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290話 魔王<メグミ>は勇者なのか




 メグミが称号<教会の天敵>に気付く、半日ほど前のこと……勇者<マサル>に冤罪を被せて除名し、新たな勇者を召喚しようとしていた教会幹部は……


 供物を捧げても何故か勇者が現れず、信者から不満の声が上がっている現状に慌てて、緊急会議を開いていた。



「クソッ! なぜ"正規の手順"で願い奉っているのに、勇者が現れないんだ! もう3度も試しているのだぞ!」


「生贄として捧げる奴隷も、無限に湧いてくる訳じゃない。"誰かが空気を読まずに中抜きしたのか"と疑い、秘密裏に調査したが……結果は"シロ"だった」


「そりゃあそうでしょう! 勇者召喚絡みで悪事をはたらくなんて、バレたら一発で首が飛ぶ重罪ですし、そこまでバカな奴はいませんよ」



 ままならぬ事態に動揺しているのだろう。


 本来なら"どんな場合でも許される事じゃない"汚職を、「空気を読まず〜」などと言ってしまう中抜き常習犯や、それに気付かず言葉を返す間抜けもいる。



「過去の記録によると、裏切り者の勇者を除名しても"あと一人は"確実に喚び出せる……とあったよな?」


「うむ。飛び抜けて才能にあふれた勇者ならともかく、<マサル>レベルの勇者なら、同時期に2人"存在できる枠"があるはずだ。記録にはそう書かれていた」






 過去の記録を根拠として、「自分達は間違っていない!」と正当化する彼等だが、何を言ったところで「新たな勇者を召喚できなかった事実」は変わらない。


 そんな中……比較的若くて頭が回る幹部が、恐る恐る声をあげた。



「あの〜。<堕ちた勇者>が独断で向かった<恵のダンジョン>の魔王は、たしか"勇者が元いた世界"と縁がある者でしたよね? もしや、其奴が原因では?」


「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」



 実は彼以外の幹部も、心の奥底では"その件"を不安に思っていたのだ。


 しかし彼等の常識では、「勇者を生み出す世界の者」は「もれなく自分達の味方」であり、敵になるなんて断じて許されない。


 その価値観が未だに邪魔をしており、無意識のうちに理由をつけて「勇者を生み出す世界の者が敵に回った」可能性を排除し、言葉に出さぬようにしていた。



 だが現状"手詰まり"なのは事実ゆえ、若手幹部の発言を表だって否定できる"マトモな言い訳"も思いつかず、議論は"その件"を含めた方向へと舵をきる。


「とりあえず、ギフト持ちに占わせてみるか? その疑惑が出たときは、範囲が限定されておらずギフトの制約期間も被っていたため、見送りになったが……」


「そうだな。もし"魔王<メグミ>が原因じゃない"にしても、一度確定させておいた方が、これからの議論がスムーズに進むだろう」






 中枢卿の発言により、「とりあえず調べてみる」事が決定し、教会所属の占い師が会議室に呼ばれた。


 本来"占い"は、「何においても神を敬い祈れば救われる」と説く教義から外れているため「悪行」とされ、非公認の占い師は魔女扱いされたりもするが……


 教会に所属して一定額の上納金を払う者だけは、特別に「神託を伝える者」という扱いを受け、占い師として活動することを許されている。



「おっ、お呼びと聞き……まかり越しまして、ございますぅ〜!!!!」


 しかし教会内における彼等の立場は低く、幹部の機嫌を損ねたら即"魔女扱い"されてしまうので、呼び出された占い師は緊張でガタガタと震えていた。



「うむ。今回其方を呼んだのは、"魔王<メグミ>が勇者であるか"調べるためだ。決して他言するでないぞ」


「はっ、はいぃぃぃぃ!!!!」



 この占い師は<○×>という変わったギフトを持っており、10日に一度だけ、<○×>で答えられる質問に対して、精度100%の答えを出すことができた。


「いいか? "魔王<メグミ>は勇者である"……○か×か」


「○でございます」



「「「「「「「「「「…………!!!?」」」」」」」」」」


 占い師の答えを聞いた幹部達は、信じたくなかった事実を突きつけられて驚愕し……その数秒後、占い師は冥界へと旅立った。






「フゥ〜。惜しいギフト持ちでしたが、"知ってはいけない事"を知ってしまった以上、口封じも止むなしかと」


「うむ。そうだな」



 いくら口止めしたところで、情報漏洩のリスクは残るため、「知ってはいけない事」を知ってしまった非権力者は即排除。


 これが教会幹部の"暗黙のルール"であり、例えそれによって無実の一般人が殺されようと、この場に咎める者はいない。



「さてと……誠にゆゆしき事態だが、"魔王<メグミ>は勇者である"と確定した。"正規の手順"を踏んでも、新たな勇者を喚び出せなかったのは奴のせいだ!」


「マサルと合わせて職業<勇者>が2人いるため、召喚可能枠が埋まってしまった……という事ですな。勇者2人が外道に堕ちるとは、この世の終わりか!」



「ゆゆしき事態ですな。聖騎士団を派遣して<堕ちた勇者>共を殺そうにも、奴等を殺せる程の戦闘力をもつ者はいない」


「ハァ〜。仮にも、勇者として世界各地を飛び回っていた猛者だからな。ゆえに"堕とす時"も、直接殺すのではなく搦手を使った訳だし……」



 絶望的な状況に顔を青ざめさせ、「神は天敵を与えたもうた」と叫びながら、教会幹部は打開策を考える。


 途中、現実逃避気味に「いずれ奴等は相打ちになるのでは?」と発言する者もいたが、重苦しい雰囲気を変えるには至らず会議は何日も続いた。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
[一言] 占い師がすめる村を
[一言] 真の邪悪たる教会勢力の次の一手は、魔王サーシャへの集中攻撃によりメグミとマサルを動揺させる作戦かな?
[一言] まさに、悪魔 オアシスフロアに、モニターを設置して、教会の知ってはいけない事実を、暴露してやりたい 無垢な一般人がコロされましたよ といったら、勇者マサルがどう動くか判らんが 勇者マサル…
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