315話 何もかも失って
怒りを通り越してハイになったサーシャが、徹夜の変なテンションも相まって、より容赦のない報復指示を出したり……
激怒して拳を振り下ろした結果、<恵のダンジョン>の備品を壊してしまったマサルが、反省ボードを下げながらボランティア清掃させられたりと……
ダンジョン側でも多少問題は起きたものの、サーシャの報復は無事完了!
そして彼女にとっては、ようやく眠れる恵の朝……報復されたターゲット視点だと、大恥をかき社会的<死>を迎える、地獄の朝がやってきた。
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「ひぃっ!? なっ、なんだよコレ!!!?」
「血の手形!? まさか、あの子が幽霊になって……そんなぁ…………」
「ふざけんな! たしかに捨てたのはマズかったかもだが、俺たちは親だぞ! 化けて出てまで親に嫌がらせする糞ガキとか、いたら捨てられて当然だろ!!」
まず、金のために我が子を<廃児院>に売り飛ばし、間接的に"子殺し"を行おうとしたクズ親達。
彼等は、ご近所さんのヒソヒソ声で目を覚まし……不審に思い表へ出て、壁中に貼られた「血の手形が押された半紙」に驚愕。
慌てて紙を引っぺがすが、時すでに遅く、一生「無計画かつ非情なクズ」扱いされることが決まった。
「うわっ、クサ……何だよ、冗談じゃねぇ。勘弁してくれよ…………」
そして……日干しの洗濯物に貼り付いたり、庭でベローンと開いている使用済み紙オムツを、とにかく集めて捨てようとするが……
すでに噂が回っているため、外へ出ると皆がコチラを見てヒソヒソ話をするという、"針の筵"状態を経験し、ようやく「自分の非常識さ」を悔い始める。
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自分で子供を捨てた訳じゃないが、運搬やポイ捨てに協力した連中も、実家・親戚宅含めて泥棒に入られており……
門に貼られた「制裁理由説明書」のせいで、事情を把握した近隣住民から遠巻きにされ、怒り狂った親と親戚に朝イチで自宅突撃を受けて人生終了。
ただでさえ安月給なのに、一生かかってでも「今回盗まれた一族全員の私財」を補填しろと約束させられ、中にはそのまま借金奴隷として売られる者もいた。
激昂していた親戚一同だって、以前からターゲットが"そういう業務"をしていると知っており、「仕事だからねぇ〜」と見て見ぬフリをしていたのに……
いざ自分が被害に遭ったら、徹底的に問い詰めて補填を要求する、二面性をご近所さんに見られたのだから、今後もしばらくは噂のネタになるだろう。
そしてやり場のない鬱憤を晴らすために、ターゲット宅へと突撃して吊るし上げをおこなう、下品な日々を過ごすのだ。
なお……ターゲット本人だけでなく、親戚一同まで巻き込んだのは、怒りと徹夜でテンションがおかしくなったサーシャの暴走である。
兵士達は、爵位を継げなかった底辺貴族の次男以下や、中の上レベルの暮らしをしてきた家柄なので、本人だけ丸裸にしても効果は薄く……
「食うに困ることはないから、親戚丸ごと」という理由なのだが、サーシャの予想以上に効果覿面で、生々しい"人間の性"が垣間見えた。
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最後に、赤子ポイ捨て作戦を主導したミョルリアン聖者長と、協力者の上級貴族は……
同じく親戚一同泥棒に入られて、家の中が空っぽになり……それに加えて、朝イチで上空から各街にゴシップ紙が降り注ぎ、悪行がその一面で報道された。
『うわっ、マジかよ! あのゲスい作戦を主導していたのって、ミョルリアン聖者長なの? 無いわ〜。もう<聖者>を名乗るの止めるべきだね』
『コレを見ると、権力者がホント"自分たちの事"しか考えていないって分かるよな。もう俺、教会に寄付しない。こんな活動の資金として使われるの嫌だし』
『俺も〜』
いくら彼等が強い権力を持っていようと、上層部の意向や金にひれ伏さない報道機関から、スキャンダルを報じられたら太刀打ちできないし……
不敬罪を適用して、噂に花を咲かせる民衆を逮捕しようにも、人数が多すぎてキリがなく、噂が収束に向かうとは到底思えない。
また彼等の不幸は、同格の立場にいるライバル達から見ると「蜜のように甘いチャンス」なので、そんな隙を見逃してもらえる筈もなく……
ここぞとばかりに、ライバルの手で追加の「根拠不十分なスキャンダル」が乱発され、ミョルリアン聖者長達の権威は失墜。
失意のなか閑職へ左遷されたものの、泥棒に家財を全て盗まれたせいで金がなく、憤慨して仕事を辞める事すらできない、惨めな末路を辿るのだった。
なお……左遷され、田舎町の葬儀場担当者として働くことになったミョルリアン元聖者長が、この件で彼に恨みをもった十数名に惨殺されるのは……
また、別の話である。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






