼ねて抜擢した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜聖者の祈り〜

純潔を守りとおし、"長い間"修行を積んだ聖職者だけが得られるギフト。

ダンジョンの改造阻害や、ダンジョン攻略時のステータスアップなど、熟練度によって叶う範囲が広がる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 表面上は名誉だけど、俺やパーティーメンバーの若い娘達から煙たがられるのは、最初から分かりきっており……


 決して楽しい役回りじゃないため、それなりの報酬と栄達を教会側から約束されていたはずだ。



 だが勇者パーティーが解散となり、俺のネガティブスキャンダル作りにも貢献しなかったとなると、現在コイツの立場はあまり良くないだろう。


 良くて、パーティー加盟前のポジションに出戻り……酷い場合、左遷やクビを宣告されたかもしれない。



「マサルが気にする必要はない。俺は勇者パーティーの話を持ちかけられ、自分の利益になりそうだから受けた。そのアテが外れただけの話だ」


 基本的にコイツは理性的で、思い通りにいかなくても激昂するタイプじゃないので、この言葉にも感情がこもっているようには見えない。


 だけど"見えない"だけで……コイツなりに色々考えて、己の出した結論を受け入れるためにも、一度俺と会いたかったのかもしれないな。






「お前、この後どうするんだ? 一応元パーティーメンバーだし、生き残ったら、"捕らえられない俺"の代わりに責任を押し付けられるかもしれねぇぞ」


「そうだな。そもそも、五体満足でお前が逃がしてくれるかにもよるが……この街は出るつもりだ。残ったところで、ロクな事にならないだろう」



「そうか。お前とは仲が良かった訳じゃねぇけど、迷惑をかけたのは事実だ。逃亡資金くらいは、俺のポケットマネーから出してやるよ。もちろん斬りゃしねぇ」


「ふむ。それなりに蓄えはあるから、一生逃亡生活になっても金に困ることはないと思うが、貰える物は貰っておこう。俺は、タダという言葉が大好きだ」



「くくくっ、そうかよ……。お前、案外おもしろい奴なんだな!」


「ん? そう言われたのは初めてだが、褒め言葉として受け取っておく」



 今さら後悔しても遅いが……どうせ仲良くするなら、旗色が悪くなった途端に手のひらを返して、俺の冤罪を声高らかに主張する彼女モドキよりも……


 教会の手先だったとはいえ、「噛めば噛むほど味が出るスルメ」みたいな良さのある、コイツと男友達になった方が楽しかったかな?






 俺から逃亡資金を渡されたジンは、軽く「<恵のダンジョン>での暮らし」について尋ねた後、「それじゃ」と会釈をして教会を出て行った。


 きっと明日からは、街の彼方此方で封鎖が起こり、徹底した共犯者探しが始まるので、ゴタついていて逃げやすい現在のうちに、街も抜け出すつもりだろう。



「ふぅ〜。緊張したぜ!」


 さすがに恨みのない元パーティーメンバーと戦闘になり、殺したり後遺症を負わせちまったら、寝覚めが悪いからな。


 アイツが、パーティー解散による不利益のせいで俺を恨まず、冷静に立ち回ってくれて良かったよ。



「それでコレが、逃亡資金の代わりにアイツがくれた教会の"本当の図面"な訳だけど……隠し扉やら抜け穴やら拷問室やら、色々と極まっているな」


 一応<教会>って、日本で暮らしていた頃は「清く・正しく」のイメージがあったんだけど、施設の造りから真っ黒じゃ"清さ"が1ミリもないじゃねぇか!


 こんな組織を信じて、少ない給料の中から節約を重ねてお布施する、信者の身になってみろってんだ!!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
多分勇者が無差別に攻撃していたのであればジンは勝敗に関わらず、命を賭して立ち塞がったんだろうなって思う。恵みのダンジョンに来るのなら、勇者と共に門番になるのか、はたまたメグミを崇める教会でも作るのか…
[一言] 良くも悪くも組織人として真っ当だったんだなジン でも割かし話も判る男だし嫌いじゃないw そして逃亡生活送るくらいならそこそこ普通に暮らせそうな恵のダンジョンへと考えるのも普通といえば普通か?…
[一言] これ、ジンも恵のダンジョンに来そうですね。 金はあるし、家賃”タダ”だし。
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