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330話 スキャンダルを吟じます




 その日、教会本部がある大都市<ガロパ>に激震が走った。


 いつものように、朝日が昇ると同時に起きて外へ出た人々が、いたる所に貼られている"有名人"のスキャンダルポスターを、目の当たりにしたのだ。



「おぃ、こりゃあマジか!? ラッター大司教が、目をつけた若い娘を誘拐して屋敷に軟禁しているってよ!」


「コッチには、メチャクチャ沢山の数字がかかれた紙が貼ってあるぞ! 汚職で財を貯めこんだ証拠、って書かれている!」


「ブブゥッ! コレ見ろよ。大司教が<ピー>している姿って書かれているけど、全体的に絵面が汚ねぇ! 粗チン確定の元勇者より、キツイんじゃないか?」



 近所で騒ぎ出した人々の声を聞いて、驚いた住民達も家から顔を出し……彼方此方に貼られたポスターを見て絶句。


 そこには文字オンリーの証拠だけでなく、若手教会スタッフが幹部相手に枕営業している場面や、パワハラ現場の証拠写真がデカデカと掲載されていた。



 もちろん中には、学がなく文字が読めない者もいるので、「何かヤバイ事になっているけど、詳細が分からない」とリアクションに困る住民もいたが……


 彼等に対しては、霊に身体を乗っ取られた中堅聖職者が、讃美歌斉唱で鍛えあげた声で、楽器を鳴らしながらスキャンダルを吟じて伝える。



<−−− ジャカジャカジャカジャカジャ〜〜〜〜〜ン♪ −−−>


『助祭への昇格テストで点が足りず、出世レースに敗れた修道女<カリン>は〜、ラッター大司教への枕一発で裏点30点獲得〜♪』


『見事、同期のライバルを出し抜いて助祭へ昇格し〜、優秀な同期も枕三発で左遷させたそうな〜♪』



 教会幹部だけでなく、巻き込まれた中堅聖職者や枕経験者も社会的死をくらったが、全て事実だし証拠もあるので仕方ない。


 吟じているのが、"余所者"ではなく"修道服を着た聖職者"なので、市民達も信じたし、今後は各自"己に相応しい場所"まで落ちてそこで生きるしかないのだ。






<−−− ジャカジャカジャカジャカジャ〜〜〜〜〜ン♪ −−−>


『枕営業のスペシャリストである、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>は、励みすぎた結果"性病10種コンボ"を達成し〜♪』


『3人仲良くスポンサーに見限られて、金銭苦に陥った〜♪』



『全ては、身の丈に合わない高級品の買いすぎと豪邸生活のせい〜♪ 勇者<マサル>を切り捨てたはずが、自分達が落ちぶれてオワコンオワコン〜♪』


『ハリのあった肌はシコリだらけになり〜♪ <ピー>にはカビが生える始末〜♪ だけど本人達は気付かない〜、目も脳も性病で壊れてしまったから〜♪』



 もちろん教会幹部だけでなく、マサルを裏切った魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>の尊厳も、スキャンダルで地に叩き落としたので……


 彼女達3人は、マサルに殺されるまでヒエラルキー最底辺の扱いを受けて、徹底的に蔑まれるだろう。



 当然、吟遊詩人の歌だけでなく、無加工の<ピー>が写ったポスターや証拠写真の数々も、等身大サイズのポスターで掲示されているので……


 もし彼女達がマトモな感性を持っていたら、たとえ冤罪であっても恥ずかしくて外を出歩けないし、世を儚み自害する可能性すらある案件だ。



 まぁ魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>は、剛毛が生えた鋼の心臓を持つ恥知らずな連中なので、この程度じゃ心折れず……


 3人集まって「私たちセクハラされているよね?」と被害者ぶりながら、心の内では他の二人を軽蔑する、(ある意味)お似合いなムーブをかましそうだが。






 そして市井が騒がしくなってから数十分後……ようやく屋敷で寝ていた教会幹部の元へ知らせが届き、彼等はストレスによる吐き気で朝飯を食べ損ねた。


「クソッ! 騎士団長の奴、"街の警備は万全だ"と豪語していたではないか! コレのどこが万全なのだ!!」


 中には脳の血管がはち切れそうなほど激昂して、目を血走らせながら警備担当者を責める幹部もいたが、いくら文句を言ったところで事態は覆らない。



「如何いたしましょう? すでに各界の有識者からクレームが届いており、教会側も真偽確認を始めたらしく……。不正が明るみに出るのも時間の問題かと」


「えぇい、今すぐ我も教会へ出向く! 念のため、一族の者は<ガロパ>の外へ出しておけ」


「かしこまりました」



 権力者ゆえに起床時間が遅く、後手に回ってしまった教会幹部は、大急ぎで身支度を済ませながらも、家財と一族を守るために動き出す。


 すでに高級住宅街から街門へ続く道には、棍棒を持った住民が多数待ち構えており、家族を逃したところで地獄が待っているのだが……


 そんなこと、エリート育ちで「市民=自分達にかしずく存在」としか認識していない、彼等に理解できるはずがなかった。



 そして最低限の身支度を整え、万一の場合は自分も逃げ出すべく、懐に大金を忍ばせた彼等は……


 悪事の証拠を権力で握り潰して、自らの潔白(偽)を証明するべく、教会本部へ出向く。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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