313話 より胸糞な話
メグミチームだと<恵のダンジョン>が圧倒的に有名なので、教会による妨害工作も<恵のダンジョン>に集中しているが……
サーシャが運営する<集金箱のダンジョン>も、"影響ナシ"という訳ではなく、それなりに周辺諸国から嫌がらせを受けている。
その一つが"捨て子政策"で、「出来ちゃったけど育てられない子供を<集金箱のダンジョン>へ捨てると、報奨金が出る」というクソみたいなやり口だ。
自分でダンジョンへ行き子供を捨てる訳ではなく、国が運営する<廃児院>へ子供を引き渡すだけで、貧民にとっては無視できない金銭が貰えるため……
日々の生活にも事欠き、通常であれば奴隷商に我が子を売り渡したであろう親が、生活費目的で<廃児院>へ押しかけていた。
そして買い集められた子供達は、最低限の世話だけされた後、廃棄物として<集金箱のダンジョン>へ運ばれ、<天国と地獄フロア>の入り口にポイ捨て。
侵入者には容赦しないサーシャも、さすがに乳飲み子をルール通り地獄送りにできる訳もなく、1000人近い赤子を引き取りゴーレムに育てさせている。
「マスター、また赤子が捨てられていました。いつも通り処理したので、後でメグミ様に頼んで、"備品の追加購入"と"世話係の増員"をお願いします」
「了解!」
<恵のダンジョン>へ疫病患者が捨てられ始めて数日で、サーシャの方もこういう事態となり、メグミが入手した映像でその理由も明らかになった。
「なにが"女だから、流石に子供は殺せまい。沢山送りつけて育児の負担で精神崩壊させ、間接的にメグミの足を引っ張る"だよ! 本当にムカつく!!」
教会幹部の狙いも虚しく、ポイ捨てされた赤ちゃん達のお世話は、ほぼ全てオートマタとゴーレムが担当しており、サーシャに疲れは溜まっていないが……
だからと言ってこんな蛮行を許せる筈もなく、日に日に増えていく赤ちゃん達に十分な支援をしながらも、幾度となく"怒りの台パン"で拳を痛めた。
「え〜っと、今日捨てられた赤ちゃんは237人だから……哺乳瓶を600個、お世話係のゴーレムも40体は追加しないと。育児スペースの余りは……」
メグミの<セレクト自販機>がチート過ぎるため、物資の確保は十分に行えるし、赤ちゃんだろうと生命エネルギーは放出しているため採算も合う。
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〜セレクト自販機(Sランク)〜
以下の店で扱っている物の中から好きな商品を100点選び、ソレ等をいつでも自販機のメニューに並べることができる。
データの書き換えやリセットは、前の商品選択から1日以上経っていないと行えない。
・雑貨屋
・ドラッグストア
・工務店
・スーパー
・武器屋
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ただ、これだけ不快な政策を実施されて黙っていられるほど、サーシャの気は長くなく……
鬼畜すぎる発案者と、それに協力した周辺諸国の連中に報復してやろうと、通常業務の傍らでコツコツ準備を進めていた。
そして、ついに"その日"が訪れる。
「マスター。<廃児院>と関係者連中の金品を、潜伏中のドッペルゲンガーが盗めるだけ盗んだ……とのこと! ブツは、メグミ様が回収してくれています」
「ありがとう。犯人探しされると危ないし、事を済ませたら"速やかに"逃げるよう伝えてね」
「かしこまりました」
まずクソ政策を実行した貴族と兵士は、巷でも有名になっていたため、住所を特定したあと根こそぎ私財を没収し、メグミの<遠隔商談ギフト>で運び出す。
その代わり、現場には金属プレート製の「養育費の請求書」を置き……なぜこのような目に遭ったのか、一瞬で分かるようにした。
「破こうとしても金属じゃ破けないし、全身鏡サイズだから捨てるのにも苦労するでしょう♪ 逆ギレで請求書をグーパンして、拳にヒビが入れば尚良し!」
若干私怨も混ざっているが……ダンジョンに赤子を捨てる方が悪いに決まっているし、自業自得である。
「子供を売った親の家にも、"使用済みの紙オムツ"を投げ込むとともに、外壁一面に"赤子サイズの血染め手形"が押された紙を貼り付けております」
「うん。一晩じゃ加害者宅全てを回るのは不可能だけど、1割〜2割でも"見せしめ"で恥をかかせれば、残りの連中もしばらく怯えて暮らすでしょう」
「そうですね。マスターのご名案で、捕獲&死ぬまで拷問した運搬兵の血液も、廃棄せずに済みましたし……。子を捨てた親も、恐怖で震えあがるかと」
サーシャ自身、男爵家に買われる前は"捨て子"として孤児院で暮らしていたため、捨てる親の事情もある程度理解しているが……
それでも、無邪気に泣く赤子たちと幼少期の自分を重ねてしまい、捨てた親を許すことができなかった。
親達が赤子を売って得た私財を泥棒しなかったのも、そのせいで新たな"子売り"が発生せぬよう、彼等の家で暮らす子供達を慮っただけであり……
決して、「節操なくハッスルして育てられもしない子供を作ったうえ、その子を"現金"に換えた親」に対する温情ではない。
「さてと……今日も赤ちゃんが増えたし、粉ミルクの在庫が足りなくなるかも。短期的には<自販機>で買えばいいけど、長期だとモンスターの母乳を……」
サーシャの命令を受けて、一晩中静かに報復活動している配下を思いながら、彼女は自分の仕事を進めていく。
「今夜は私も徹夜だよ〜。一緒に頑張ろうね〜」
鎮めきれない怒りを胸に……しかし、ダンジョンマスターとして冷静さを保ちながら。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






