325話 懐かしのアレ
〜勇者<マサル>side〜
夜もふけ皆が寝静まる頃、メグミ殿に別れを告げて<恵のダンジョン>を抜けた俺は、音を立てぬよう忍び足で走り続け……
10km程進んだ辺りで飛行系モンスターを召喚して、教会本部がある都市<ガロパ>まで、俺を乗せて運ぶよう命じた。
<−−− ヒュ〜〜〜〜〜〜〜 −−−>
夜の砂漠というのは、灯り一つない暗闇で静寂に包まれているため、風魔法で体を包むように膜を張り、寒さから身を守れば快適に移動できる。
夜の砂漠とハッカ油を組み合わせたり、俺の命を狙うモンスターの迎撃も考えなければならない、<恵のダンジョン>攻略と違って……
今進んでいるのは"普通の砂漠"なので、そこまで心身のキャパを削ることなく、風魔法一つで対処可能なのだ。
「つっても寒いから、全身カイロ装着だけどな。あぁ〜、ありがてぇ。懐かしい日本語で、アピールポイントや使い方が書かれたカイロ。まさか買えるとは!」
メグミ殿から「欲しい物があるなら遠慮なく言え」と、優しい言葉をかけていただいたので、俺はお言葉に甘えて"懐かしの日本製品"を注文したのだが……
その殆どが、「何それ?」と言われる事もなく翌朝届いたので、本当に驚いたよ。
中でも「貼るタイプのカイロ」は、安くて持ち運びやすく機能性も充実しているので、下手にギフト玉を盛るよりコレで済ませる方が楽だと思う。
「マサル。コノシロイノ、アタタカイナ。ヤカレテイルワケデモナイノニ、アタタカクテ、ヘンナカンジダ。キニイッタ」
「くくくっ。文明の利器ってやつさ。朝まで保つはずだけど、それでも寒いなら遠慮なく言うんだぞ! 無理はすんな」
「ワカッテル」
運搬役として今回喚び出したレッサードラゴンは、人間を乗せて飛べる体力こそあるものの、極端な暑さ・寒さに弱いモンスター。
そのため<恵のダンジョン>の極寒地獄では運んでもらえなかったが、この程度の気温なら「風の膜&カイロ」で体調を保て、元気に活動できる。
つっても……徹夜で強行すると寝不足で俺の脳が死ぬし、昼間は部外者に見つかる危険性も上がるため、夜間限定コースで行くが。
「あっ! 南東の方角26kmに、野宿している"ポイ捨て部隊"を発見。"行きし"だな……。迂回するぞ!」
「リョウカイ」
赤子ポイ捨てでサーシャ殿に"ヤキ"を入れられて、多少は懲りたと思ったのだが……
「ソレとコレとは別」と言わんばかりに、<恵のダンジョン>への疫病患者ポイ捨て活動は続行されており、時々そういう部隊を見つけてしまう。
<恵のダンジョン>にたどり着いた疫病患者は、適切な治療を受けたあと、<オアシスフロア>と同等の新フロアで幸せに暮らせるので……
そのまま捨てられる方が彼等の為だと思って、「"行きし"の部隊」はスルーするけど、帰還する運搬兵を見つけた時は、上空から徹底的に焼き払っているよ。
上司の指示とはいえ、明白な悪事に加担した輩を見逃す気はないし、メグミ殿も対応できるときは、配下のモンスターに食い殺させているからな。
たぶんポイ捨て部隊の数が多過ぎて、処理できなかった運搬兵が帰路につき、俺の探索網に引っかかるのだろうけど……
それでも既に三度誅殺したし、全てを処理している<恵のダンジョン>の負担は、相当だと思う。
「ん……空が明るくなってきたな。今日はもう降りよう。運んでくれてサンキュー!」
「ワカッタ。マサル。ヨブトキハ、マタ、シロイヤツヲハレ」
「くくくっ、安心しろ。カイロの予備は5箱分用意してあるし、幾らでも貼ってやる!」
「サスガダ」
なぜかカイロを気に入ったレッサードラゴンの召喚を解除して、近場の岩陰に隠れた俺は、魔道具のテントを張って身を隠し……
その中でカップラーメンの封を開いて、魔法瓶から湯を注ぎ、ズルズルとカレー味の麺をすすった。
「うめぇ〜! やっぱり、カップラーメンは最高だ! 身体に悪いと理解していても、止められない止まらない〜♪」
他にも、<恵のダンジョン>で買い込んだ懐かしの日本飯は、俺の心に潤いを与えてくれ……
そのお陰か、命懸けの報復作戦を敢行しようとしているのに、恐怖や焦燥感によるメンタルの消耗はまるで無い。
「…………。もう一つ食ってもいいよな? うん。今は非常時だし、このシーフード味も食っちまおう!」
難点があるとすれば、自分への言い訳で食事量が爆上がりしてしまい、しかもカップラーメンばかりなので、カロリー爆撃がエグいことか。
とはいえ……俺は勇者として鍛えているから、腹回りに脂肪がついて三段腹になったりしないし、動いて消費すれば大丈夫だろう。
最悪ヤバくなっても、野菜系の惣菜も<恵のダンジョン>で仕入れてきたので、それを食って体調改善すればいいだけだ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






