333話 雨乞いの儀式
〜メグミside〜
さすがに富裕層皆が、教会本部で闘牛のように激昂している幹部共みたく、「視野が狭くて冷静に状況を判断できないバカ」という訳ではない。
ゆえにスキャンダル連撃の真意に気付いた人々は、早々に家財をまとめて都市<ガロパ>を発ち、近隣の街へと避難していった。
傾向として、教会と距離を置き権力の中枢にはいない学者達と、隠居してポジションを守る必要がなくなった老人ほど、コチラの真意に気づく者が多く……
家族共々、慌てた様子で馬車を出して避難していくから、たぶん「襲撃日時が近い」ことも予測しているんじゃないかな?
『失礼致します! 先ほど準富裕層エリアに住む、引退した気象学の権威が、"雲の様子がおかしいゆえ警戒するべき"と仰られたと……』
『うるさい! 今は我等の進退がかかった一大事。そのような耄碌ジジイの戯言に、付き合っている暇などないわ!!』
『しっ、失礼いたしました!』
もちろん、中には逃げる前に報告を上げてあげる優しい賢者もいるんだけど、報告を受け取って皆を導かなければならない立場の幹部連中がクソすぎて……
せっかくの忠言が、ウ○コのようにジャバジャバ流されていく。
これだけの人数から報告が上がっていたら、普通「おかしい。何かある」と気付きそうなものだが……追い詰められると人間の知能って下がるもんね。
視野が狭まり判断力も落ちている状況じゃ、バカは「差し迫った自分の危機」に関する情報以外、受け付けなくなってしまうものなのだ。
「念のため、マサルにはメールで"この事実"を伝えておくか。学者さんが諦めて逃亡した以上、襲撃までに"雨乞い"がバレることはないだろうけど……」
マサルは現在"下見ができない状況"ゆえ、不安に思う部分もあるだろうし、信頼関係を築くうえでも報・連・相は大事だから。
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〜マサルside〜
「うわっ。慎重にやったのにバレるとか、専門家の爺さんってやっぱり賢いんだなぁ。公の対策を取られなかったからセーフだけど、ツメの甘さは反省しよう」
もし幹部の中に一人でも冷静な奴がいて、「念のため雨除けの結界を……」とか言い出し、準備されていたら……
決行時間に豪雨を降らせることはできず、襲撃に慌てた市民が火の不始末を起こして燃え広がり、それが原因で民間にも多くの被害が出た可能性が高い。
「それはそれとして、そろそろ最後の"雨乞いの儀式"の時間だな。僅かとはいえ"バレた"と思うと不安は残るが、ここまできた以上やるしかねぇ!」
この程度の失敗確率で後戻りするような性格なら、今頃どこぞのダンジョンで迷い死んでいるし、男は気合いと根性なんだ!!!!
そう思って頬を叩き気合いを入れ直した俺は、"女モノ"の儀式装束に着替えて、雨乞いの態勢に入る。
この儀式は一回3時間の長丁場になるので、途中で邪魔が入らぬよう、<能力玉>は全て食い直しているし携帯の電源もオフ。
今のところ、この"珍妙な格好"についてはバレていないっぽいだから……その救いを燃料にポジティブブーストして、恥じらいなどかなぐり捨てていく!
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〜雨の巫女〜
3日連続で<雨乞いの儀式>を行うことで、近場にある雨雲を成長した状態で呼び寄せ、目的地に雨を降らせる事ができる。
降雨量はある程度調節できるが、呼び寄せられる範囲に雨雲がないと儀式失敗となり何も起きないうえ、儀式で捧げた生贄も失うことになる。
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とまぁ、いくら現実から目を背けたところで、「ゴツい男が巫女装束を着て、剛毛がチラ見えしている恥ずかしさ」からは逃れられなかったが……
なんとか最後の儀式もやり切り、俺は<雨の巫女>発動の条件を満たした。
そして3日間かけて成長させた雨雲は、グングンと都市<ガロパ>へ向い、日が暮れる頃には雷をともなう豪雨を降らせ始める。
「OK。ここまで激しい雨なら目隠しにもなるし、もう近付いても平気だろう。レッサードラゴン、俺を都市<ガロパ>近くの森まで運んでくれ」
「リョウカイ」
いくらレッサードラゴンが、(ドラゴンにしては)小柄な種族とはいえ……数キロ圏内までコイツに乗っていくと、見張りの兵士に見つかってしまう。
ゆえに都市<ガロパ>近くにある森の窪地で降りて、あとは<隠密>を張りながら走って近付くつもりだ。
「メグミ殿からのメールを読んだ感じ、彼の報復作戦は大成功で、悪さをした連中は酷い目にあっているようだな」
繰り返し「お前の元彼女は変わり果てた姿になっている。もう恋愛感情はないだろうけど、覚悟なく見ると衝撃が強いだろうから」云々書いてあったので……
その点だけが少し怖いが、報復時に口をハサミで切り開かれて<口裂け女>みたいになったとか、ソッチ系?
正直イメージがつかないけど、再会したとき色仕掛けで惑わされるリスクも無くなったと見ていいし、覚悟さえしておけばポジティブニュースだと思う。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






