305話 もちろんバレております
〜メグミside〜
「〜〜〜〜〜という事で、周辺諸国から<オアシスフロア>へ、疫病にかかった患者が大量輸送されてくるようです」
「へぇ〜。それはまた、やることが下衆いねぇ〜。現場班にも、"不快な映像ばかり処理させてゴメン"と謝っておいて」
「大丈夫ですよ。私が、執事としてマスターを世話するのを誇りに思っているように、彼等もまたマスターのお目をムダに汚さずに済んで、心底喜んでいるかと」
「そっか。執事君も、いつもありがとね」
敵を効率よく殺すのに疫病患者を使うのは軍略の一つだし、僕も否定はしないけど、普段「神に祈れば救われる」云々説いている教会がやるのはダメだろう。
奴等の教義が薄っぺらい事くらい、もうとっくに理解しているが……胸糞悪すぎて、今すぐ本部がある場所へ突撃して幹部共を火炙りにしたくなるよ。
「対処が遅れたら困るので、<オアシスフロア>の信用できる住民達には映像を共有して、この事実を知らせておきました。もちろんマサル殿もご存知です」
「分かった。素早く対処してくれてありがとう。彼等はどんな反応だった? 疫病をうつされそうで怯えている? それとも、憤りの方が強い感じ?」
「マサル殿は、激怒して教会本部へ単身突撃しようとしましたが、<オアシスフロア>の顔役に止められて、冷静さを取り戻しました」
「なるほど」
「とはいえ……怒りは変わらず限界突破しており、黙って我慢するレベルを超えている……との事で、能力玉の準備が整い次第"お礼参り"するそうです」
「ふむ。実力的にマサルが負けるとは思わないけど、準備不足だと<恵のダンジョン>で極寒地獄に落ちたときみたいになるから、気をつけさせなきゃ!」
「はい。マサル殿もその件で懲りたようで、教会襲撃時は"何が起きてもいいように"入念に準備するそうです。一応、マスターの言葉もお伝えしますね」
「うん。よろしく頼む!」
マサルの元へは、4日前「アイツと致して、賢者モードになったタイミングで首を刈ろう」と、毒蛇のようなハニトラ美女も数十名訪れたのだが……
彼から「何をしてもOK」と事前に許可をとった上で、僕がその美女達を預かり、オーク等の「性欲旺盛なモンスター」にプレゼントしておいた。
「彼女達はただ命令されただけであり、黒幕は裏にいる」ことくらい知っていたが、自分の欲望を満たすためにゲスの命令を聞き、マサルを殺そうとしたんだ。
たとえオークの苗床にされて、命が尽きるまで子作りさせられる最期を迎えたとしても、自業自得だろう。
ウチは、ユアンみたいなクズが来たときと「敵の心を折る」目的以外で、原則"そういう残虐な行為"を認めていないから……
欲求不満気味のオーク達は、久しぶりの"上モノ"に大喜びして、寝る間も惜しんでハッスルしているよ。
お人好しで女に甘いマサルにこの処分を伝えたら、さすがに引かれてしまうと思ったので、「人生最後の仕事をしている」とだけ報告したけど……
ウチのオーク達は"人の扱い"に長けていて、死なないギリギリを見定めて楽しむタイプなので、最期の時を迎えるのは当分先かもしれない。
「マサル殿と違って、自力で疫病に立ち向かう術のない住民達は、教会の所業に怒りつつも怯えるという、人間らしい反応を見せております」
「そうか。病気は殴って追い払えるもんじゃないし、"よく分からないもの"は怖いからな。心折れて逃げださないだけ根性が入っている、と言っていいだろう」
「はい。ただやはり恐怖心は強いらしく、"再び地下へ潜らせてくれ"という要望や、薬草・ポーション関連の注文数が爆増しました」
「ふむ。教会の包囲網のせいで、行商もさせてやれない状況で、<オアシスフロア>を地上に出しておくメリットは薄い……か」
「そうですね。子供達やアクティブな住民は、明るい時間にダンジョンの外へ出て、自然な砂漠で遊んでいますが、それくらいしかメリットはありません」
「分かった。行軍には時間がかかる筈だし、コチラが目視できる距離まで疫病患者が近付いてきたら、オアシスフロアは一旦"32階層"へ送る」
「かしこまりました。ところで……マスター、ここに捨てられる予定の疫病患者はどうします?」
「ん? 死ぬまで放置してダンジョンポイントの足しにするか、治療を試みて新たな住民を増やすか、どちらを選ぶつもりかって?」
「はい。治療するのであれば、薬剤を準備したり隔離施設を作らなきゃいけないので」
「そうだなぁ〜。彼等の症状をコチラで治せるかどうか、そして彼等の意思にもよるから、実際に見てから決めることにするよ」
"疫病患者"といっても、まだ自力で歩けるレベルの初期患者から、手の施しようがない末期患者まで幅広いし……
完治後<オアシスフロア>に住む意思がない者を、ウチが持ち出しで治療しても損になるだけだから、今の段階じゃ判断材料が少なくて決められないもの。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






