322話 引きこもりの元勇者
〜マサルside〜
俺が勝手に動いたのがキッカケとはいえ、パーティーの仲間であり付き合っていた、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>に裏切られ……
教会や各国の権力者とグルになって、盛大にスキャンダルを捏造された俺は、事実を知ったあとメグミ殿に謝罪し、彼と停戦協定を結ばせてもらった。
その際、情けをかけていただき家を与えられたので、今は<オアシスフロア>にあるその家に引きこもって、日夜<能力玉>の生産に励んでいる。
「ボッタクリ価格とはいえ、ギフトの反動で俺が貧血状態だと知って、レバー入りの料理を売ってくれるなんて、優しいな〜。メグミ殿とオートマタに感謝だ」
いくら増血ポーションを飲んだところで、血をつくる元となる栄養素が体内になければ、貧血状態は改善されないし……
そもそも「短期間に繰り返し増血ポーションを飲み、無理やり血をつくる行為」は身体を壊すと言われているので、少しでも身体を労わりたいんだよ。
別に、我が身大事さで保身に走っている訳じゃないけど……肉体を使って戦う元勇者が、商売道具である肉体を雑に扱うのもどうかと思ってさ。
まだ若いから、多少無理したところでガタは出ないと思うけど、名誉も地位も帰る場所も全て失った俺には、身体しかない以上……
せめてソレだけは大事にして、不義理を働いた連中にキツイ一発をブチ込むまで、健康を維持したいんだ。
「フゥ〜、<隠密>のスキル玉……制作完了! これで、予定していた分は全て作り終わったな。疲れた〜!!」
俺が報復しに行く予定の教会本部は、長年栄えてきた由緒ある都市<ガロパ>の中央にあるので、生半可な覚悟では攻め込めない。
最低でも7種類の多重結界を破壊して街へ入り、教会および幹部宅の敷地に張られた聖結界も壊して、その上で数多の護衛を薙ぎ倒しターゲットを屠る。
当然、その途中で警備兵に見つかり、街総出で俺を殺しに来るだろうから……街の戦力全てを相手する気で挑まないと、途中で力尽きてしまうのだ。
「それに罪なき一般人も、偽情報におどらされて俺を悪者扱いし、鍋やら麺棒片手に殴りかかってくるだろう。ハァ〜、憂鬱だぜ」
彼等を巻き込む気はないが、一人一人を説得している時間的余裕もないため、現実的には手刀で首を打って気絶させ、やり過ごすことになる。
ただ偽情報におどらされただけの民にアザをつくり、攻撃される恐怖を味わわせるかと思うと、ウンザリしてくるが……
悪しき幹部連中と、落とし前をつけなきゃ気が済まない相手(魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>)がいる以上、戦わざるをえないんだ。
どうせ俺が悪者にされるんだろうけど……恨むなら俺の冤罪スキャンダルを垂れ流し、容赦なく使い捨てた権力者共を恨んでほしいよ。
まぁ一般市民が「八つ当たりしたい」と望むなら、空想上の俺をボコって憂さ晴らしするくらい、いくらでも我慢するけどさ。
<能力玉>の生産を終えたら、あとは貧血でフラフラになった身体を労わり、ベストなコンディションで戦える状態に持っていくだけ!
いくらレバー飯と増血ポーションで補っているといっても、全ての可能性に備えて山のように<能力玉>を生み出したから、もう肉体はボロボロ。
住環境が良いので精神面は幾分マシだけど、時々共有される教会幹部の所業がクソすぎて、視聴するたびに頭の血管がはち切れそうになるため……
一旦「完全にストレスがない環境」に身を置き、心身共に90%以上まで戻さないと、いつになってもココから旅立てない残念な事態になりかねない。
「ふいぃ〜、サッパリするぜ〜!」
メグミ殿が、俺の生活レベルに配慮した家を用意してくれた結果……この家には、<青竹の泉>を源泉とするシャワールームが設置されている。
湯船に浸かりたいときは、俺も公衆浴場まで出向き、他の住民と同じように金を払って、<十色の泉>を使わせてもらう必要があるけど……
仕事で疲れた心身をリフレッシュさせるだけなら、<青竹の泉>シャワーで十分なのだ。
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〜十色の泉〜
乳白色で美しい10の冷泉が、枯れる事なく湧き続ける泉。
色は付いているが飲むこともできる。
・桜の泉(思い人と一緒に飲むと恋が実る)
・紅の泉(精力増強作用がある)
・山吹の泉(肩こり・腰痛を回復させる)
・山梔子の泉(MPを微回復させる効果がある)
・白花の泉(HPを微回復させる効果がある)
・青竹の泉(フレッシュな気分になれる)
・若梅の泉(頭の回転がはやくなる)
・常盤緑の泉(目の病気に効く)
・露草の泉(リラックス効果がある)
・葡萄の泉(香り高く美味しい)
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「あぁ〜。ちょいヤバくなってきたな」
連れこむ彼女がおらず寂しい男一人暮らしなので、アッチの方がご無沙汰になっている点だけが、気になるが……
こんな下半身野郎だから、冤罪スキャンダルの信憑性も増しちまった訳だし、さすがに反省しているので、落とし前をつけるまでは自重する。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






