299話 周りからジワジワと
監視対象である教会の重要映像が手に入ったと、配下のオートマタから連絡があったので、僕は遊びに来たサーシャと共にそれを視聴。
一刻も早く現場にいる子達へ次の指示を出せるよう、他の仕事は全て後回しにして、最優先で処理にかかった。
ちなみに……停戦協定の契約書を持ってきてくれた土龍さん達は、マサルとの契約締結を見届けた後すぐに帰ったよ。
僕としては、せっかく来てくれた訳だし暫く滞在してもらいたかったんだけど、モンティート先輩至上主義の土龍さんは一刻も早く帰りたかったみたい。
彼等は帰還後、ウチで仕入れたカニ雑炊で「カニパーティー」を企画していたらしく、早くそれを開催して主人を喜ばせたかったようだ。
<−−− カチッ、カチカチカチカチ…… −−−>
「ここだな。マスター。ここからが該当箇所になります! 再生しますね」
「うん。よろしく!」
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『<堕ちた勇者>も魔王<メグミ>も直接倒すのが難しいなら、時間をかけてでも、周りから腐らせるのが最善じゃありませんか?』
『ほぅ? 何か良い策でもおありで?』
『いい策かはともかく……オアシスフロアの住民を減らせば、共生関係にある<恵のダンジョン>もいずれ弱りますよね。なら、奴等から攻めましょう』
『その案は過去にも試したが、オアシスフロアの住民を狙おうにも、<恵のダンジョン>の対策が早くて奴等を地下へ引っ込めてしまった』
『そうだ! 魔王<メグミ>にとって奴等は急所。それ故に守りが堅く、手を出すのは難しい』
『それは存じております。ですが直接攻めるのは無理でも、周辺の街の検問を徹底し、オアシスフロアの住民なら問答無用で処刑すれば……』
『なるほど。魔王の手が及ばないところで餌となっている貧民を削ぎ、ジワリジワリと真綿で魔王の首を絞める作戦か。悪くない』
『はい。見せしめとして惨たらしく処刑すれば、オアシスフロアへの貧民の流出も防げますし、奴等が持ちこむ品物も没収できて一石三鳥かと』
『くくくっ。噂が回れば、オアシスフロアから周辺の街へ物を売りに行く輩も減るから、罠にかかる阿呆も少なくなるだろうが……』
『稼ぎを失えば自販機で食料も買えませんし、閉じ込められている感が強くてストレスが溜まり、そのうち爆発しますよ。そうなれば内部から滅びます』
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「なるほど。そう来たか……。そりゃあ、僕やマサルを直接殺すのは難しいもんね。マサルに散々呪いを弾かれて、格の違いとかも実感してそうだし」
「しかし、まぁ酷いね〜。これが教会の幹部って言うんだから、救えないよ。というか、コイツ等に祈られる神様が可哀想。絶対に助けたくないタイプじゃん!」
「アハハハハ。確かに」
合理的ではあるものの、到底"教会のお偉いさんがしていい話"じゃない策略に、サーシャは呆れてため息をついた。
僕としても、コレをやられると痛手ではあるけど……それ以上に、「弱き者を救う」云々説いている教会の幹部が、こんなゲスい事実に呆然。
いや、マサルを排斥したやり方を見ていれば、色々と歪んでいるのは一発で分かるけど、「教会幹部が自ら教義に背きに行くスタイル」って中々だと思う。
もちろんマサルやオアシスフロアの住民にも、この問題映像は共有するけど、彼等も僕たちと同じ感想を抱くんじゃないかな?
「とりあえず、コチラの対策としては映像の共有と……執事君。商隊を組んで出かけて行った住民達を、至急探して連れ戻して! 放置したら殺されちゃう」
「かしこまりました」
「もし抵抗するようなら、スマホでこの映像を見せてあげてもいいから。自分達の命が狙われていると知れば、儲けを諦めて戻ってきてくれるはずだ」
あとは実際に、奴等が検問でどう「オアシスフロアの住民」を炙り出すのか調べて、それについての対抗策を練るのが……
今の状況で僕がとれる、現実的な動きかな。
「このパターンで来るとなると、今後は<オアシスフロア>に来る冒険者や商人にも気をつけなきゃいけないかも。最初から、住民を殺す目的かもしれない」
「そうだね。サーシャの言う通りだと思う。ウチにも検問を設けて、異常を感知したらすぐにオアシスフロアを地下に引っ込める、仕掛けが必要だ」
あとはストレス問題かな。
ウチの住民は、今までも僕と敵対勢力のバトルに巻き込まれていたけど、自分自身の命が狙われるとなると、彼等が受けるストレスは段違いに高まる。
それに「危険だから」と外出も制限され、一カ所に閉じ込められれば、たとえその空間が快適だったとしても窮屈に感じるはずだ。
彼等の場合、生活苦でココへ流れ込んだ人達だから、多少ストレスを感じた程度じゃ、他所へ行ったりしないだろうけど……
それでも「<オアシスフロア>に住み続ける限り、自分達は命を狙われる」と思うと、日々の幸福度は変わってくるし、ウチへの愛着も減退するはずだ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






