２９５話 能力玉をコロコロと
マサルが本気で命を狙われていることを知ったり、彼&土龍さんに勇者バレしたりと、色々あったものの……
とりあえず停戦協定は結べたため、僕は約束通り＜オアシスフロア＞を32階層から0階層に戻し、住民達とマサルの行動制限を解除した。
＜オアシスフロア＞の住民達は、ウチの内職依頼を受ければ、衣・食・住に困らない程度の収入が保障されるんだけど……
中には行商で生計を立てている者もいるし、裏ルートで自販機産の衣類を売りさばくのが、一番コスパ良く儲けられるので、彼等は行動制限解除に大喜び。
さっそく山のような商品をラクダに積んで、代表者20名からなる商隊を組み、近くの街へ出かけて行ったよ。
逆に身体の弱い老人や女性・子供は、工場で堅実にメシ代を稼ぐ者が多く、ウチの外注仕事も滞ってはいない。
彼等には、シルクスパイダーの糸で布を織ったり、オイルスライムの油で石鹸を作ることで、間接的にウチのポイント収益増加に貢献してもらっている。
そして、その儲けを現金換算した一部を、バイト代として成果報酬型で支払っているのだ。
ここだけ聞くと、アルバイトフロアみたいな悪質バイトの匂いがするけど、一般的な女性が普通に働いたら並の収入を得られるよう、調整してあるし……
仕事時間に融通がきき、出来なかったり材料をダメにしたときのペナルティーも、理不尽なものではないため、作業員の中には7歳の子もいたりする。
もっとも……工場バイトだと大きくは稼げないので、夢を追い求める若い男性は、リスクを承知で衣類の密売に走るし……
安定を選び雇われた男性よりも、リスクをとって大きく稼いだ男性の方が、明らかにモテているのは、どの場所でも変えられない世の摂理だ。
「マサル殿は、これからどうするのですか？」
住民達の動向は僕もある程度予想していたし、コチラに不都合がある訳でもないのでいいとして、行動制限を解かれたマサルはどう動くのだろう？
教会の動きを知りたいだけなら、僕が渡した携帯で事足りるし……命を狙われているといっても、マサルほどの猛者を殺せる者なんて早々いないので……
コイツに関しては、自分の意思で好きに旅をして、望む場所で生きられるのだ。
もっとも……教会と世界各国が共謀したネガキャンで、マサルのイメージは最悪な状態だし、勇者として動くと場所バレするから……
今までのように、特権階級者として崇められる生活をおくることはできないけどね。
『俺は……当分の間、いただいた家に引きこもって＜能力玉＞を作ります。呪いに対抗するためのギフトも、常時発動中なんで』
ありゃりゃ、それは何というか……お疲れさまです。
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〜スキル図鑑〜
相手の許可を得ることで、スキルおよびギフトが図鑑に登録され、登録された任意の能力を一時的に模倣できる、特殊な＜能力玉＞を生みだせるようになる。
ただし＜能力玉＞をつくる際は、己の血とHPを対価として捧げる必要があり、事前準備ナシでは役に立たない。
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停戦協定を結んだ後、「誠意を示す」と言ってマサルが教えてくれたのだが……彼のチート能力は＜スキル図鑑＞といい、事前準備さえしておけば超万能。
マサルが＜恵のダンジョン＞で何度も追い詰められたのは、単に彼が「ウチに氷点下のフロアがある事実」を知らず、準備を怠ったからだ。
もし寒さ対策も必要と知られていたら、相性のいい能力玉を大量に用意されて、僕等の攻防戦もより激しいものとなっていただろう。
なお……彼は＜スキル図鑑＞の性能を伸ばすために、ボランティア活動のかたわら、助けた孤児や奴隷のスキル&ギフトを登録してきたから……
現時点で図鑑はかなり埋まっており、時間・血・HPの制約さえなければ、冗談抜きで「世界で一番チートな奴」だと思う。
「教会側にも、マサル殿の＜スキル図鑑＞について把握している者がいるだろう。其奴等に出し抜かれる心配は……」
『あぁ、それは大丈夫っス！ 召喚されたとき、初対面の相手ばかりだから警戒して、切り札になりそうな＜スキル図鑑＞は隠蔽したんで』
なるほど、その流れで勇者をクビになるまで"本当の実力"は秘匿した……と。
素人の付け焼き刃"隠蔽"すら見抜けなかった、教会がアホなのか。
それとも……切り札抜きで勇者の仕事をこなせてしまったマサルが、有能すぎるのか？
いずれにせよ、何もしていないのに教会から恨まれた僕的には、メシウマな話だ。
「分かった。祭壇前で注文してくれれば、ポーションを販売する事もできるから、思う存分引きこもってくれ」
『自力でポーションを買うの難しくなりそうだし、本当にありがたいっス！ メグミ殿、これからもよろしくお願いします！！』
読んでくださり、ありがとうございます！
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます！！
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)
