327話 雨乞いの儀式
〜勇者<マサル>side〜
<−−− ジリリリリリリリリリ〜〜〜〜〜!!!!!! −−−>
「ぅん……うるせぇな…………。あぁ、もう夜か」
結界とギフトを重ねて「安全な状況」をつくり、召喚したモンスターに護衛を任せて眠りについた俺は、陽が沈む頃、目覚まし時計の鳴る音で起こされた。
この目覚まし時計も、メグミ殿に代理購入してもらった日本製の品で、眠りが深い俺でもしっかり起きられる音量となっている。
その代わり、容赦なく起こされて「寝起きのまどろみ」とは無縁になるので、どうしても外せない予定が入っている時だけ使うつもりだ。
「ん〜。メールの返信が来ている? あ〜……そういえば寝る前にハッチャケ過ぎて、長文メール送ったんだわ」
寝起きでまだ頭がボケているが、シャキッとする頃には儀式を始めなきゃならないので、目を擦りつつメールの内容をチェック。
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火魔法の使用禁止、了解した。
ターゲットを燃やしたり、証拠隠滅で否応なしに使う可能性はあるが、攻撃目的で<火>を放ったりせぬよう、現場班に言い聞かせておく。
マサル殿が雨を降らせてくれれば、コチラとしても仕事がしやすくなるので、大助かりだ。
現場班には、「貴殿の侵入ルートの確保」を第一目標に行動させるゆえ、突撃前はこまめにメールを確認してくれ。
もし余裕があれば下見の結果も共有する。
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「よしっ、これで民間への被害を極力出さずに済むぜ」
つい愚痴った性事情に関しては、コメントし辛かったのか華麗にスルーされたが、そもそもメールに"それ"を書いた俺がKY(空気読めない)なので仕方ない。
返信ナシでメアドをブロックされなかっただけ、優しい対応だ。
「さてと……時間的にも良い頃合いだし、そろそろ始めるか」
メグミ殿にも宣言したとおり、今回の奇襲では一般市民を巻き込まぬよう、火の燃え広がりを避けるため、都市<ガロパ>に大雨を降らせる。
これは水属性のモンスターに頼んで、人為的にやるのではなく、<雨乞いの儀式>で雨雲を呼び寄せ、自然に豪雨を発生させる方法だ。
それゆえ雨雲など引っ張ってこれない<恵のダンジョン>では、<スキル図鑑>にギフトの登録がありながら、一切使えなかったし……
ダンジョンの外でも、数百km圏内に雨雲がなかったら発動できない。
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〜スキル図鑑〜
相手の許可を得ることで、スキルおよびギフトが図鑑に登録され、登録された任意の能力を一時的に模倣できる、特殊な<能力玉>を生みだせるようになる。
ただし<能力玉>をつくる際は、己の血とHPを対価として捧げる必要があり、事前準備ナシでは役に立たない。
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〜雨の巫女〜
3日連続で<雨乞いの儀式>を行うことで、近場にある雨雲を成長した状態で呼び寄せ、目的地に雨を降らせる事ができる。
降雨量はある程度調節できるが、呼び寄せられる範囲に雨雲がないと儀式失敗となり何も起きないうえ、儀式で捧げた生贄も失うことになる。
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「だけど今回は、事前に"雨雲の位置"を把握しておいたから大丈夫。季節風で流される速度を踏まえると、もうすでに"儀式成功圏内"に入っているはずだ」
物事に絶対はないので、例えば俺が寝坊して儀式をすっぽかすとか、他のギフト持ちが雨雲を横取りするみたいな例外で、儀式失敗となる可能性だってある。
だが普通にしていればほぼ100%成功する状況だし、生贄の<血藁人形>も事前に作っておいたので、成功を前提に事を進めてもいいだろう。
「一番の問題点は、雨乞いの儀式装束が"女モノ"って事なんだよ。いや、サイズは合っているんだけどさ……」
以前コッソリお針子さんに頼んで、オーダーメイドで作ってもらったのだが、その時は「女装プレイで使う」と勘違いされて絶対零度の視線を向けられた。
今回は人目がないところで行えるからいいが、もしこの様子を敵に見られていたら、セクハラ・パワハラ疑惑なんかより余程エグいニュースが出るので……
それを想像するだけでも吐き気がするし、絶対に知られてはいけない"命懸けの儀式"なのである。
もちろん俺にそんな特殊性癖はなく、巫女装束は彼女に着せて一枚一枚脱がせたいタイプだけど、一度スキャンダルを流されたら事実もねじ曲がるのだ!
「おぇっ、すね毛と腕毛ボーボーの巫女完成。姿見チェックなんか、律儀にするんじゃなかったぜ。さてと……始めるか」
この儀式は一回3時間の長丁場になるので、邪魔される事がないよう携帯電話の電源をオフにして、<能力玉>も全て張り直さなければならない。
だがソレをするだけの価値がある、大切な下準備なので……迷惑をかけてしまうだろう一般市民の祝福を祈るとともに、きちんと最後までやり遂げよう。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






