316話 お前がやったんだろ?
〜メグミside〜
サーシャは徹夜での報復活動が堪えたのか、僕にお休みメールをくれた後、<集金箱のダンジョン>で泥のように眠ってしまったらしい。
赤ちゃんポイ捨て作戦を実行した連中や、金に目がくらんで我が子を売り渡したクズ親は、無事地獄に落ちたし……
これだけ大きな騒ぎになれば、工数的に手が回らず直接的な報復をされずに済んだ連中も、「次は自分の番か?」と怯えて暮らし、そのうち発狂するだろう。
「メグミ様、昨晩はウチのマスターがお世話になりました。マスター本人じゃなくて恐縮ですが、心より感謝を述べさせてください!」
寝落ちしたサーシャに代わって、彼女の筆頭執事が僕に礼を言いに来てくれたが、さすが<ゴーレムマスター>というべきか……
サーシャが育てた執事君は大変出来が良く、所作も貴族家の執事よりお上品だ。
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〜ゴーレムマスター〜
ゴーレムを愛し、ゴーレムと共に生きる者へ与えられるギフト。使役するゴーレムの攻撃力・防御力が2倍となる。
また日頃から側に置くことで、目をかけたゴーレムの成長速度が早くなり、自然にレベルアップする場合もある。
ゴーレムの成長率には劣るものの、側に置いたオートマタの能力も上がる。
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一応僕も、ナステックを殺したとき<ゴーレムマスター>ギフトを得たから、ウチの子達もその恩恵を受けているんだけど……
<ゴーレムマスター>以外のギフトを持っておらず、徹底的に使い倒しているうえに、元々の所作もお上品なサーシャが育てた子達と比べるとね〜。
僕に似て野生っぽいというか、どうしても「見本が悪くてゴメンナサイ」感はあるんだよ。
「ふふふっ。僕とサーシャは一連托生だから、彼女を手伝うのも当然だけど、君にそう言ってもらえると嬉しいよ。そこのお菓子、お土産で持って帰ってね〜」
「ありがとうございます! メグミ様が自販機で買ってくださるお菓子は、どれも甘くて美味しいので、モンスター一同楽しみにしているのです」
「そっか。お代わりもあるから」
執事君が音を出したり揺すっても起きないほど、サーシャは深く眠っているそうだが、彼女が休んでいようと時間は過ぎるし"報復の件"も広まる。
朝イチで騒ぎ出したのは、ターゲット連中とその親族だけだったけど……噂が広まると同時に、各街に潜伏していた魔王の配下にも情報が入り……
噂の真偽を確かめるべく掲示板で情報交換したり、僕やサーシャに名指しで質問する者も現れた。
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263 名前:ジャスティン(55期)
メグミ君、少し尋ねたい事があるんだけど……赤子ポイ捨て事件の報復って、君主導でやったのかい?
巷では<集金箱のダンジョン>を治める魔王<サーシャ>がキレたと、もっぱらの噂だけど、サーシャちゃんは今まで表だって動いてこなかったから……。
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こんな感じで、大方の予想は「僕がサーシャのフリをして動いた」というもの。
中には僕へのヘイトを抑えきれず、「勇者戦で資産を使い果たしたメグミが、金を求めて泥棒に走った。理由なんて後付け」と書き込むバカまでいたけど……
総じて彼等はサーシャを「僕の飾り」だと思っており、「僕の意思や支えなしでは自立できない女」扱いでナメている。
「まぁジャスティン先輩は、丁寧に尋ねてくれているから返信しておくか。まったく……ものの尋ね方や処世術くらい、学舎で習っただろうに……ゴミの多さよ」
生き残っている魔王の多くは、転生したとき経済的に裕福だった者だから、それ相応の教養もあるはずなのだが、彼等を見ていると「教育の敗北」を感じる。
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264 名前:メグミ(78期)
今回の報復は、毎日のようにダンジョンへ赤子を捨てられて、堪忍袋の緒が切れたサーシャが、自分の意思で仕掛けたものです。
僕も「同盟を組む魔王」として最低限のフォローはしましたが、戦力は全てサーシャの持ち出しですし、指揮も最後まで彼女が執りました。
もちろん各所から奪った養育費も、全てサーシャの戦果として計上しており、僕は銅貨1枚たりとももらっていません。
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厳密に言えば、サーシャの配下が彼方此方で貼りまくった紙や、盗品を素早く入れるためのポリ袋は、ウチの自販機で買ったものなので……
僕もそのお代で利益を得てはいるのだが、僕等にとって自販機は「生活に馴染みすぎて、当たり前に使う道具」なので、その辺はほとんど気にしていない。
サーシャの部下がそれなりの数"半紙の束"を買っていたので、全部合わせると金貨1枚くらい儲けたかもしれないけど……
戦争準備で武器を買うのと比べると"雑費"みたいなものだし、現在の僕等の資産規模から考えて、神経質になる程の金額じゃないのだ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






