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312話 神様はいた




 教会側の目的は、あくまでも「<オアシスフロア>の住民を疫病にかからせ、<恵のダンジョン>の力を削ぐこと」なので……


 ある程度"疫病患者"を供給してみて、「効果ナシ」と分かったら作戦を中止すると思っていたんだけど、教会幹部の暴走は僕の予想の斜め上をいっていた。



「まさか"減らす"んじゃなく"増やす"とはな。たしかに、温度によって疫病の感染確率は変わるかもしれないけど……だからって、パワープレー過ぎるだろ!」


 嘘八百の報告書を盲信して、誰かに相談する事もなく狭まった視野で考え抜いたラッター大司教は、まさかの決断を下して僕はモニターの前でズッコケた。



「まぁ彼のお陰で、<ヘブンズフロア>への人材供給は捗るから良いんだけどね。アイツ、これまでの人生で何を学んできたんだろう?」


 スカウトしやすい人材が定期的に運ばれてくる、この恵まれた状況を生み出したラッター大司教は、僕の都合だけで考えれば"神様"だ。



 捕らえられ連行された疫病患者達も、短期的には地獄を見たかもしれないけど、どうせ祖国にいても"厄介者扱いされて死ぬ"悲惨な末路を辿っていたはず。


 そうなるくらいなら、五体満足で生きながらえて豊かに暮らせるウチへ来た方が、トータルで考えれば得だったと思うよ。



「疫病患者をポイできた周辺諸国も、内心では"教会の命令"という名目で、厄介者を処理できて喜んでいるだろう」


 唯一マイナスをくらったのは、「神の慈悲〜」云々説きながら病人を死地へポイ捨てして、その様子を見た信者たちの信仰心を薄れさせた教会だけ。



 もっとも……教会に関しては、化けの皮が剥がれただけで、元々酷い組織だったから自業自得だし……


 叫びながら頭を掻きむしっていたラッター大司教も、ストレスで若ハゲが進みそうで、僕としては飯ウマでしかない。






「ラッター大司教のおかげで、<ヘブンズフロア>もガッツリ人口を獲得できて、施設を充実させても損益プラスを維持できる状況になった」


 人口が少ない状況だと、一人当たりに割り振る予算の関係上、どうしても<オアシスフロア>ほど福利厚生を充実させられないが……


 これだけの人口がいれば、図書館や小学校など「必要だけど金がかかる施設」を作る余裕も生まれるし、ラッター様様である。



「他の幹部たち同様、アイツも筋金入りのクズだから、落とし前として"空からスキャンダルが降ってくる鬼畜イベント"の生贄にしようと思ってたけど……」


 このまま暴走させておく方が、(教会以外の)皆にとってメリットがありそうだから、しばらく様子見しておくよ。



 もちろん、ギフト玉の準備を終えたマサルが教会本部へ突撃するまでには、僕も「狙われた落とし前」をつけないと、マサルが奴を殺してしまうので……


 魔王として「報復できない雑魚」の汚名を被らぬよう、きちんと汚職スキャンダルで一撃入れるけど、今のまま人材供給してくれるなら極限まで引き伸ばす。



 アスタリア先輩が先に仕掛けてくれたトラップで、意識を操られた性病塗れの教会幹部と、枕営業しまくったマサルの元パーティーメンバー3人は……


 一足先に「性病10種コンボ」を達成し、"立場上"病院にもかかりづらいため色々苦労しているようだが、苦しむのは精々半年だろう。


 酷い裏切り方でマサルを傷付けたアイツ等が、マサルの教会本部突撃を受けて生き残れるとは思えないし、確実に"聖剣の錆"にされるもん。



 マサルは僕と違って鬼畜じゃないので、ラッター大司教にせよ枕営業トリオにせよ、一太刀でスパッと殺されて終わりになりそうなのは残念だが……


 野心剥き出しで"自分の将来"を強く信じている奴等には、"死"という罰だけでも十分効くかもしれないし、トドメの刺し方には口を出さないよ。






「マスター。監視圏内に、また疫病患者の集団が現れました。数は750名程。症状から見て、ボグホーク魔熱病の者が多いと思われます」


「了解! 魔熱病患者用の隔離部屋は足りている?」



「いえ。2時間前に来た一団の隔離で95%以上埋まってしまったので、拡充しないと収容は厳しいと思われます」


「分かった。750人分ね……うんうん、拡充完了。これで大丈夫だよね?」



「はい。また同症状のポイ捨て部隊が現われると、不足するかもしれませんが、現時点ではコレで対処できるかと。では、失礼致します」


「うん。ありがとう」



 「よくこんなに集めたな」と(ある意味)感心するほど、周辺諸国はひっきりなしに疫病患者を捨てにくるので、医療施設の拡充でコストもかかるけど……


 使い捨てって訳でもないし、永住してくれる住民から得られるダンジョンポイントを考えると、コスパの良い投資だ。



 唯一不満な点は、あまりに疫病患者のポイ捨てが多過ぎて、ポイ捨て部隊同士がバッティングしかけること。


 部外者が見ていると「チクられるから」とサボれず、運搬役の兵士が、真面目にオアシスフロアを探してしまうので……


 その展開を防ぐために、タイミングを見て弱いモンスターを奴等の元へ派遣し、時間調整する手間が地味にウザイ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
元パーティーメンバーの3人はたしかにあれこれとマサルの悪口盛り上がったけど、実際はまだマサルになんの行動も起こしてないじゃん、ゴシップ誌のあれも、たしかに性悪の一面あるかもしれないけど、そう言わないと…
[一言] 敵方に無能な働き者はなんぼ居ても良いですからね
[一言] ヘブンズフロアの住民が、自衛できるように、武術や格闘術は、教えるべきかな?
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