表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

304/937

304話 教会側の動き




 メグミが、久しぶりの肉体労働に悲鳴をあげつつも、着実に力を蓄え始めた頃……教会側もまた、<恵のダンジョン>の封鎖網を完成させつつあった。


 彼等は、<恵のダンジョン>があるスクレーン砂漠の周辺に位置する、ヴィッチネント王国・モートランド皇国・サーザンド王国に声をかけ……


 国内で<オアシスフロア>の関係者を見つけ次第、"背神罪"で公開処刑すると同時に、出国者の監視も徹底させて経済封鎖をおこなったのだ。



 ダンジョン経営において、「外部生物から得られるエネルギー」と「現金」が重要な役割を示すことを、ユアンに色々教えられた彼等は知っており……


 経済的に豊かと思われる<恵のダンジョン>を、周辺諸国から孤立させ締め出すことで、ダンジョンを根元から腐らせようと試みている。



 だがこの作戦には、いくつか"致命的な欠陥"があり……<恵のダンジョン>は、他所とは違い自給自足能力が非常に高いため……


 水・塩・小麦etc.何を絞ってもイマイチ打撃を与えられず、それどころかダンジョン産の商品をコッソリ仕入れていた市民から、不満の声が上がる始末。



 そして「成果を確認しよう」と、偵察能力に長けたエリート諜報員を<恵のダンジョン>へ向かわせても、以前同様"誰一人として"帰って来ず……


 また懲戒処分&スキャンダル漬けにする以前は、自らダンジョン内部の情報を送ってきた元勇者<マサル>とも、完全に縁が切れてしまい便利使いできない。



「奴の居場所は、依然として<恵のダンジョン>のままだから、攻略中かつ生きているのだろうが……」


 呪いは弾き返すわ、かと言って「魔王<メグミ>を滅ぼす」ような功績を上げる訳でもないわで、担当を押し付けられた教会幹部は頭を痛めている。






 そもそも飢えたことすらなく、安全な環境でエリート街道を爆進してきた、上流階級出身の教会幹部達には"シャレにならない問題"があった。


 それは……見せかけのボランティア活動で以外、貧民と交流する機会がなかったせいで、価値観が一般人とは根本的にズレており……


 庶民の気持ちを理解できないため、その気持ちを利用した巧みな作戦を考える事もできず、メグミやマサルの心理すら汲み取れないこと。



「<堕ちた勇者>は今頃何をしているのだろう? <恵のダンジョン>へ送ったハニトラ娘達と、"奇跡の出会い"を果たした頃だろうか?」


 それゆえ、こういう"非現実的で寝ぼけた発言"が出てきてしまい、作戦の全てが空回るのである。



 教会幹部が普段争う相手は、同じようにエリート街道を爆進してきた出世競争のライバルか、上流階級出身の各国代表なので……


 価値観が庶民とズレていても、大した支障は出ない。



 しかし今回ばかりは、自分達とは対極の位置にいる「スラム街出身の貧民」と、己自身で生計を立てている天涯孤独のメグミ&マサルが相手なので……


 単純だが数日じゃ直せないこの価値観のズレが、致命的な欠陥となってしまい、巨大組織である教会の足を引っ張っていた。



「正直、このハニトラ作戦は失敗しても構わぬが。私だって喉元まで出かかっていたのに……クソッ、あのインテリ眼鏡め……得意げに出し抜きやがって!」


 そして、ここに「世代の近い幹部同士による嫉妬」が加わる。



 彼等にとって魔王<メグミ>&元勇者<マサル>は天敵ゆえ、"表面上"協力して事態収束にあたっているが、実際のところ幹部仲は出世争いのせいで悪い。


 (彼等の価値観では)天地を揺るがすレベルの大事件が起こってもなお、つい「もしアイツが失敗すれば自分が出世できる」と考えてしまう程に。






<−−− コンコンコンッ −−−>


「失礼致します! ラッター大司教。"神罰がくだった者共"の輸送準備が完了した、とのことでございます!」



「くくくっ。よしっ、一刻も早く奴等を<恵のダンジョン>へ放りこめ! ゆめゆめ二次被害を生むでないぞ」


「はい! 先方にはよく言い聞かせます!」



 そして部下に"大司教"と呼ばれた彼もまた、ハニトラに対抗して、ゲスの極みである策略を幹部会議で提案しており……


 その現場協力者となったヴィッチネント王国・モートランド皇国・サーザンド王国の貴族から、「準備完了」の知らせが届いた。



 彼が実行に移した作戦……それは「不治の病にかかった患者達」を、<恵のダンジョン>へ投げ捨て、<オアシスフロア>住民にも病を移す……というもの。


 「ハニトラ→売女→性病」というイメージリレーで閃いた、彼にとっては自慢の策略だが、勇者<マサル>&魔王<メグミ>の地雷ポイントでもある。



 もしこの作戦の立案者を知ったら、正義感の強いマサルがどう動くかなんて、考えれば誰だって分かりそうなものだが……


 "同年代で一番優秀な教会幹部"を自称しており、「ライバルへの嫉妬」と「出し抜きたい欲」に目が眩んだ彼は、そのリスクに思い至らなかった。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ユアン君って自分が賢いと思ってるだけのアホだったんだな 流石に情報売り過ぎ
[気になる点] あれ?勇者マサル達は、現金回収を命じられるだろうと思ってたけど? ユアンアホか!自分のクビ絞めるような内容をなぜばらす  ダンジョン経営において、「外部生物から得られるエネルギー」と…
[気になる点] 教会の偵察部隊。 寝返ってオアシスフロアに居着いたのか、秘密裏に処刑されたのか… 多分後者だろうけど。 [一言] 嫌がらせになってねぇな、おい。 いやまあ、普通なら病人や死人を強引に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ