291話 話が変わってくる
嫌な予感がして執事君に「教会の監視強化」を頼んだものの、まだ心のモヤが晴れず、くつろぐ気になれなかったので……
僕は、熱々の鍋料理を持ってきてくれたサーシャに、この件を相談する事にした。
「メグミ君、お待たせ〜。慣れない食材だから扱いに手間取ったけど、レシピ通りに作ったから、味は問題ないと思うよ♪」
「ありがとう、サーシャ。美味しくいただくね! ところでさぁ〜、ついさっき"嫌な仮説"を思いついちゃったんだけど……」
「ん? 私でよければ聞くけど、またトラブルになりそうなの? 何か手伝える事とかある?」
「う〜ん、もしかしたら? 実は、僕が勇者として覚醒しちゃったせいで、教会が"マサルに代わる勇者"を召喚できない状態かもしれないんだ」
「えっ!?」
ちなみに……鍋のメイン食材として使われている、サーシャが<セレクト自販機>で買った"スッポン"という亀は……
執事君いわく「精力をつける高級食材」らしいが、その件に関しては全力でスルーを貫くぞ!
もし一言でもツッコミを入れたら、話の流れでサーシャが女豹化して、さらに搾り取られる可能性が高い。
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〜セレクト自販機(Sランク)〜
以下の店で扱っている物の中から好きな商品を100点選び、ソレ等をいつでも自販機のメニューに並べることができる。
データの書き換えやリセットは、前の商品選択から1日以上経っていないと行えない。
・雑貨屋
・ドラッグストア
・工務店
・スーパー
・武器屋
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サーシャにスッポン鍋を食べさせてもらいつつ、僕が思い至った仮説について説明したところ、彼女は真顔になり「マサルを切る?」と問うてきた。
「停戦したばかりでアレだけど、もし勇者枠が完全に埋まっているうえ2人とも此処にいたら、教会と全面戦争になっちゃうよ。そしたらメグミ君が危ない!」
彼女の言うとおり、僕がモンティート先輩の助言に従って勇者<マサル>と停戦協定を結んだのは……
「教会の動きを制限しつつ、マサルと教会が潰しあってくれればラッキー」と思ったからだ。
その時の前提に、"僕が勇者であること"なんて含めていないし……助言してくれたモンティート先輩も、職業まで<勇者>になったのは知らないので……
教会を牽制する程度のつもりが、ガッツリ首を絞めた可能性まであり、そうなるとサーシャが心配してくれたように、教会と全面戦争になるかもしれない。
「でも、今さらマサルを切るのは嫌かな。アイツに絆されるつもりはないけど、約束を結んだのにすぐ裏切るんじゃ、僕は教会の連中と大差ないクズになる」
「うっ、確かにそうだね。ゴメン。ちょい冷静になります」
僕の身に危険が迫る可能性を自分事としてとらえ、動揺してくれたサーシャは、愛らしくてつい全肯定したくなっちゃうけど……
感情のままバカップルモードで重要な判断を下すと、後で取り返しがつかなくなり、サーシャも巻き込んで泥沼に沈む可能性すらあるので、難しいところだ。
「とりあえず、執事君に"教会の監視"を強化してもらったから、もし僕の仮説が当たっていたら、数日で動きがあると思う」
「了解。<教会の天敵>って称号が付いた以上、すでに教会側は情報を握っている……と考えておいた方が、何が起きても慌てずに対処できそうだね」
その後、(直接強敵と戦っている訳じゃないので)気が抜けたような……それでもどこか緊迫したような、時を過ごすこと1日……
モンティート先輩の部下である土龍さんが、数十名の仲間を引き連れて<恵のダンジョン>へとやってきた。
『メグミ殿〜、こちらの準備は整ったゆえ契約に移りたい! 我等の足で直接出向いてもいいが、無駄に時間がかかるゆえ対応を頼む!』
相変わらず豪快な土龍さんは、仲間と共にゲラゲラと笑いながら<天国と地獄フロア>で遊んでいる。
彼等ほどの猛者なら、放っておいても傷つく事はないが……
さっさと仕事をしてもらわないと"僕が"困るし、土龍さんに本気で遊ばれると、掃除と修繕でコチラの経費が増えてしまうので、最優先で対応しよう。
「あ〜、土龍さん。おはようございます」
『なんじゃ。もう昼なのに随分ゆっくりしておるのぉ。主様が"寝ているかも"と言っていたが、まさか当たっておったとは』
それについては、不可抗力なんで勘弁してください。
カラカラに干からびるまでサーシャに喰われたのが原因で、熟睡しないと体力が戻らないから、睡眠時間を増やしているんです。
「アハハハハ……。土龍さん。どういう契約方法なのか先に確認したいので、コチラの誘導に従って会議室まで降りてきてください」
『承知した! ついでに主様から"カニ雑炊"の仕入れも頼まれているんで、300食くらい用意しておいてくれ』
「分かりました!」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






